第3話シアン
耳元で大声で叫ばれて・・キーンって。鼓膜がイカれるじゃないか。
「全く煩いよ。」
折角ムード高めて美味しくいただこうとしていたのに。
「ナナシ?」
大声で叫んで抵抗したナナシは頬に涙を伝わせたまま寝てた。
「あれ?寝落ち?」
お楽しみはこれからなのに意識を失ったナナシの頬に触れる。
そんなに嫌だったのか?
「寝ているが・・犯すか?」
殺人以外での欲情。
自分の感情に戸惑う。欲望に任せて襲ってみたが・・・。はぁ。
仕方ない。寝せてやるか。何か萎えたし。
そう考える自分自身の感情にも何故か苛立つ。
落ち着け。
溜息を付きながらまたナナシの頬を撫でる。
この感情が何なのかさっぱり理解出来ない。
異世界人か・・・。
異世界人が来たばかりの時は異常な程に眠ると言う噂は本当だったのか?
異能を授かった体の同期と言うか慣れるまで1日中寝る者もいると聞いた事がある。
その眠りの期間に召喚された異世界人は脳内にチップを埋め込まれる。
キスと言う少々強引なやり方で口内を確認したがやはり異世界人がこの世界に来た時に無理矢理開けられる政府や警察管轄の異能者特有のピアス穴は無かった。
本当に野良異世界人なのか?
ボスは好きにしろと言った。
この意味は勿論、犯せと言う意味ではない。
政府または警察管轄の
むしろ犯したりしたら怒られそうだが。欲望が抜けない。
「スッキリしない。殺るか。」
勿論、ナナシでは無く誰か。
こいつの匂いが付いているだろうし面白い異能者が狩れるかもしれない。
仕方ない。拘束は解いてやろう。
でも、この家から出られては困るから。
外へ出て異能を発動させる。
家を拘束。
これで扉も窓も開かない。我ながら面白い異能者に生まれたものだ。
ボスは今度のミッションまで大人しくしていろと言っていたのだが。
俺は人は縛るが自分は縛られない。
フフっ。自然と自分が殺人鬼の顔になる。
さあ、街へ繰り出すか。
・・・・・・・・・・・・・・・
温かい。人肌?
凄く長く眠っていた様な。
目を開けるとそこには殺人鬼の顔が!!!
「うわぁー!!!!」
大きな叫び声を思わず上げて飛び起きる。
「やあ。起きたかい?」
奴はニヤリと微笑み俺を見詰める。
うわ。俺、裸だ。そのままやられたのか?
思わずベッドの端へ後ずさり。
「縄が解けてる。」
自分の両手にも足にも無かった。
「解いたよ。」
「えっ?言葉通じてる?」
唇に違和感を覚えて触れるとイヤーカフスみたいな物が付いていた。ピアス穴は開けられてない。
「最新型を買ってきた。服に付ける翻訳機は不便だし。」
「あっ。。ありがとうございます。」
昨日とは全く違う欲情していない奴の顔を見て少しだけ安心した。
「顔に出るね?安心してる?」
奴はズバリと心を読んだかの様に聞いてくる。
「君が寝ている間にちょっと2人殺してきちゃったからね。スッキリしている。」
それを聞いて俺はまた少し後ずさりした。
「一応、確認しておこう。政府と警察から雇われた異能者かい?」
また冷酷で人を何とも思わずに殺れる目だ。
「政府と警察?貴方の言っている意味が解らない。頼むから少しこの世界の事を教えて欲しい。」
奴の目はやはり疑っている。
政府に警察?俺は本当はその政府や警察に召喚されたのかもしれないな。でも、何故か俺は荒野に居た。
「政府はこの世界に来ると100%異能者になる異世界人を定期的に召喚している。そして俺の様なこの世界で生まれた異能を持つ犯罪者と戦わせている。」
100%異能者になる?そして戦わせる?
「それは勇者を召喚したみたいな感じで祀り上げられて戦わせられるって事ですか?」
「そういう事。」
奴はニヤリと笑った。
「因みに召喚されたら翻訳機を無理矢理取り付けられて。逆らう場合は脳内にチップを埋め込まれるよ。」
俺の目や顔色、奴は観察している様だ。実際、顔に出るし。
今、俺はめちゃくちゃ不快な顔をしているだろう。
「俺の脳内にチップが埋め込まれている可能性を貴方も他の皆も疑っているんだね?」
そうそうと奴は頷いた。
参った。この家から抜け出しても政府に捕まる確率が高い。そして此奴らと戦わせられるのか。
世間的には此奴らは悪。政府は正義。
自由な悪と意志の無い正義。
要するに政府側に付いたら死ぬ迄飼い殺しって事だろ?
「何を考えている?」
奴がクスクス笑いながら聞いてきた。
「政府側に付いたら死ぬ迄飼い殺し?であってる?」
「正解!」
奴は嬉しそうに俺の側に躙り寄る。
「えっと。1週間後に匂いがしなくなったら政府に追われずに暮らせるの?」
奴はうーん?と少し考えて
「さあ?そう言う前例が無いから。」
と言った。
そして俺の目を見詰め全てを見透かす様に。
「で?君はどうしたい?」
そう聞いてきた。
言葉に詰まる。
「解らない?」
奴が俺の髪に優しく触れる。
何故だろう。そこに恐怖は無くて。見詰める目にドキドキする。
「もっ・・。もう少し考えさせて下さい。」
視線を逸らして答えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます