第151話エメリヒとトールとヴァルヴァラ
「ほう。これは見事に侵入されている。やりますね?ヴァルヴァラ、雑魚は頼みますよ?」
「はい。トール元帥。ベイクとアランの従者モードが解かれました。殺られたのかもしれません。」
「ユウヤが居ない。逃げたか?トール!解っているだろうな?使える奴は捕らえろ。」
「仰せのままに。2階に5人。私とエメリヒのフロアに合わせて?16人か。ベイクとレイは2階に居る。ヴァルヴァラ?解っているな?」
「御意。」
・・・・・・・・・・・
エメリヒとトールが建物内に入った瞬間から空気が変わった。
建物内を確認する様にヴァルヴァラと3人で入って来た。
俺達の侵入はもうこの建物内部の異能者全員が気付いているだろう。
でも、上層階には誰も来られない。
今、玄関ホール。
俺達全員、危険察知や偵察の異能を使いながら彼等の様子を伺っていた。
バニラさん、エルーカさん、ディード、ベイクとレイは2階に隠れる様に待機している。
隠れる場所に関してはベイクとレイに任せた。
5人はヴァルヴァラとAランク異能者を倒す役割。
運が良いと言えば良かった。
Sランクは後はヴァルヴァラしか居ない。
リョウを初めとしてレイもベイクもヴァルヴァラは元帥達のフロアには絶対に入れないと言う確信があった。
報告をしている異能者が不愉快そうな顔の元帥に張り倒されていた。
「ご機嫌悪いなあ?」
リョウはクスクスと笑いながら偵察している。
もしもの為の洗脳対策としてあまり近距離には寄れない。
エメリヒとトールだけエレベーターに乗り込んだ。
来る・・・。
・・・・・・・・・・・
エルーカとバニラと俺。そして、今回仲間になったベイクとレイの5人で2階の空き室に隠れる様に待機していた。
目的はヴァルヴァラとAランク異能者数名を倒す事。
正直、ガブリエルの側に居られないのが心配でならない。
でも、ボスも社長も居るし・・。ミナキも居るし。
きっと大丈夫。俺は俺の仕事をする。
「ヴァルヴァラにバレた。」
「体術弱いけど光弾が厄介なんだよね。」
割と余裕そうなベイクとレイ。
「幻影発動するから。俺の身体に触れててくれる?」
レイがそう言った。
発動時にレイの身体に触れていたら幻影の異能に惑わされないと言う。
そう言う仕組みだったのか。
――
「不思議な感じね。」
「相手に見えてる光景が薄らと見えて実際の背景がくっきり見えるんだわ。」
エルーカとバニラが納得した様に頷いた。
こんな風にレイには見えていたのか。
「おい!!レイだな!」
キレた口調でヴァルヴァラが2階に上がって来た。
このフロアに居た他の政府異能者も異変からウロウロと探索する様に俺達を捜し始めた。
しかし、上手いこと見付からないのが凄い技だ。
「Aランク3名。Bランク5名。後は雑魚だ。」
ベイクがそう言って部屋から出て迷わずAランク異能者の方へ向かって行った。
「私達も行きましょう。」
「ヴァルヴァラは宜しく?でいいのかな?」
エルーカとバニラにそう言われてレイは何やら嬉しそうな笑顔で任せて下さい!と言っていた。
あー。此奴もバニラとエルーカの顔に騙されてるな。
後でちゃんと話してやらなきゃ。
「ディードは俺と組むぞ。」
「OK。」
2人でヴァルヴァラの相手か。
あいつの強さは良く解っている。昔の俺ならかなり厳しい事態だ。
見えていないが気配は消す。
実際の建物の部屋や物陰に居るだけで見付からないものなんだな。
ラズの凍気などで炙り出す形では無いと確かに解らない。
「クソ!クソ!クソレイ!」
イライラMAXのヴァルヴァラ。
見た目は本当に幼子なのに溢れ出す殺気は子供じゃ無い。
物陰からレイが攻撃を仕掛けた。
「ケッッ!!やっと姿を現したか!」
「相変わらず口悪いお嬢ちゃんだ。」
剣の攻防が続く。
俺も出陣!!
「こいつはカプリスの?ケッ!!」
何?俺だと不満かよ?
ムカつく。
俺もソコソコ強くなったぜ?
レイと連携しながら攻撃を仕掛ける。
「死ね!!」
ヴァルヴァラの光弾が連射され始めた。
「ハッッ!!」
サラリとレイは避ける。
「おっと!」
俺も避ける。うん。素早さ上がっている。
「ああ!!ムカつくー!!」
右手は剣の攻撃、左手は光弾。
これが1番面倒な攻撃だ。
――
ヴァルヴァラの剣を狙う。
そう、縮小の成功率が現在ほぼ100%。
「あー!!何だ?剣が?!」
剣を振るうがそれはもう短剣サイズ。
「もっと小さくしようか?」
短剣だと詰め寄られないと攻撃は当たらない。
シアンやボスみたいな体術極め系のタイプじゃないと短剣って向いてないんだよね。
「出来したディード!」
「まだまだだよ?」
連射される光弾。
少し詰め寄り斬りつけては距離を取る。
まだ致命傷には至らない。
――
一瞬を見逃すなよー!!
「うわっっ!!!」
ヴァルヴァラの靴を狙ってみた。
前のめりに転けそうになった隙に上手く合わせてレイが背後から刺した。
「クソがぁ!!!」
血を流しながらもヴァルヴァラは立ち上がった。
「何時も思う。何故、戦うのか。政府は何故ここまでやらせるのかって。」
レイがヴァルヴァラに向かって言った。
「ヴァルヴァラは解らないよね。脳内チップが入っているから。本当ならまだ子供の癖に。」
その言葉は同情に聞こえた。
「意味の解らない事をほざくな!殺る!」
ヴァルヴァラの手には光弾が灯っていた。
――
何を見せられたのか。ヴァルヴァラの光弾はあらぬ方向に放たれた。
「フフフ。あはは。」
ヴァルヴァラは心ここに在らずと言う顔で笑いながらふらっと倒れ込んだ。
「殺したの?」
そうレイに聞くと
「夢を見せてるだけ。」
と微笑んだ。
「後は運次第。先にトール元帥を殺せたらヴァルヴァラは死なずに脳内チップの効果は無くなるだろう。」
俺は頷いた。
「先にヴァルヴァラが死んだらそれ迄。冷たいと思うかい?」
その質問に俺は首を横に振った。
こいつはシアンを連れ去った。
ボスは殺したかった筈だ。
俺達にとっては温情だと思う。
「俺もこの世界に染まって冷たい殺人者になったんだけどね。でもこの子はまだ子供だからさ。」
レイは少し悲しそうに微笑んだ。
「充分、優しいと思うよ。」
レイの肩をポンと叩いた。
「さっ。残りの雑魚を殺ろうか。」
「賛成。」
バニラとエルーカ、ベイクの元へ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます