第120話ゼット

アジト会議後に部屋に帰って来てからゼットの様子がおかしい気がする。


何かソワソワしてるし。


大元帥の話を聞いて早く敵討ちをしたくなった?

体術特訓が楽しみ?

いや?何か違うなあ。


「ゼットどうした?」

聞くのが早い。あれから勿論、俺達は何も無い!!

楽しい友情継続中。


「アッ!アルージャ!えっと。いや、何でも無いよ。」

いやいや。何かあるだろ?

え?この反応はまさか!!エルーカやバニラに?!

こいつノーマルだし。あいつら美人だもんな。

それともボス?!!


「ソワソワし過ぎ。なんだよ?」

クソ・・・。ちょっとイライラしてきた。


ゼットの顔はちょっと困った顔で。

好きだから解る。この何時もとの違い。


「ちょっと言いにくいんだけど・・。」

あんまり聞きたくない。

でも、聞くしかない。


「聞くよ。さっきの会議で何かあったんだろ?」

あー。俺、イラっとしている。


「明日から特訓!!だよね?」

「そうだけど。何か?」

特訓絡み?


「あのー。俺、獣人だからさ。」

うん。知ってる。


「我慢してたんだけど。」

だから何、我慢って?なんだよ?女か?エルーカ?バニラ?

とは言えない。


「ブラッシングしてくれない?換毛期で・・・。我慢してたんだけど。最近、暑くなってきたし。特訓してたら暑さで倒れる。」


・・・ん?


換毛期?


「え?毛?」

「そう。夏毛に・・・。」


あー。なるほど。動物ってそうなのか。って動物扱いしたら怒るんだよな。


「勿論、良いよ。」

獣人は獣人同士で換毛期はブラッシングし合うらしい。


「ありがとー。めちゃくちゃ抜けるから覚悟してね!!」


ちょっと待っててと寝室にゼットはいそいそと入り獣人化して出てきた。


どドン!とデカい獣人化した人狼ゼットがリビングに伏せしている。


もしかしなくても全裸!!!


「ブラッシングか。普通にして良いんだよな?」

「うん。頼む。背中とか自分で出来ないし抜け毛が酷いから遠慮してたんだよ。」


「そんなの。全然、気にするなよ。」

ブラシを手に試しに背中の毛をサラっとブラッシング。


モサモサっと毛がブラシいっぱいに抜けた。

「うおっ!こりゃ本当に抜けるな!」

「うん。ごめんー。」


「大丈夫だって。」

毛をブラシから取ってっと。ブラッシングする度にモサモサ。

こりゃ暑かっただろう。


「ハゲないよな?」

「ハゲないし!」

クスクス笑いながら今度は頭部もブラッシング。

楽しくなってきた。


何か・・・良いな。


これはスキンシップ!!

そうだめちゃくちゃ俺に心を開いてくれている・・。ちょっと嬉しい。


「えーと。おしりや尻尾もして良い?」

「あー。お願いして良い?」

当たり前ぇぇ。

ふふっ。笑顔が勝手に零れる。


「スッキリしたぞ。」

背中をサラサラと撫でる。夏毛だ。

抜け毛沢山。

「次、腹な。」

「えっ!良いの?」

ぶっちゃけやりたいです。


腹の方の毛もモサモサと抜ける。

前は胸筋が解るな。


・・・。股間は見ても良いのか!!?

見よう。こんな時しか見れないじゃないか!!

「首上げてー。」

気持ち良さそう。

チラっと。


えーと。デカい・・・。そりゃそうだ。想像以上。

顔の筋肉緩めてはならない。そうだエロい目で見てはならない。落ち着け俺。


「この辺は・・・どうする?」

「あっ。自分で・・・。」

何か照れた感じで下半身は自分でやり始めた。

惜しかった。聞かずにやるべきだった。


沢山抜けたモサモサをビニール袋に入れて後は掃除機かけてっと。


ゼットはスッキリした顔で服を着て寝室から出てきた。

「アルージャ!本当にありがとう!掃除までごめんね!」

笑顔がキラキラで可愛い。


「ブラッシング初めてやったけど。案外出来るな。冬毛の時も言ってくれ。」

サンキュとゼットは微笑む。


ゼットの裸体に沢山触った・・・。うん。何か一歩前進!


日課のハッキングをして今日は早めの就寝。

毎日が新鮮で楽しい。


寝室にはゼットのベッドも買った。獣人達って本来は床でも何処でも寝られるらしい。いらないと言われたが勝手に購入。


俺達はベッドは少し離して今、同じ寝室。


いつか・・ゼットの腕枕で寝たい・・。

そう思いながら眠りについた。



翌日。


エバーステイは荒野があるから便利。

人気は無いし。広いし。


普段は不参加だが俺も体力を付けないと。


と言う訳で俺、ゼット、ウェン、ミナキ、ラズ、バックスレー、リョウ、シアンで荒野へ向かった。


「ジハードとディードはリオ?」

「だろうなあ。」

恐らくヴェガ達へ交渉しに行ったのだろう。

ボスはまた1人で何かやってそう。バニラとエルーカは拉致計画かな。


「んじゃ、分かれてやろうか。」

公平にこういう時はくじ引き。15分交代ローテーション。


ゼットはウェンと。俺はリョウ。ミナキとバックスレー。ラズとシアン。

なかなかミナキが気の毒だ。


俺はちょっと楽しみ。



「じゃあ!よろしく!ウェン!」

「うん。全力で。」

ウェンとゼット。どんな感じのバトルかな。

って、荒野は広いから見る暇無し・・・。



「やろかー?」

「お手柔らかにね?」

元政府のSランク異能者。強いのは本当に解る。

だが手合わせしてみたかったんだよね。


体術のみ異能無し、武器OK。


先ずは武器なしかな。


仕掛けてきたリョウの蹴りを止める。クッ!蹴り重い。

避けれなかったか。やっぱり強い。


「反応ええなあ?」

「そりゃねぇ。」

手抜きしなきゃ俺もそこそこなんだよ?


攻防が楽しい。良いね。

俺も強くなりそう。


・・・・・・・・・・・・


カプリスのみんなって強いとは思ってたけれど・・・。


このウェンって人も強い!


彼は身体強化タイプの異能者じゃないのにさっきから攻撃が躱される!


それに・・・。無表情過ぎて先が読めない・・・。


「ゼット?」

「はい。」


動きを止めたウェンが首を傾げて此方を見た。


「もしかして靴苦手?」

「え?!・・・うん。」

何で解ったんだろう。


「脱げば?」

「ありがとう。そうする。」

人型の時は勿論、服も着るし靴も履く。

でも、靴苦手。特にこの靴は見た目で買ってしまって荒野の赤土の上で動き難いとちょっと思っていた。


「お待たせ。行くよ!」

ウェンは表情変えず頷いた。


裸足は楽だー!

スピードも上がる。


攻撃が良い感じに当たる。


「うん。良くなった。」

ウェンは頷きながら蹴りを入れてくる。

それをガッチリ受け止める。



井の中の蛙か・・・。獣人はバレない様に見付からない様に暮らして来た。


だから鈍っていたってことだ。


だから、あんなマフィア相手に獣人姿を晒して戦争まで起こってしまった。


もっと強く。本来の獣人の強さを取り戻さなければ!


ここなら出来る!


「お疲れ。交代。」

「ありがとう!」

この人も表情変わらないけど優しいなあ。

そう思いながら次のバトルへ。


やる気がドンドン溢れてくる自分が居た。

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