第124話シアンの異能

エイガスの攻撃は続く。


俺はまだ考え中。体術レベルは同じくらいの素早さ。

長引けば力で負けそうだ。


――拘束――


「ふん!こんな物!!」

俺の攻撃から素早く離れてブチッ!!と拘束は切られる。

リュートより力は強い。


俺はどうしたい?


何がしたい?


カプリスに入って俺は甘くなった。

仲間が居る安心感。


護りたい人が出来た。

それと同時に・・・俺は昔より死を恐れている。


「グッッッハァ!!!」

強烈な蹴りで吹っ飛んだ。

そのまま殴打が続き地面に倒れ込む。

流石に痛い・・。

はぁ。はぁ。立ち上がり構える。


「もう殺してやろうか?お前、弱いし。」

エイガスはニヤりと笑った。

クソ!俺も本気出さないと殺られる。考える暇が無い。


ランジャンは俺の異能はオイシイと言った。


それはまだ俺の中に何か・・?あるからだ。


エイガスが剣を抜いた。

チッ!舌打ちをして俺も短剣を抜く。


何も掴めないまま。


でも、此処で死ぬ訳にはいかないからね?


エイガスの剣を受け止める。


グニャリ・・・。


何か視界が・・?


いや、俺の短剣が歪んだ?


一瞬、何かの幻を見た。


エイガスの異能じゃない。それは解る。


タッ!!と地面を蹴って少し距離を取る。

もう一度。

今度は俺から仕掛ける。


カキン!キン!!と長剣と短剣のぶつかり合う音。


グニャ・・・!!??

また!何だ?


剣を操る?


違う!!

縛れ!

俺の異能の根本は拘束だから!!!!


短剣に気を通す・・。


――拘束の剣の鞭ソードオブウィップ――


短剣が鞭の様に伸びる。しなりながら。それでいて剣の鋭利さは変わらない。


「縛れ!!そして・・・斬る。」


剣の鞭は相手の腕に絡みつきスパッと斬り落とした。


「うおぉぉぉぉ!!!」

エイガスが切り落とされた右腕を抑えて叫ぶ。


「はは・・・。」

自分でやっていて笑えてくる。

久しぶりにワクワクするなあ。異能はイメージ。正にそれだった。


「クソったれがぁ!!」

エイガスは腕を抑えて逃走しようと背を向けた。


「逃がさないよ?」

背を向けたらもう負けだね・・・。


だって、この鞭は縛って斬るから。


シュルルッ!!とエイガスの身体に巻きついた短剣は残酷な迄にエイガスの身体を切り刻んだ。

エイガスは無惨な状態で地面に倒れた。

返り血がピッと俺の頬に付く。


「俺が弱い?確かにね。愛する人にはメロメロで弱いかもねぇ?」

こんな時にランジャンの笑顔が浮かんでフフっと笑えてきた。


短剣は俺の意思で元に戻った。


「ランジャン、喜んでくれるかな。」

漁港へ戻ろう。


さあ、誰が1番最初に戻るかなあ?



・・・・・・・・・・・・・


その頃のウェン。



漁港から出発。


ミナキを置いていくのは心配。


早く見付けて終わらせる。


四方に散った俺達だが行く宛てが無い。


シアンは街へ行ったか。


うーん?普通はアジトとか作っているんじゃないの?


4人纏まって居ないの?


危険察知してみるかあ。


走っていた足を止め周りを見渡す。

この辺は民家しかない。そして店が少し。


流石に漁港周辺には居ない。


シアンは街、ラズは左へ、リョウは右。

じゃあ俺は?


あっ。シアンが街へ入らずに見付けた様だ。


じゃ、街へ行こう。


昔はもっとこういう時は好き勝手に動いていたのに。


俺は片時もミナキと離れたく無い様だ。


やれやれ。


新しい異能・・。光弾の溜め無しのショットガンは目覚めたが。


他に何がある?


本当に考えさせられるミッションだ。


街の中心部に着いた。商店街風の田舎。


危険察知開始。


うわぁ。2人居る。

殺れるかな?でも、ノルマ1人。


電話しよ。


「ラズ?街へ来て。」

一言だけ言って電話を切った。


大丈夫。まだバレて無い。

偵察異能を敵は持っているっぽい。


でも、その偵察はシアンに向いている。


怪しまれず近づくにはゆっくりと歩く。


ラズと合流。


さて、追い詰めるか。

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