第58話 村に職人がやってきた。

執務室に入ると副代官のオデットが、書類の作成をしていた。

「お帰りなさいませ。

ダンジョンは如何でした?」


「6階層まで進んだよ。 6階層に鉄鉱石の採掘出来る場所を見つけて幾らか採って来た。 未だ、下層には鉱脈があるかも知れない。」


「それは朗報ですね。こちらはアイテムバック1つとマジックポーチ1つの売却しか出来ませんでした。

その売却金で職人の手配をしましたので、残金が残っておりません。

申し訳ございません。

大工と石工が明日の朝にはロスランを出ると思いますので3日後にはガルチ村に到着すると思われます。」


「職人がそんなに早く来れるの!材木の乾燥を進めておかないと不味い。3日後なんだね。」


「はい、 それとロスランのアグウェル様からアイテムバックを作ってほしいとお願いされまして背負い鞄1つと肩掛け鞄1つ。

それに革製ポーチを3つ預かっております。」


「お祖父様が自慢したんだろうね。しょうがない、作っておくよ。」


「宜しくお願い致します。残っているアイテムバックとマジックポーチは如何致しますか?」


「それは預かっておいて、領都の商業ギルドにでも持ち込んで売却してくれれば良いよ。

今は、村の整備に費用が必要だから。」


「ありがとうございます。一度領都におもむいて、御領主様に村の状況を報告をしてまいります。 その時に残りのアイテムバックとマジックポーチを商業ギルドに持ち込みたいと思います。」


「僕は、材木の乾燥に向かうね。」

執務室を出て、伐採した材木の乾燥を行うために、南側の材木置場に向かい練気力と神力を材木に浸透させると「〝乾燥〟」と唱える。

材木の中心から水分が外に蒸発するように乾燥させる。それを1本1本ゆっくり蒸発させてゆく。

1日で200本蒸発させる事が出来た。


3日後、村にロスランから職人の一団がやってきた。

朝から材木の乾燥をしていると、執事のウィリアムが、

「ヴァルグード様、職人達がこちらに来ております。 一度エントランスにお越しください。」

「判った。今行く。」

そう告げてエントランスに向かった。

エントランスには副代官と職人達が話をしていた。 

「よく来てくれた。 作業を始めるにあたって滞在場所に案内しよう。」

「副代官様、その前に職人達の組長をご紹介させて下さい。」

「それはちょっと待て、……あぁ、いらっしゃた。ヴァルグード様こちらにお越し下さい。 こちらが、ガルチ村の代官で御領主様の御次男のヴァルグード様だ。」

「皆さんようこそ。代官を拝命しています。ヴァルグードといいます。 ガルチ村はご存知とは思うが、魔物が溢れて壊滅した村です。

復興を我々の手で頑張っていますが、未だまだ村として建物が足りません。

皆さんには、是非建物の建築を頑張って下さい。」

「代官様、職方ギルドのカイルと申します。

今回のガルチ村での現場責任者となります。

60日間で出来るだけ建築して参ります。

宜しくお願い致します。

こちらにいる3名が組長となります。」

「大工、ダン組の組長ダンです。」

「大工、 トリス組の組長トリスです。」

「石工、左官のリード組の組長リードです。」

「代官のヴァルグードです。材料の手配は僕がやっているので欲しい物は教えて下さい。」

「「「宜しくお願い致します」」」

「こちらこそ宜しく。」

挨拶を済ませたので、副代官のオデットが、

「では、今度こそ滞在場所に案内しよう。」

そう言って、屋敷を出て職方ギルドになる予定の建物に向かった。


建物に到着すると、現場責任者カイルが、

「ここを拠点とするのですか?随分と大きな建物ですが何の建物になるのですか?」

「これは職方ギルドに貸す予定の建物だ。」

「これが、職方ギルドの建物……」

「そうだ、ここを滞在の拠点として使ってくれ。」

「ありがとうございます。」

「食事は、未だ店が無いから代官屋敷の向かいに在る、使用人の官舎で食事が出来るようにしておく。 後で案内しよう。」

職人達は、建物の中に入り荷物を置いて外に出て、

「資材はどちらにありますか?」

と聞いてきた。 私が、

「南側に置いてあるから見に行く?」

と聞くと、

「「「「是非。」」」

と言うので材木置場に皆んなで向かう。

「未だ全て乾燥していないけど、ここから、ここまでは乾燥が終わっているから、600本はすぐ使えると思うよ。」

と話した。 すると大工の組長2人が、

「これは使えるから明日からでも作業が出来るな。」

「直ぐにでも取り掛かれるぞ。」

とカイルに話していた。

そんな中、石工のリードが

「ヴァルグード様、石材はどちらにありますか?」

と聞いてきたので。

「あぁ、ダンジョンの山から切り崩してきたので、未だアイテムバックに入れたままだった。 後で出しておくよ。」

そう言ってその場は誤魔化した。

すると、現場責任者のカイルが

「アイテムバックから出すのであれば、建築現場に出して頂けませんか?材木はここで加工して持ち出しますが石や砂は移動が大変ですので、それと建物の意匠で何か要望は御座いますか?」

「ロスランで一般的なものを建築してくれれば良いよ。 石造りの建物は、西側にある住居を参考に作ってくれ。」

「畏まりました。」

それを聞き終えて、副代官のオデットが

「それでは、我々はこれで屋敷に戻る。

お前達も宿泊の準備をしなければいけないだろうから、これで解散としよう。 明日から宜しく頼む。」

「「「「畏まりました。」」」」

職人達と別れて代官屋敷に戻ると、叔父に頼まれてアイテムバックにした鞄を持ち出して、西側と東側に砂を山にして出しておいた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る