第115話一時避難
元締めの提案に中年獣人達が乗ってくれた。
若手は何か起こった時に護る為に残る。
男女合わせて15人が駆除屋でアルバイトをする事に。中年と言っても普通の異能者より体力もあるし強い。
「俺も行く。カプリスは大元帥と戦う気だろう?全ての獣人の敵討ちをしたい。」
ゼットがそう申し出た。
「君が居なくて獣人の護りは大丈夫なのかい?後、直ぐに政府に攻め込む様な真似はしない。5ヶ月くらいは時間をかける。」
ボスはゼットにそう言った。
「そうか。5ヶ月後・・。」
少し考え込む様に黙った。彼としては直ぐにでもと言う気持ちがあったんだろう。
獣人達の安全な暮らしの為に今の政府を潰すのは必要不可欠。
「ゼット。気にせず行って来い。まだまだお前には特訓が必要だ。今回の戦いで解っただろう?」
高齢の獣人が諭す様にゼットに言った。
「ゼットの父親は生き残ったが最終的には政府偵察中に捕まって殺されたんだよ。」
高齢の獣人は俺達に向かってゼットを頼みますと頭を下げた。
「解りました。」
ボスは頷いた。
「近況を報告して下さいね。何かあったら必ず助けに来ます!」
ラズとジハードがエクア・ドルに残る獣人達と手を取り約束を交わす。
「先ずはジャングルに彼等を連れていくから待ってな。だいたいで良い?」
元締めは彼等を転移してくれると言う。
確かにジャングルまでの道のりも敵に会う可能性もある。
元締め達が転移している間。
チラリとハーミット様を見たが何だろう?無表情だ。
嬉しい筈なのに。
「ゼットは駆除屋でアルバイトするの?それともカプリスに来る?」
ボスが気軽に話しかけた。
「もっと体術を極めたい。だから出来ればカプリスに入りたい。」
ゼットは真剣な顔でボスに訴えた。
「だってさ?アルージャ。」
ボスがハーミット様にニヤっと微笑む。確実に日頃のお返しと言う顔だ。
「まあ。良いんじゃないか?」
ハーミット様は特に表情は変えずにそう答えた。
・・・・・・・・・・・・・
何が起こった?
え?
何故、俺の部屋にゼットが居るんだ。
アルージャです。
カプリスに突然入ると言い出した俺の初恋の相手が今、目の前でカップ麺を食っている・・・。
そう、あの後直ぐにユウエンによってエバーステイのマンションにカプリス全員とゼットを連れて帰ってきた。
疲れたので本日は解散となった。
と、そこまでは良かったのだ。
ゼットの住まいはてっきりアジトになると思っていたのに。
無理矢理・・。そう無理矢理に俺の部屋に押し込められた。
もう、言葉を発する暇もなく?
いやいや、断った。
「アルージャ。麺伸びるよ?」
ゼットがラーメンを啜っている。
「う・・。うん。」
ズルズル・・ズルズル・・・。
ずっと会いたかった。
会えずに?いや、会えたのに会いに行かずに。
もう二度と会わないと勝手に決めて。
「何故、アジトに住まない?俺の部屋に来たんだ?」
ゼットは首を傾げる。
「え?友達だし。獣人は集団生活だから1人は寂しい・・。」
うううう!!なんだその可愛い笑顔!
「確かにそうだったな。」
アジトに皆で暮らすのが普通。
結婚した獣人はどうしてた?獣人同士はアジトに居たよなあ。
人間との場合はどうするんだ?
まあ、良いか。
「ゼットって何歳?て言うか人間と同じ寿命なのか?」
多分、年上なんだよなあ。
「人間と同じだよ。動物より長い。失礼な話だよ!」
ちょっとプンとした顔もまた可愛いが。
「解っていないから人間との間に誤解も生まれるんだよ。俺も暫く君らの元に居たから知っている事が多い。でも、子供の頃には気にならなかった事が気になる。」
例えば年齢とか・・・。その他諸々。
「年は28歳だよ。」
「やっぱり年上か。俺は25歳くらい。」
何だか舞い上がって話が弾んだ。
大丈夫だ。話せてる。
良かった。俺、ちゃんと話せてる。
風呂に入らせてその後、俺も入った。
「湯船、綺麗なんだな。毛だらけだったらどうしようかと思ったが。」
人型だからか。
これから俺はゼットと暮らすんだ。
気持ちを伝える?
もう、フラれるのは絶対に嫌だ!!
友情。それでも良いか。
ゼットが傍に居る。それだけで今は満足しよう。
風呂から上がるともう日も落ちて居た。
部屋は暗がり。
「電気は付けないよな?」
「勿論。アルージャもだろ?」
そうそう。
今は良い同居人。
「俺は今から政府にハッキングするよ。」
日課だし。
「俺も見てて良いか?」
ゼットが横に座ってパソコンを覗き込む。
顔近いって!
心が乱されそうになる。
でも。幸せだ。
「獣人のその後のネタを探さないとね?」
「それは頼む。」
ゼットの顔は真剣で
そうか。1人の夜が1人じゃなくなるってこういう事か・・・。
孤独が好き。
暗闇が好き。
それよりも。お前と一緒が好きだ。
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