第173話結婚か・・・

「元締め!今、入籍してきたよ。」

ディードとガブリエルが嬉しそうに報告に来た。


「おー。目出度いな。どうする?今日は視察は止めとくか?」

今、駆除屋は簡易転移魔法陣のみで営業中。平和になり仕事が減ったので予約だけ。

昔の様に緊急依頼もほぼ無いので俺も政府役人となった。

仕事は今も昔も転移させるだけだ。



「いや、仕事は別でしょ?」

ガブリエルがそう言うとディードも頷く。

「お願いします。じゃ、行こうか俺の天使。」

「もう!ディード!それは人前じゃ恥ずかしい!」

おーおー。新婚だねー。


「んじゃ。行ってらっしゃい。」

2人を送り出した。


結婚かぁ。


と言うか・・・。


ラズがプロポーズして来ねえ。


凄く結婚したいかと言われると。

今までは駆除屋の連中が家族みたいなものだったしなあ。


でも、個人的に誰かを好きになったり好きと言われたりそう言った事とは無縁だった。


親父は立派な異能者で俺は顔も知らない母親の事も愛していたから俺が産まれたのだろう。


だからと言って女性と結婚等も考えた事は無かった。女は好きじゃないし。

勿論、男性ともだ。


結婚ね。


俺も・・結構屈折しているのかもな。


トントントン。ドアをノックする音がしてボスが入って来た。

「張さん。お疲れ様。今日はどう?」

「えーと今日は15カ国だな。出勤者はこいつら。」


各国視察に行った者は毎日出勤管理をする。

現在、各国視察部は出勤日数で給与制にしている。


「今日は休みの奴多いね。それ程、世界も荒れてないし良いか。」

ボスは了解と名簿を受け取った。


「大元帥。やってみてどうだ?」

「やる事多いよ。でもシアンが秘書として頑張ってくれてるよ。」

ボスは嬉しそうに微笑んだ。

あのシアンが秘書か。

それにボスの嫁。少し前なら考えられなかった。


「どうだ?結婚生活。」

1度誰かに聞いてみたかった。


「幸せだよ。」

ボスはそれはそれは良い笑顔を見せた。


「どいつもこいつも惚気るねえ。」

さっきはディードが入籍したって来たぞ?と話をした。


「張さん・・。もしかしてプロポーズまだされてない?」

ぐっ・・・。痛い所を突かれた。


ボスは何を悟ったのかうんうんと頷いた。

「ラズはさ。張さんの事を・・何と言うかアイドル?いや?神の如く崇めてた所あるんだよね。」

そう言ってクスクスと笑い出した。


「なんだその話?初耳だぞ?」

ちょっとびっくりした。


「ラズは何時から張さんを好きだったんだろうね?叶わぬ恋って奴は拗れるだろ?」

ラズはボス達にも俺が好きとは言って居なかったらしい。

その代わりに尊敬していると言う言葉を良く口にしていたそうだ。


叶わぬ恋。言ってくれれば良かったのにな。


ってあれ?


「張さん?」

「ん?」

ボスはニヤリと企んだ顔だし。


「張さんも結構前からラズがお気に入りだっただろ?」

「あー。確かにそーだなあ。」

言われて見るとカプリスの中で特別視していた。


駆除屋の奴らよりラズを可愛がってきた気がする。

大きい仕事の時はラズを呼び付けていたし。


「素直になりなよ。」

「いや、付き合ってるし。素直だろ?」

ボスが言っている意味が解らない。


「張さんは好きな癖に自分から行動してないよ?」

今日はいちいち言葉が刺さる。


「そう言われるとそうかもな。」


ボスは仕事してくるから考えてみて?と言って出て行った。


好きになるとエッチをする事が付き纏う。

ラズの告白を受けるまで俺はしたくなかったから・・。

ずっと恋愛から逃げていた。


ラズの事を俺は何時から好きになっていたんだろう?


少なくとも告白されるより遥かに前だ。


だけど何も行動もせず言葉にもせず。


俺の方が年上なのに。


ピピッ・・・帰還連絡が入った。

ラズだ。


――転移――


「ただいま。」

ラズとバニラとエルーカが帰還。


「今日の国は大丈夫そうだったわ。」

「また明日!ラズは残るでしょ?」

エルーカとバニラにそう言われてラズは微笑んで頷いた。


「お疲れさん。」

2人が帰って行ったのでラズに甘めの珈琲を入れてやった。


「憂炎、ありがと。」

嬉しそうだよなあ。

可愛い笑顔だ。


「なあ。ラズ。」

「はっっはい!」

全くこいつは急に話を振ると今でも構える。付き合ってるのにまだ時々、敬語使うし。


「俺と・・将来どうしたい?」

あっ。しまった。また言わせようとしている。

「えっ?!しょっ・・将来?!」

違う。そう、俺の気持ちを伝えないといけないんだよ。


深呼吸してラズを見詰めた。

「結婚するか!」

あはは。言っちまった。


「憂炎・・・。えっ?!あの!あー!俺が言う予定で。」

そんなにオタオタして。本当に可愛い奴だ。


「俺と結婚してくれ。」

もう1回言ってやろ。


「憂炎!ごめん!待たせてごめん。言えなくて。本当に自分に自信が無くて。」

ラズはそう言いながらキツく俺を抱き締めてきた。


異能と体術も強いし顔も良いし何処に自信が無いのか?


・・・ああ。

俺が悪かったのか。


ラズが欲しかった自信は。


「ラズ。愛してるよ。」


ラズが欲しかった言葉だよな?


抱き締めたままラズは涙を流して更に腕に力を込めた。

「ゆ・・憂炎。愛してます。誰よりも愛してる。」

うん。

俺もそう。


「愛してるよ。」


その言葉は全てを優しくし幸せを運ぶ。


言葉にしないと相手には伝わらない。


態度で示さないと相手には伝わらない。


「愛しているのはラズだけだから。」


「俺も憂炎だけ。」

愛してる。


うん。

だから俺はラズと生きる道を選ぶんだ。

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