第174話ウェンに俺の秘密を話した日
同性婚の法律が間もなく制定とされる少し前の事だ。
夢を見た。
初めてカプリスがJUSTICE&に登場した回の漫画を見ている俺。
思春期。
女の子に興味無し。かと言って男?
どちらかと言えば男が好きだと思っていた頃だ。
初登場のカプリスでまだ名前も無いウェン。うん、初回はボスとシアンとバックスレーさんしか名前無かった。
名も無いキャラクターに恋をした。
それで自覚したんだ。
男が好きなんだって。
それも2次元・・・。
カプリスが登場する度にドキドキと恋心が増した。
ウェン・ムーン。その名前を知った時。
本当にこの人と付き合いたいと馬鹿だけど思ったんだ。
俺の推し。
そう、世間一般的には推しキャラ。
でも。俺は本気で好き。本当に好き過ぎて・・・。
「ミナキ。朝だよ?」
「!!?ウェン・・・。」
何びっくりしてるの?とウェンは笑いながら優しく抱き締めた。
そうだ。言わなきゃいけない。
もしも俺がこの世界に来ないと言う事になってしまう過去なら俺は消える。
海誠先生の漫画次第なんだ。
凄く結婚したいけれど・・。今はダメだ。
ずっと隠してきた事実。
言ったら嫌われるかもしれないと言う思いがどうしてもあった。
最初から知ってた何て気持ち悪いよね。
「ミナキが何か思い詰めている。」
ウェンはちょっとムスっとした顔で言ってくれないの?と言った。やっぱり顔に出てたか・・。
言わなきゃ。俺は大きく深呼吸した。
「今から話す事。良く聞いて。そして信じて欲しい。」
ベッドから起き上がってそのまま座った。
「何?勿論、ちゃんと聞く。」
ウェンも起き上がって座ってくれた。
「今迄、黙っていてごめんなさい。」
先に謝った。ウェンは少しばかり不機嫌。
「あのね。俺はこの世界の事知ってた。この世界に来る前に海誠先生の漫画を読んでた。」
俺は海誠先生達より少しだけ未来から来たんだ。
・・・・・・・・・・・
ミナキは真剣な顔で語り出した。
俺はそれを聞く。
「漫画家さんが帰ってから描いた漫画を読んでた。なるほど。」
ミナキは頷く。
知ってたか・・・。カプリスの事や俺の事。
「あの。ウェン?ごめんね。気持ち悪いよね。」
ミナキは何故か酷く落ち込んだ顔で今にも泣きそう。
「え?どうしてそんな発想になる?」
寧ろ謎が解けたと言うか。
ずっと俺を好きだったんだ。
そう、ずっとずっとずーっと前から。
俺に逢う前から。
顔、ニヤけそう。
ダメだもう無理。
「フフっ。あはは。ミナキが可愛い過ぎる。」
「え?!ウェンの方こそ何故、そこで可愛いって反応になるの?」
ミナキは何とも言えない顔をして俺のニヤケ顔を見詰めた。
いや、嬉しいし可愛いし。
「ミナキ。上手く言えないけれど。漫画家さんが帰還してこの世界の話を描くのは事実でしょ?そう言ってたし。それをたまたま?時代がズレてて読んでただけ。」
ミナキはそうなんだけど。と頷いた。
「カプリスを知っていても漫画家さんは全ては知らなかったよね?だから不自然では無かったと言うか?」
皆の年齢とかミナキは知らなかったし。ボスの名前とか。
後は同性愛もか。
「うん。最初のエバーステイの宝石盗むミッションだけちょっと知ってた。後は何か漫画と違ってて・・。」
ミナキはそう言った。
あー!あー!
「それで、バックスレー?」
あの時、オーガが来る事知ってたのか。
そうかそうか。
「うん。バックスレーさんの事は助けたくて。本当は腕を失うって話だったから。歴史はそこは変えたかも。」
ミナキは頭をポリポリ掻きながら気まずそうに頷いた。
それは良い事をしただけでは?
「やっぱり。どう聞いても気持ち悪くない。ミナキは本当にカプリスが好きだったんだね。」
この世界に来たのはミナキの両親とアインシュタインの策略みたいだけど。
「俺、言おうか迷ったんだ。でも、余りにも漫画と現実が違い過ぎと言うか。海誠先生が描いてないから知らなくて。」
ミナキの頭を優しく撫でた。
そりゃ、知らなくて当然だし。
「ミナキ。好きなカプリスメンバーって。1番は俺。後はジハード、アルージャ、ボス、ラズだった?」
少し意地悪してみた。
だって。オーラがそう語ってたし。
「え?!!うっ。うん。」
ミナキは動揺した顔で少し苦笑い。
「あの自己紹介の時に解った。あぁー!本当にスッキリしたー!」
俺はミナキを思わずギュっと抱き締めた。
「聞いたら益々、好きになった!出会った瞬間から俺を好きだった謎も解けた!」
俺、相当テンション高い。
「うん。まあ、最初から好きで会えた事が嬉しくて仕方なかった。」
ミナキが可愛くて可愛くて堪らずキスをした。
異能って言うのは遺伝や環境、強く望む思い、後は能力値とか適正とかあるけどそんな事で決まる。
俺は全てをぶっ壊したい思いが光弾となり。
いらない異能と思っていた好きか嫌いか見えるオーラ。
違った。
これは必要な異能だった。
俺は愛が欲しくて仕方なかったんだ。
誰かを愛して愛されたくて。
誰かの1番になりたかったんだ。
それなのに家族なんて要らないなんて思っていた。
自分から誰も好きにならず。
愛が何かも解らず。
「ミナキが俺に全て与えてくれたんだよ。愛する事、愛される事を教えてくれた。」
好きだ。好きだ。好きだ。
愛してる・・・。
「ウェン。ウェンは俺の初恋。今も昔もずっとウェンだけだよ。」
ミナキは微笑んで俺に優しいキスをくれる。
「話して良かった。でも、皆には秘密ね!」
そう釘は刺されたけど。勿論、言う必要は無いと思うし。
既に時効だろう。
ただ、結婚は延期になった。
ミナキの消えるって可能性を聞いた時は顔に出さない様に必死だった。
この世界に来ない可能性?
怖い。失うのが怖い。
半年くらい生きた心地しなかった。
ミナキも言わなかったけど同じだったと思う。
ミナキがこの世界に来た日は俺達の結婚記念日になった。
同性婚は別姓でも良いのにミナキは俺と同じ苗字にした。
ミナキ・ムーン。
何だか照れる。
そして、幸せ過ぎる。
・・・・・・・・・・・
ミナキ・ムーンになってから5年。
「ウェン!結婚記念日!デートしよう。」
実は何だかんだで小心者なので自分が消えないかこの結婚記念日って嬉しいけど内心ビビっている。
今年も大丈夫だった!
付き合いと結婚合わせて6年ちょっと。好きになって12年ちょっと。
今でもウェンが大好きだ。
「ミナキ。愛してるよ。今日は夕方までデートして。夜はいっぱい可愛がるから。」
ウェンも変わらずで。
俺達は相変わらず愛し合っていて。
幸せです。
これからもずっと。ずっと。
☆番外編お付き合いありがとうございました。読んで頂けて本当に嬉しかったです!☆
都合のいい男 美浪 @sazanami373
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます