第16章 決戦

第144話侵入

決戦当日。


エルーカさんとバニラさんはジ・パング空港国際線から大元帥達の出発の見張りをしている。


俺達はまだアジトだ。転移準備中。

大元帥達が政府管轄国へ飛び立ってから侵入を開始する。


俺達の侵入が彼等に連絡が行っても時間差で召喚士ユウヤを捕獲出来る算段。


「メール。無事離陸。同行者ヴァルヴァラのみか。」

ボスが政府機関に残っているSランクが多いな・・と少々不満そうだ。エルーカさんとバニラさんは大元帥達が帰国まで空港に待機。また連絡が入る事になっている。


「ベイクとアランが厄介やなあ。」

とリョウも苦笑い。

でも、出動を迷う事は出来ない。


「転移先は政府機関の屋上ヘリポートだな?」

元締めが確認し転移魔法陣を展開した。

そう、上から下へ降りる。


少しでも敵に遭遇しない為だ。


召喚士ユウヤだけは絶対に殺せない。拉致するのが目的なので特に慎重に。


「では、いざ出陣!」


――転移――


全員を乗せた転移魔法陣が光り次の瞬間には政府機関の屋上に居た。


広い・・。

ヘリポートと貯水タンク、室外機だけの無人の屋上だった。

隅には入口が見えた。


「出来る限り気配は消して。ってユウヤにはバレてるみたいだけど。」

ボスがニヤっと笑い、さあ行こうか?と屋上入口へ向かった。


「この階だけはSランクでも来られる。早めに降りようや。」

リョウがそう言った。

20階から屋上までは他の階には止まらない直通エレベーターがあるらしい。


屋上入口のセキュリティをハーミット様が解除。


「まだアラン達は気づいて無いで。」

リョウは偵察を行いつつエレベーター前を通り過ぎ階段ドアまで案内してくれた。


「じゃ、ハッキングしてセキュリティ解除。25階だよね?」

エレベーターや各階のドアセキュリティもアインシュタインが管理している。


エレベーターは開いた瞬間が狙われやすい。

俺達は階段を利用する事に決めていた。


追われている訳では無いので足音は消して降りて行く。

これだけ大人数で向かうんだ。

そろそろバレるだろう。


ただしアインシュタインのセキュリティのお陰で時間稼ぎは出来る筈だ。


この階に本来なら大元帥が居るのか。

27階は大元帥のフロア。

26階は元帥とアインシュタインのフロアらしい。


誰も入れないのに階段でも赤外線センサーのセキュリティが張られていた。

厳重過ぎる。

それをこの前のアインシュタインへの潜入で解除出来るんだから頑張った甲斐が有る。


結局、洗脳した犯人は誰だったんだろう。


25階のドアの前に着いた。


「ドアの前、このフロアもユウヤ以外は居ないな。」

全員がそう確認した。


「部屋で待ってるわね。」

社長さんも捜索異能を使える。


「急ぐで。Sランク達が20階に待機してるわ。」

やはりバレた。


大元帥や元帥にも連絡が行ったかもな。


25階入口の扉を開けた。


殺気は感じない。寧ろお手並み拝見?と言った気が伝わってくる。


俺達は20階の待機異能者の警戒をしながら25階フロアに足を踏み入れた。


フロアは静寂に包まれている。


「ミナキ。」

ボスがそう言った。


「了解。」

結界は何時でも張れる。


奥の部屋に近づくと微かな機械音がした。


「召喚システムだろう。」

ハーミット様が恐らく?と言う。


大きくて装飾の綺麗な洋風のこのビルには似つかわしく無い雰囲気のクラシックな扉。


その奥に・・・居る。


機械音も扉の中から聞こえた。


ボスは目配せして全員では入らず念の為に扉前待機組と中に入る者と分かれる事にした。


中に入るのはボス、俺、ハーミット様、ウェン、シアン、ヴェガにオーガ、海誠先生だ。


ボスは丁寧にノックして返事を待って中に入った。


「やあ?カプリス諸君と海誠先生まで?あれ?生きてたの?オーガ君?」


ユウヤは席に着いたままニヤりと笑った。


「初めまして。」

ボスもニヤっと笑いかける。


そこには冷ややかな殺気が流れた。


この人数で押し掛けたのに全く動じてない。


牽制する様に俺達は見つめ合ったままだ。


ピクっとユウヤの右手人差し指が僅かに動いた。


「ミナキ!オーガ!!」

ボスの叫びと共に、


――結界都合のいい男――


――全員異能破棄マクロデストロイ――



床一面に元締めの転移魔法陣の様な魔法陣が描かれたかと思った瞬間にオーガの異能破棄によって消滅した。


「へー?やるねえ?何処か遠くに飛ばしてやろうかと思ったのに。」

ユウヤは残念と笑いながら立ち上がる。


指がちょっと動いただけだった・・。


「海誠先生は?洗脳解けちゃった感じかな?」

ユウヤは海誠先生をじっと見詰める。


「榎津さん!貴方も洗脳されているんです!俺に脳内チップを入れない様に計らってくれたのは有難かったです。でも!貴方も!」

海誠先生は必死の形相で訴えかけた。


「またエメリヒ大元帥に洗脳して貰おうね?」

ユウヤは冷ややかな目で海誠先生を見た。


「オーガはやはり厄介だしミナキ?と言ったかな?君も厄介。」


ユウヤに寄ってセキュリティが解除されたのか下の階に動きが・・。

20階のSランク異能者が上に上がって来ている。

その気配と目の前の痛い迄の殺気に挟まれた。


「殺すなよ?捕らえるんだ。外は任せよう!」

ボスがそう言った瞬間に俺の結界は破壊されユウヤの蹴りがボスを捉え吹っ飛ばした。


「寝言は寝て言えよ?」

ユウヤはクスっと笑い更に俺達に攻撃を仕掛けてきた。

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