第53話 再びダンジョン探索④

6階層は草原が無く階段を降りると直ぐに森だった。


「これは危険だね。」


「既に、魔物の気配が至るとこに有りますね。」


「ヴァルグード様、このまま進みますか?」


「危険かもしれないけれど、魔物を間引く事をしておかないとダンジョンブレイクが発生してしまうかもしれない。それは代官として容認できない。そう云う意味でも、このダンジョンの様子は把握したい。」


「では、進んで見ましょう。」


「伏せて!」

ビックボアがいるがこちらには気づいていない。

杖を構えてビックボアに3発「光線レーザー」を放つ。

「ピギ〜ッ!」

と鳴いて倒れる。

そして、魔石と肉塊、皮がドロップした。

肉塊は豚バラ肉みたいに、脂が乗っていて美味しそう。


魔石と肉塊を回収して進むと左側にビックボアが見えるが、棘のある低木に阻まれて進めない。


「あれは倒してしまっても取りに行けないね。」


「そうですね、この茨の高さと幅が行きづらくしていますね。」


「魔法の練習にあのビックボア仕留めてみる?」


「敵対していない魔物を狩る魔力の余剰はありません。未だまだ強い魔物が出てくる可能性の方が、大きいですから、無駄打ちは止めておきましょう。」


「それもそうだね。少しでも魔物を減らそうと提案したけど、今の僕達は魔力を大事にしておかないとね。」


今は、いつ襲われても仕方がない状況で、魔力の消費は極力回避しなければ行けないのに安易な提案をしてしまった。

自分が幾らでも魔術を使えるからと云って、他人も同じに考えていた事を反省し、気を引き締め無ければいけない。


こうして、反省しながら進んでいくと、前に牛がいる。

まだこちらには気づいていない様だ。

「ブラウンブルが2頭前にいます。

奴らはストーンバレットを打ってきますが発現が解りやすので、剣術で攻撃します。」

「危なくなったらフォローするよ。」

3人は未だこちらに気付いていないブラウンブルに忍び寄り左右側面に飛び出す。

騎士2人が別れて一頭一頭の後ろ脚を切り落とす。

「「ブモゥ〜。」」

2頭同時にバランスを崩して倒れるが直ぐに起き上がろうと前脚で踏ん張っている所に、エーデルトが2頭の頭側に周り、上段から剣を振り下ろし一頭の首をはね、振り向きざまにもう一頭の顎下に剣を突き刺した。

ブラウンブルは何も出来ずに、魔石と肉塊、皮に変わった。


「お疲れ様、3人とも身体のキレが良くなったんじゃない?」

エーデルトが


「そうですか?自分では良くわからないですが、動きが良くなっているかもしれません。

剣の性能もありますが、あの太い首を切断出来る様になっていますから、腕が上がっているとは思います。」

「また、肉塊と皮がドロップしたね。」

「これはとっても美味しそうです。」

「後で少し火で炙って食ってみようか?」

魔石と肉塊を拾って騎士に渡し、私からドロップ品を受け取った騎士は宝箱から入手したアイテムバックに収納した。


「やっぱり、アイテムバックは便利ですね。」


「これからは、第10小隊の装備品になるかもよ。」


「「えっ、それは……」」

「ヴァルグード様、まだ其の事は副代官と相談する前では内緒の話です。」


「あっ……まあ、帰ってからのお楽しみって事。」


そんな会話をしながら森を進んで行く。


結構進んでいる間に、ビックボアとブラウンブルに遭遇したが、毎回こちらが先手を打てるため、私の風刃で前脚や後ろ脚を切り付けバランスを崩した所で、3人が剣で斬りつけると云う、戦闘のパターンが出来てそれで討伐してきた。

今まで討伐したのは

ブラウンブル 12頭

ビックボア  20頭

を討伐したがすべて肉塊と皮をドロップした。

「エーデルト、毎回肉塊と皮をドロップしているけどこれって普通?」


「ダンジョンでブラウンブルとビックボアを討伐したことがありませんので、此れが普通なのかお答え出来ません。」


「まあ、良いか。食料が調達できるのは助かる。」


「そうですね。 良いお土産が出来ました。

早く持って帰って料理して頂きたい。」


そんな会話の間に、森が途切れて、森の先には洞窟があった。

洞窟の入口手前で、


「洞窟内は何かに照らされているようですね。」


「そうだね、これって石かな~。こんなの見たことある?」

とエーデルトに聞くと、


「私は存じません。」

と答えるので騎士2人に、


「2人は何か知ってる?」


と尋ねるが。


「私も聞いたことがありません。」


「私も、ダンジョンはここが初めてですからこの様な石の存在は知りません。」


「そうなんだ。少し持って帰って見よう。」


「「「畏まりました。」」」


皆で、光っている石を拾っていく。

その時に(鑑定)をしてみると、

※※※※※※※※※※

品名:蛍石

※※※※※※※※※※

と出た。

大した石では無さそうだ。

いくつか拾って満足し、先に進む。

蛍石のお陰で洞窟内はボンヤリとだが先が見える。

進んでいくと道が2つに分かれているので、


「さて、ドッチに向かおうか?」


「左から行きましょう!」


「なんで、即答?」


「何となく勘で!」


「まあ、良いけど。」


エーデルトが勘で左を選択したみたいだが、私も左が良いと思っていた。

そうして進んで行くと、広場に出て、ゴーレムが5体広場の壁を掘っていた。

そして食べている?


「あれは、岩を食べてる? 3人はゴーレムと戦った事はある?」


質問するとエーデルトは、


「私は一度だけあります。」


「「私は、ありません。」」

二人はゴーレムとは無い様なので、エーデルとに「あのゴーレムは強いの?」

と聞いてみると、


「土魔術を使ってきますが、それよりも防御能力が高く再生能力も高いです。

其れに、ゴーレムの種類によって生命核が何処にあるかはマチマチなので、討伐が難しいです。」


「取り敢えず、僕の光線で攻撃しても良い?」


「是非、お願いします。

我々では良い攻撃手段がありません。

ハルバードかハンマーが有れば攻撃出来るのですが剣では核まで届きません。

ヴァルグード様宜しくお願い致します。」


「判った!」


そうして、杖からの光線ではなく、魔術の光線で攻撃することにした。

ゴーレム5体はこちらに背を向けて壁を掘って居るので、練気力と神力を右手に集めるだけ集めて「〝光線レーザー〟」を横一閃に放った。

5体のゴーレムは腰の辺りから真っ二つに分かれて上半身がそのまま地面に落ちたが、光線は発現したまま、練気力と神力を流し続け、ゴーレムの塊に向けて放ち続けた。

生命核に光線が当たったゴーレムは魔石と金属インゴットをドロップして消える。

消えると次の塊に光線を向ける。

こうしてゴーレムは魔石と金属インゴットになって、いなくなった。


「随分な力技でしたが、討伐出来ていますので、良しとしましょう。」


「これは魔鋼ですね」

「一人一つずつ持って行って、僕は2つ貰っておくね。」


「どうぞどうぞ、魔鋼一個でも良い金額ですから、これで武器でも作れば良い武器が出来ますが、私達にはヴァルグード様に頂いたこの剣がありますから、お土産で誰かに渡すとします。」


掘っていた壁を調べると、ゴーレムが掘っていたのは鉄鉱石だった。


「おぉっ!鉄鉱石だ!」


私は、魔鋼と木のパウダーを取り出し、

魔力と神力を混ぜて、魔鋼に流し浸透させると鶴嘴つるはしを作り、木のパウダーで柄を作って「創造」で繋いだ。

それを4本作ると3人に、


「掘るべし!」


と伝えて鶴嘴つるはしを渡した。

3人は私の勢いに押されて無言で鶴嘴つるはしを受け取り、壁を掘り出した。

私も鶴嘴つるはしを持ち、身体強化を使って壁を掘り出す。

そして、私の身体が悲鳴を上げるまで、4人で壁を掘り続けた。

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