第54話 再びダンジョン探索⑤

私の身体が悲鳴を上げた為、掘削は中止して、食事にすることにした。

夕食は火球を出して、ブラウンブルの肉塊をサイコロ型に切り・木のパウダーで串を作ってサイコロ肉を刺し、皆んなに渡して火球の火で炙る。

一口食べてみると和牛ロースだった。


「うまっ!」


3人は、無言で食べている。

足りなくなると思い、木のパウダーで大皿を作り肉塊をサイコロ肉に切り分けた。


「エーデルト、パンと野菜スープを出して。」


「これは失礼しました。

肉の美味しさに我を忘れて仕舞いました。」


パンと野菜スープを出して、肉を炙りながら、


「この肉は、帰りに狩ってストックしたいね。」


「そうですね、ビックボアは何時でも手に入りますがブラウンブルは此方では見かけません。これからは、ここで入手できる事になるとは……、ですがドロップ品ですから地上の様に確実に入手出来ないのは少し残念では在ります。」


「そうだった。 ドロップ品だった。狩っても魔石だけの可能性を忘れていたよ。」


そんな話をして食事を済ませた。


「今日はここで夜営しようと思う。

結界の魔道具を起動させてそこでテントを張って休もう。」


「ヴァルグード様、結界を疑う訳では有りませんが見張りは必要と思います。」


「そうだね、今回初の結界での夜営だから何が起こるか分からないので、見張りは置いておこう。」


「では昨晩と同じに順番で見張りましょう。」


こうして夜営が決まった。

私は10m角の結界プレートを広場の中央に置き、皆んなにプレートの側まで寄って貰い起動させた。

淡い乳白色の結界を見ながら騎士の一人が、


「この結界の内側から攻撃出来れば、戦闘も楽になるのですが、無理な願望でしょうね。」


そんな事を言いながらテントを張る。


「今は無理だね。

結界の理屈をちゃんと理解出来てないから。

帰って研究をしてみる。では、お先に。」


「「「お休みなさい」」」


十分な睡眠から目が覚めると微かに振動がしている。

テントから出てみると、ゴーレムが2体結界を叩いていた。

見張り役の騎士に声を掛ける。


「いつから、ゴーレムの攻撃を受けているの?」


「おはようございます。お早いお目覚めですね。ゴーレムはつい先程、あの入口から入って来まして攻撃を受けています。」


「二人を起こして貰える。」


「畏まりました。」


騎士は寝ている2人を起こしに向かった。

私は、(スクリーンオープン 透視)と頭の中で唱えて、透視でゆっくりゴーレムを視て行くと生命核の場所が判る。

1体は左肩の下もう一体は右腰の上辺りに生命核があった。

2人が起きてきたので、


「結界があるとゴーレムを攻撃出来ないから解除したい、テントを片付けて何時でも出発出来る準備をして欲しい。」


「「「畏まりました。」」」


そして、各自テントを収納して、鉄鉱石は私のインベントリに収納した。

準備が整い、地面に置いた結界プレートを拾い上げて、エーデルトに渡し、


「終了と唱えると結界が解除されるから、僕が声を掛けたら解除して。」


「畏まりました。」


私は練気力と神力を手に集めて、「今」と声を掛ける。

エーデルトが「終了」と唱えると結界が消える。

そのタイミングでゴーレムの生命核に向けて「〝光線レーザー〟」と唱える。

2体のゴーレムの生命核に命中してゴーレムは後ろ向きに倒れ、魔石と魔鋼をドロップした。


「ゴーレムを一撃で倒すなんて、良く核のある場所が解りましたね。」


「何となく視える様になったんだ。」


「そんなことが……」


「まあ良いじゃないか、それより出発するよ。」


こうして無理やりこの広場を後にした。

広場を出て来た道を戻って行くと、分岐した場所まで戻って来る。


「昨日の分岐した場所まで戻ってきましたね。」


「それではもう一つの道を進みますか。」

昨日の右側の通路を進むと、早速ゴーレムが2体こちらに向かって来る。

スクリーンウィンドウは起動したままなので(透視)をして、生命核を見つけ杖を向けて

光線レーザー」を打つ。

杖で打つ「光線レーザー」は魔術の光線より出力は下がっているはずだが、ちゃんと生命核を破壊出来ている。

進んでいくとまた分岐した場所に来たので左を選択する。

すると中央に宝箱がある部屋に突き当たった。


「これって、怪しくない。」


「そうですか?」

騎士の一人は疑ってもいないようで中に入るため一歩踏み出すと部屋中が光って部屋中がゴーレムに埋め尽くされた。

騎士は後退って戻って来て、


「申し訳ありません。

モンスターハウスに踏み込んでしまいました。」


「抜剣!」


「ちょっと、持たせて!」


「「了解!」」


エーデルトと騎士は殴り掛かってくるゴーレムの腕を切り落とすが直ぐに後ろから違うゴーレムが襲いかかる。それを躱すために後退るので、私も下がりながら魔術の準備をする。

練気力と神力を手に集めて、


「下がって!!」と大きく叫ぶ。

そして皆が下がると


「〝光線レーザー〟」と唱えて、横一閃、に照射した。

ゴーレムはすべて腰上で真っ二つになるが、10体程再生が始まる。

(スクリーンオープン 透視。)と頭の中で唱えて、再生が始まるゴーレムを視る。

杖の「光線レーザー」でゴーレムを仕留めながら騎士達に、


「そいつは腰の右を刺して」


「そいつは右肩の下。」


「これは左胸」


「あいつは右胸」


と生命核の場所を指示しながら、ゴーレムを討伐していった。

全てを討伐し終えるとドロップした、魔石と魔鋼を回収して宝箱に近づく。

宝箱に(鑑定)をすると、

※※※※※※※※※※

品名:ミミック

※※※※※※※※※※

と表示された。

「はぁ、頑張って得る宝箱の中身がミミックってこのダンジョン本当にイヤらしい。」

と独り言を呟き、杖を宝箱に向けて数十発の「光線」で宝箱を蜂の巣にしていった。

宝箱は消えて、魔石と金属のインゴットが出て来た。

それを回収して来た道を戻る。

分岐の所に戻って、右側の行っていない道へと進んで行くと、色の違うゴーレムが立ちはだかっていた。


「金属のゴーレムみたいだね。」


「硬そうですね。」


「ちょっと剣で戦ってみたいです。」


「やってみる?どのぐらい通用するか確認したいしね。」


「やらせて頂きます。」

エーデルトはそう言って2人を引き連れゴーレムに向かっていった。

私は透視を使って生命核の場所を調べると、左胸にあった。


「エーデルト、生命核は左胸だよ。」


「畏まりました。」


と言って先頭を進み、殴り掛かってくるゴーレムの懐に入り左足を切り落とそうとするが、太もも辺りの真ん中で剣が止まってしまった。

素早く引き抜いて後ろに下がってゴーレムから離れる。


「弱かったか!」


「次は我々が!」


騎士たちは左右に別れてゴーレムに立ちはだかるとゴーレムが左に騎士に殴りかかる。

すると右の騎士が、伸び切った右腕を肘の関節部分に剣を振り下ろす。

見事に肘から切り落とされた。

ゴーレムは左腕で右の騎士に殴りかかるが、今度は左の騎士に左腕の肘関節を切り落とされた。

そこにエーデルトが正面に来て、片手剣を左胸に突き刺す。

見事に生命核の破壊が出来たようで、ゴーレムは後ろに倒れた。

討伐が終わり、魔石と金属のインゴットを回収した3人が戻って来て、


「ヴァルグード様、ドロップした金属はミスリルです!凄いです!」


「本当!やったね!

それと、後ろに階段があるね。」


というと振り返って、エーデルトが


「気付きませんでした。この先に進みますか?」


「目的の一つである鉄鉱石の発見は直ぐに報告はしたいけど、次のエリアも気になる。」


「ダンジョンは逃げませんから、この次も在ります。

ダンジョンブレイクもそこまでの緊急性もなさそうですし、スタンピードを起こした魔物はゴブリン種ですから4階層までの探索でゴブリン種は結構、間引いて来ましたから暫くは大丈夫ではないでしょうか?

それにこれ以上戦利品を持って帰るとあの2人が同僚に妬まれはしないかと心配しています。」

確かに。

魔石は言わずと知れず、アイテムバックにマジックポーチ、魔鋼に上等な肉塊もある。

更に、ミスリルまで出て来た。

(拾得したものは基本自分自身の所有物として良いと、取決めたからあれらが全て自分の物となれば、他の騎士が黙ってないか。)


「そうだね、他の騎士も連れて来ないと不味いね。今回の探索はここまでにしよう。

帰りは肉を狩り尽くて5階層の石版で帰って見よう。」


「「「畏まりました。」」」


そう言って階段は降りず帰ることにした。










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