第16話 ロスラン攻防準備

SIDE:ギルド長

ガルチ村のゴブリン発見から7日目。

俺は冒険者ギルドの2階にある執務室で寝泊まりをしている。

朝からギルドが騒々しくなっていた。


1階に降りて行くと副ギルド長が駆け寄ってきて、

「大変です。

ガルチ村に続々とゴブリン達がボロッカー山地方面から集まって来ているそうです。」

「領内の冒険者ギルドに応援要請はしたんだよな。」

「はい、ガルチ村の惨状を連絡した時に各ギルド長宛に応援要請はしています。

そろそろ到着すると思います。」


「わかった。静まれぇい!!注目!!

今から、魔法使いの連中は野戦陣地の構築に勤しんで貰う。

魔法使いのいるパーティーはその護衛を依頼する。

一人1日10万ダラだ。

東門から南門に向かって城壁と並行に3層の土壁を肩の高さで作成しろ。

南門に着いたら西門迄繋げろ。

副ギルド長!構築指示を出してくれ。

出発する前に各冒険者ギルドに伝達を送ってくれ。

俺は代官屋敷に行ってくる。」

俺は、冒険者ギルドを飛び出して代官屋敷に向かった。


代官屋敷の門番に

「ガルチ村の件で、緊急事態が発生した。

代官に会いたいと伝言を頼む。」

「取り合えず、俺と一緒に玄関迄来てくれ。」

門番の一人と一緒に玄関まで進む。


「ギルド長、ここで暫く待ってくれ。

執事のトーマスさんを呼んでくるから。」

門番は玄関のノッカーを3度叩き、扉を開けて中に入っていった。

数分もしないうちに、扉が開き門番と執事のトーマスがやって来た。


「ガルチ村で緊急事態とか、ご案内します。

こちらへどうぞ。」

門番は門に帰って行き、俺は執事に案内され応接室に入った。

「こちらでチェック暫しお待ち下さい。

直ぐにアグウェル様を呼んで参ります。」

と応接室を出て行ったのと入れ違いにメイドがお茶を持ってきてテーブルに置いて一礼して出て行った。


お茶を一口飲んでいると扉がノックされ執事とアグウェル様、そして先代も入ってきた。

先代が

「ガルチ村と聞いては居ても立っても居られないからな」

と応接室のソファに腰を下ろす。


隣にアグウェル様が座ると、アグウェル様が

「ギルド長、用件を伺おう」

「ガルチ村を監視している冒険者から、ガルチ村にゴブリンが集結していると今報告が来ました。

それを受けて、副ギルド長を先頭に魔法使いの冒険者達には東門から南門に向けて3層の野戦陣地の土壁を作成させています。

つきましては、陣地構築に騎士の方々を応援に出して欲しい。」


「当然だ!直ぐに騎士達を向かわせる!

トーマス、部隊長に、『東門に向かい野戦陣地の構築をするように』

と伝えてくれ。

騎士は屋敷の護衛当番以外全員出動だと。」

「畏まりました。」

執事は一礼して出て行った。


「父上、出ますか?」

「出よう。じっとはしていられない。

ティモンはいつ来る?」

「日暮れには到着するとのことです。」

「万が一にも被害を多く出したくないから、辺境伯宛に応援の書状を書く。

伝令を用意してくれ。」


「分かりました。

伝令を出しましょう。

フエンにも応援要請を出しますか?」

「そっちは、ティモンが出しとるじゃろ。

では早速ギルド長出るか。」


「私は、一度ギルドに戻って依頼報酬の準備をしておかないと行けないので一緒に向かえません。」


「おぉ、そうか。

アグウェル 街の防衛なのだから街が冒険者ギルドに依頼の形に致せ! 報酬は街の予算から出すように」


「了解しました。

ギルド長、そう云う訳だから後でトーマスに依頼書状と報酬費をギルドにもたせるよ。」

「ではな、儂は準備に向かう。」

と言って先代は出て行った。


入れ違いに執事のトーマスが戻ってきた。

「トーマス、野戦陣地の構築は街の依頼としたから後でギルドに依頼書状と報酬費を持っていって欲しい。」

「畏まりました。」

「ではギルド長、私は書状の作成に執務室に戻る」

代官のアグウェルも応接室を出て行った。

「では玄関までお送りいたします。」


建物を出て冒険者ギルドに戻ってみると、

若い冒険者達が受付に群がっている。

受付嬢のアメリアが

「浜辺に魚が大量に打ち揚がっているらしく若い子たちは取りたいのだけど、漁業ギルドが入れさせてくれないらしくて、シャーク系の魔物が魚を追い立てているらしく危ないからと止めて居るみたいです。」


「C級以上のパーティーは残っていないか?」

「C級パーティー〝白銀の剣〟なら酒場にいると思います。

彼らには魔法使いはいませんから。」

「呼んできてくれ。」

「分かりました。」


「よぉ〜し!小僧共!注目!!

話はわかった、俺が漁業ギルドに交渉に行くから、後で漁業ギルド前に集まれ!」

話し終えると、アメリアが冒険者を連れて戻ってきた。

若い子たちは三々五々散っていく。


「ギルド長〝白銀の剣〟のメンバーをお連れしました。」

「ギルド長、俺達に用があると聞いたんだが。」

「お前ら、今暇か?

浜辺に大量の魚が揚がっているらしいがシャーク系の魔物が浜辺に来てみたいで、打ち揚がった魚がを拾いに行けないらしいんだ。

それで、お前達には1人10万ダラで、小僧達の護衛と、襲撃してくるシャークの討伐をお願いしたい。」


「討伐は必須事項では無いんだな。」

「商隊護衛と同じ条件だ。」

「それなら出るよ。

皆んなどうだ!」

『了解だ。』

「良し! 今から出れるか? 漁業ギルドに交渉に行くから付いて来い」

「分かった。 皆んな行こう」

「おう」

直ぐに、冒険者ギルドを出て街の東にある漁港に向かった。


漁港には屋根のある広場見たいな市場に漁業ギルドの建物がある。

その市場前に若い子たちが集まりつつあった。

漁業ギルドに入って行くと漁師達が群がっていた。

「お~い!ちょっと通してくれ。」

「冒険者ギルド長が何の用だ。」

「若い子たちに魚を拾わせようと思ってな。」

「そうか。でも取ろうとするとシャークが襲って来るぞ。」

「分かってる。

それで、C級冒険者を引き連れてきた。」

「そうか。漁業長!!冒険者ギルド長がC級冒険者連れて来てるぞ!!」

奥から、漁師達を掻き分けて漁業長が向かって来た。


「おう!キール!浜辺の件か?」

「そうだ!それで若い子たちの護衛にC級冒険者見繕ってきた。」

「そうか!じゃぁ、うちも腕力自慢に銛を持たせて護衛させよう。

テメーら!腕自慢は護衛に!自信のねえ奴は魚をかき集めろ! 海のもんが陸のもんに遅れを取るんじゃね~ぞ」

「おう」

歓声と共に漁師達は浜辺に向かうべく建物から出て行った。


市場の前に行くと若い子たちが100名程集まっていた。

「良し! 小僧共!漁業ギルドの了解は取った、浜辺に向かうぞ。」

『やった〜。』

若い子たちを引き連れて浜辺に向かう。


浜辺まで行くと、女子供が木箱をピストンしながら運んでいた。

指示を出している男性に声を掛ける。

「ちょっと良いか? 冒険者ギルド長のキールだが、漁業長に断りを入れて魚を拾いに来た。」


「話は伺ってます。

自分は漁業ギルドで主任をしているガングットといいます。

ギルドから魚を入れる木箱を運んでいます。

冒険者の皆さんもこの木箱を使ってこの集積地に運んでくだされば、一匹につき100ダラお支払いします。

集積地からはあの馬車達で運びます。

宜しくお願い致します。」


「了解した。

小僧共!1尾100ダラだ。

木箱を持って集めてこい。

漁業ギルドの職員に渡したら支払い木札貰うの忘れんじゃねえぞ!!行って来い!!」

と言って送り出す。


「白銀の、悪いが水辺近くで護衛待機してくれ」

「分かった。」

と白銀の剣も送り出す。

漁業長が集積地に到着した馬車から降りて来たので、声を掛けた。


「おい、ガンリックよ。

この現象どう見る。」

「儂が思うに シャーク系の魔物はナブラが立つと何処にいようと集まってくる。

ナブラっていうのは 大きな魚に追われた小魚の群れが水面まで上がり、水面をバシャバシャと逃げまわっている事を云うんじゃが。

それと同じ事をする何かを襲っておったんじゃ無いかと。

それに向かう途中で魚の群れと遭遇してそっちを追い立ててこの浜辺の始末じゃ」


「そのナブラっていう現象を起こした何かってもしかしてゴブリンって可能性は無いか?」

「ゴブリンじゃとしても、奴らは泳げんから水面で、いつまでも暴れてはおられんぞ。

それこそ何十匹も海に落ちんと。」


「ガンリックよ。

ボロッカー山地方面に船出してもらえんか?」

「キールよ。 もしかしてガルチ村の件か?

そうだとするとエラい事だぞ。」

「あぁ、俺の考えている事が現実だったら、エラい事だ。」

「分かった。

お前まだ腕は鈍っていまいな。」

「大丈夫だ。

毎日、欠かさず鍛錬している。」

「良し! 儂が、ギルドの捜索船を出そう。」

「良いのか。あれ魔道具船だろ。」

「大丈夫じゃ。 偶に使わんといざという時に使いもんにならんからな。」

「そう云う事ならお願いする。」

「良し!ギルドに戻ろう。」

魚を積み込んだ馬車に乗り込みギルドに向かった。










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