第152話トール元帥

初めて入ったトール・ミクリヤのフロア。

いや?ちゃうな。脳内チップ入れられる時に来てるやん。何か記憶が蘇って来た。


俺、ジハード、ヴェガ、ラズ、元締めさん、リュートは26階のトール元帥フロアに入った。


「こっちや。」

記憶ではトール元帥の部屋はこの突き当たり。中で待つ予定や。


ん?ドアの中から何やら機械音がする。


「何か居るな。ロボットか?」

元締めさんが不信そうな顔でドアの前で開けるのを躊躇った。


今、大元帥、元帥、ヴァルヴァラは1階フロアに入った所だ。


「ちょっとこっちを偵察しますわ。」

他の皆では人間では無いから気の気配しないし危険察知能力では部屋の中の詳細は解らないようやし。


一旦、意識を此方に戻すとトール元帥の部屋に居るのはやっぱりロボット。

うーん?アンドロイドと言った方が良いかもしれへん。

知能ありそうなのが3体。人型、人型、犬型。


「これは機械にされた異能者かも。」

説明すると全員少し嫌な顔になった。


部屋の広さは榎津さんの部屋の倍くらいあった。戦闘はしやすそうや。


そして、このトール元帥の部屋奥の扉の中は脳内チップを入れる機械室な筈。


「此処の部屋、思い出しました。」

リュートが眉間に皺を寄せて扉を睨みつけた。


「どうする?中に入るか此処で待つか。」

ヴェガと元締めさんは待つか?と言った。


「エレベーター乗った。間もなくや。扉から少し離れよや。」

急に攻撃されても機械だと音で察知するしかない。殺気も無いから面倒。


エレベーターが止まった。

エレベーターの扉が開いた瞬間から漏れ出す挑発的な殺気。

そして、同時にエメリヒ大元帥の気配に異様な寒気を感じた。


鳥肌が立つ。


「これは凄いな。」

ラズがボソッと呟くと皆も頷いた。ブルっと武者震いの様にリュートも身体が軽く震えた。


敵になるとこれ程のものなんや・・。


カツッ・・・カツッ・・・と足音を敢えてたてる様にトール元帥は此方に向かって来ている。


気合い入れなあかん!

1歩また1歩と近づく度に皆の顔から笑顔が消えた。


「やあ?お揃いで。」

トール元帥はニヤっと笑い此方へゆっくり向かって来た。

冷や汗が背中をツーっと流れた。


「全く。何処にユウヤを隠したんだい?困ったお子様達だ。」

俺達との距離5メートル程の位置でトール元帥は止まった。


「中に入らなかったのはお利口さんでしたね?」

トール元帥はフフっと笑い右手を俺達に向けて翳した。


俺達は咄嗟に構える。


バンッッ!!!と勢い良くトール元帥の部屋の扉が開いた。


「うおっと!!」

思わず避ける。


中に居た3体のアンドロイドの目が光った。


その瞬間、やっぱり襲ってきた。


剣を抜き攻撃を受け止める。


他の皆も攻撃を食い止めた。

「ほら?こっちにも集中しないと?」


アンドロイドの攻撃を避けた瞬間にトール元帥の剣が振るわれ俺の服の端が切れた。

「おっと!危ないやん!」

あー。びっくりしたわ!!


何やねん!このスピードと無気配。


犬型アンドロイドはヴェガとジハードが相手している。


「良いだろ?この子達。なかなか強い異能者達だったからねぇ。」

やっぱりか。トール元帥はニヤりと笑いまた俺に攻撃を仕掛けてきた。


狙いは俺か。


「アンドロイドは任せた!」

元締めとラズにこのちょっとガタイの良いアンドロイドを任せ、もう一体はリュートが相手する事になった。


しくったな。

人数もっとこのフロアに当てるべきやった。


「脳内チップを抜いたのはあのオッドアイの子だね?良いなあ。欲しい。」

俺への攻撃は怠らずヴェガの方をチラチラと見ながら。

クソ!おっさん!!体術のスピードと重さが!!ハンパねぇ!


「リョウがやべぇ!さっさと片付けるぞ!」

「臓器じゃないよ?いけるの?」

ヴェガとジハードはそんなやり取りをしながら犬型を追い詰めつつあった。


――引力アトラクティブフォース――


ジハードの新しい技の1つが発動した。

犬型アンドロイドの攻撃がストップして強引にジハードの元へ引き寄せられる。

その隙にヴェガは悪そうな顔で

「はい。お終い!」

犬型に勢い良く剣を刺した。


ジッジジジジ・・・プシュー・・・。

犬型アンドロイド完全停止。


おっと!見てる暇ないわ!攻撃が的確に急所を狙ってくる。


「リョウ!危ねー!!」

ヴェガがトール元帥の背後から斬りつけた。

キーン!!

その剣をトール元帥は受け弾き飛ばした。


「は?!まじか?」

一瞬を見逃さずトール元帥はヴェガの背後に回り込み斬りつける。

「やらせませんよ?」

キレ気味のジハードがトール元帥の剣を受け止めた。


「ふーん?面白い子達だ。」

フフっと笑いながら俺達3人への連続攻撃は甚振る様に繰り広げられる。


3対1。まだあかん。


ラズと元締めの相手の人型は身体強化型異能者の様な動きを見てせいた。


「体術じゃしんどいな。ラズ、凍らせろ。」

「OKです。」

――氷の墓石アイスグレイブ――


ピシッピシッと音を立ててアンドロイドは足元から氷始めたが機械の温度が高いためか凍り方が悪い。


「まあ、それだけ足止め出来たら充分だ。」

元締めは錫杖をシャンッ!!と振るった。


「行ってこい!!」


――転移――


アンドロイドの足元に魔法陣が光りアンドロイドは何処かに消えた。


「ユウエン。何処に飛ばしたんだ?」

「ん?あはははは。海中だ。」

元締めさんらしいっちゅーか。


これで5対1やで。


リュートは柔道技の連続攻撃に入って居た。


――リュート流・袖釣込腰――


――リュート流・体落とし――


アンドロイド相手にようやるわ。


「ラストー!!」


倒れたアンドロイドに絞め技。いや、痛くないやろと思ったが・・・。


「あっ。折れた。」

折れたと言うか・・。壊したやろ。

アンドロイドの腕は抜け首は曲がり。

何か無惨な状態で停止した。馬鹿力。


「さあ?やられてもーたで?おっさん!」

これで当初の予定通りや。


「そうだねぇ。」

何か余裕そうや。今までもギリギリでいたぶられてた感じやし。


何か引っかかる・・・。何や?


「トール元帥。時間稼ぎでっか?」

攻撃を受けながら質問してみた。


「何言ってるの?本気だよ?」


嘘や・・・。何や?

時間稼ぎ?


何の為?


「何や企んでんのやろ?」


「何を?相変わらず直情的だね。君は。」


企んでる・・・。何や?


6対1やのに攻撃は対等で遊ばれてる感じが抜けない。

悔しいが決定打にかける。


異能発動する隙が無いと言うか。


「エメリヒが倒されるのを待っているのか?」

ジハードがキレ気味にそう聞いた。


「まさかあ?エメリヒが殺られる事はないよ?」


殺られる事は無いは本心。


まさかあ?は嘘や。


待ってるんや・・・?何でや?


「拉致があかないねえ。疲れてきたよ?」

クスクスと笑いながらトール元帥は指をパチっと鳴らした。


機械音がし再び元帥の部屋から人型アンドロイドが2体出てきた。


「まだおったんや。」

「そうだね?まだいるよ?」


クソ!時間がかかる。


やっぱり時間稼ぎなん?


何の為?


その時、頭の片隅にミスリードと言う言葉が過ぎった。

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