第8話 職業は魔術士

2月の初めに私に妹が、出来た。

髪色は銀髪、茶眼でとっても小さな女の子、絶対私が守る!!

と言っても一度しか見ていないのだが、

〝命名の儀〟が終わるまでは会いに行ってはいけないらしい。


赤子は抵抗力が弱いから仕方ない。

3月になって王都から魔法の先生となる赤髪茶眼の40代男性が来訪した。

兄姉は早速指導を受けていた。


5歳になりいよいよ私も職授の儀を受ける日がやって来た。

新しい白色の燕尾服のようなジャケットにスラックス銀糸で縁取り刺繍がある。

その服に袖を通し身形みなりを整えてエントランスに向かうと、エントランスには父親と家宰のセバスチャンが待っていた。

父ティモンが


「来たか。熱にうなされていた赤子が、もう職授の儀に向かうまでに成長したとは感慨深いなぁ。

アリーシアは立ち会えないが大丈夫か?」


「母上は大事な赤子の世話があるのです。

問題ありません。」


「では行くか。」


「はい」


「ご主人様、ヴァルグード様行ってらしゃいませ」


馬車に乗り込み、動き出すと両脇に騎馬が並走を始めた。

すると父が、


「戻ったら紹介するが右側の騎士が家の騎士団の副団長でヴァルグードの剣術指南をお願いしている。

左側の騎士はヴァルグードの護衛騎士だ。」


「父上、リートゥス伯爵領の事を教えて下さい。」


「うん?では何から話そうか。

先ずこの街は 領都ボネッセ 我が領で最大の都市だな。

次に大きな都市は港街のロスラン。

領都から西に向かうと海が有り、そこにロスランが有る。

北には辺境伯領があってそことの境界に有る町フエン

東は一大農地で作物の集積町フィシス

南には王都への街道宿場町エピカボス

村は東に5村、北に2村、西に2村 南に4村あって貴族代官を置いているのはこのくらいだな。

後は、開拓集落が幾つかあるがもうすぐ神殿に到着するからこの辺にしておこう。」


「父上、ありがとうございました。」


神殿に到着した為、話を終了し馬車を出た。


神殿に入場すると、命名の儀を執り行った神官長と若い神官が祭壇の前に立って出迎えてくれた。


「神官長殿本日は,ヴァルグードの〝職授の儀〟宜しく」


と言って、若い神官に小さな皮袋を渡す。


「リートゥス伯爵家が次男のヴァルグードです。本日は宜しくお願い致します。」


「ご丁寧にありがとうございます。

私は、この神殿で神官長を゙勤めております。

ヨランドと申します。宜しくお願い致します。それでは、祭壇に両手を付いて頂けますか?」


言われた通りに、祭壇に両手をつく。


すると、神官長は詠唱呪文を唱える。

【紡ぎ示す煌めきの神々よ、

我が言霊に呼応する叡智の神々よ、

聖なる祝福を紡ぎ出し、

この者の秘められた真実を解き放て。

〝ステータスオープン〟】

※※※※※※※※※※

名前 ヴァルグード

年齢 4歳

種族 ヒューマン

性別 男性

職業 【真言】魔術士

〝スキル〟

鑑定 痛覚耐性 **

【検索 解析 スクリーン ステータス】

〝祝福〟

智慧神【の加護】

【創造神の加護】

※※※※※※※※※※

頭の中から声が聴こえてくる。


『メーティスです、隠蔽を使って不都合な表示は隠しておきます。

隠蔽はスキルに追加しておきますから活用しなさい。』


助かる。

すると若い神官が羊皮紙に記入を始める。

記入が終わると、神官は私に


「祭壇から手を放してください。」


と伝えてきた。

手を放すとステータス表示が消えた。

神官長は若い神官から羊皮紙を受け取って

ガラスペンを取り出し、魔力を込めてサインし、私に渡して来た。

それを受け取り、神官長に


「ありがとうございます。」


と伝えると、神官長が、


「職業に恵まれませんでしたが、精進して強く生きるのですよ。」


と憐憫な表情で私を見つめて力強く語った。

それを聞いて首を傾げながら父親と共に神殿を後にする。

騎士達の待つ馬車に、すると父ティモンが


「二人を紹介しよう。

左が副団長のダランソン卿。

右がヴァルグードの護衛騎士エーデルト。」


「リートゥス伯爵領騎士団で副団長を拝命しております。

オデット・バロレ・ダランソンと申します。

以後お見知り置きを」


「今後、ヴァルグード様の護衛にあたります、エーデルト・ツー・フランドルと申します。以後お見知り置きを」


「ヴァルグードです。

宜しくお願い致します。」


「紹介も終わったから、帰るか。」


と言って馬車に乗り込んだ。

私もそれに続く。


「父上、名乗りなのですが前の名、後ろの姓は解りますがバロレとかツーとかは私も付くのですか?」


「未成年はつけないくても良い。

あれは貴族の爵位や貴族に属していると名乗るもので、カリアスは嫡男だから伯爵を継ぐまではカリアス・フォン・リートゥスという名乗りになる。

私は、伯爵位なので

ティモン・モナレ・リートゥスと名乗る。

引退している先代は

コーザック・フォン・リートゥスと名乗る。

で、ヴァルグードは成人すると私から騎士爵を授与するから、ヴァルグード・ツー・リートゥスとなる。

騎士爵を授与と言っているが形式上は伯爵位以上が王に推薦して王が授与する爵位を代行していると云う体裁を整えてる。

次男以降の令息はこれをしないと成人したと同時に身分は平民となる。

爵位を与えられた者は、その与えた貴族の家臣となり、貴族は給与を支払う義務が生ずるから推薦しないでそのまま放り出す家門もあるそうだ。」


「お祖父様は、ご健在なのですか?」


「会った事無かったか?

隠居して今は港街ロスランで漁師の真似事や畑いじりしているよ。

今回のお前のお披露目会で会えるよ。

ちなみに港街ロスランの代官は分家した俺の弟でお前叔父のシェリム・スヴレ・リートゥス。スヴレは子爵位な。

それにしても魔術士かぁ~。

貴族で魔術士は不遇職と言われているんだ。

目標上位職は錬金術師何だが、魔術士や錬成士は魔力が成長し難い。

錬金術師はモノを作成する時に魔力をかなり使いながら術式を行使して作成する‥

魔力が成長しないと成人の儀迄には上級職業は取得出来ない。

貴族は魔力が大きい程、重宝される。

家の家門は気にしてないがな。」


「神官長のあの表情はそういう事でしたか。」


私は全く気にしていないが、魔法使いの下位互換というところなんだろうと思う。

家に到着して、副団長とは別れて父ティモンと護衛騎士のエーデルトと一緒に玄関に進むと玄関前で家宰のセバスチャンと合流する


「ご主人様、ヴァルグード様お帰りなさいませ。」


「うん。直ぐにコンサバトリーへ向かう。」


「ただいま、セバスチャン」


4人でコンサバトリーにて向かう途中セバスチャンはメイド達に何やら指示を出す。

家族を呼びに行くようだ。

コンサバトリーに前に着くと、エーデルトは廊下に立ち父ティモンと私はコンサバトリーに入った。

しばらくすると母親、兄姉が入ってきた。


「集まったな。では早速ヴァルグードが職授の儀で授かった神の祝福は智慧の神メーティス神から職業は魔術士メイジ

この職業は魔力が成長し難いので、余程鍛錬しないと上位職には上がれない。

上級職業は錬金術師なのだが、成れたとしても錬金術のレシピは弟子相伝なので、錬金術師に弟子入りしないと何も出来ない。

鑑定スキルが有るから独学でも出来なくはないが難しいだろう。」


皆んな無言で、居た堪れない。


「父上、僕は魔術の研鑽を積みたいと思います。敷地裏の林に研究スペースを確保お願いできませんか?」


「許可する。

建物に影響しない限り自由にしなさい。」


母アリーシアも


「授かった職業に不貞腐れても仕方ないものね。何が出来るか試すのも良いかもね。

ヴァルちゃんは次男なんだから自由にやってみなさい」


「ヴァルグードは賢いからなんとかなるさ」


「ヴァルちゃんは私が養ってあげるから心配しないで」


「お姉ちゃん、それは恥ずかしいからお断りします。」


「ヴァルグードのお披露目会だが、1ヶ月後に開催する。セバスチャン準備をお願いする。」


「畏まりました」


お披露目会かぁ。とても面倒くさい。



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