第123話限界突破の為の訓練
このマンションに引っ越して?いや、前のアジトの時からして初だ。
部屋にシアンが尋ねて来た。
彼なりに俺がこの世界に来てからの最初の1週間の時に色々があったから気を使ってたか?ウェンが居るからか?
「何?珍しいね。」
ウェンも当初よりシアンと仲良くなった。
「限界突破の為の御提案?と言うか実践が早いと思って依頼を持って来たんだ。」
シアンは元々は殺人鬼。と言っても割と好んでバトル半分、依頼半分。
カプリスに入る前は金持ちやマフィアが表沙汰に出来ない殺人依頼が収入源だったそうだ。
「獣人達が襲われたって言ってたよね?ダークネスってマフィア。あれの残党退治しない?」
「まだ居たの?」
ウェンが呆れた顔をしてシアンに尋ねた。
「各地に散ったのかな?俺に来た依頼はアト・ランティスって島国の金持ちから。」
アトランティス大陸?!じゃないか。島国。何か男のロマンがある様な名前の国だ。
「ダークネスの残党は4人。島には政府異能者や警察は居ない。本当に小さな島国。」
シアンが考えている計画はウェン、ラズ、リョウ、シアンでノルマ各1人。
しかし、警察が居ない国があるなんてな。
多分、それを知っていて残党は逃げ込んだんだろう。
「俺は?」
俺は居残りかな。流石に無理っぽい。
シアンはニヤっと微笑む。
「ミナキは島全体を敵が外に逃げない様に結界を張るのが仕事。」
え?想像してみたが・・。
「無理無理無理!流石に無茶だよ!」
そんな広範囲の結界なんて。
「やらなきゃ強くならない。島は小さいから大丈夫。」
シアンの意見にウェンも頷いた。
解らなくも無い。自分を追い込めば強くなる。何かしなきゃならないとは思っていた。
俺の四神と神人の覚醒をどうしたら良いか解らなくて日にちだけが経過して居た。
「その話、俺は乗るよ。」
「ウェン・・。解った!俺もやる!」
シアンはそう言うと思ったと満足そうに微笑んだ。
「じゃあ、リョウとラズにも伝えてくるよ。」
楽しみだなあ。とシアンは部屋を出で行った。
「ミナキ。俺も強い光弾は打てない。溜めさせて貰えないだろうからね?だから本当に限界突破・・しなきゃね。」
ウェンは俺の目を見詰めてそう言った。
「そうなるんだよね。俺も限界突破する!でも、異能借金したらまた助けてね。」
しない様に努力はする。
「その前に結界解いて。頼むから倒れないで。」
ウェンは悲しそうな顔で俺の頭を優しく撫でた。
・・・・・・・・・・・・
数日後。
皆、決意は決まっていた。
「これ、顔写真。プリントアウトしておいた。」
シアンからダークネスの4人の写真を渡された。ハッキリ写っている物もちょっと微妙なのもあるが良く撮影したなあと思う。
「依頼主はアト・ランティスの大地主アドマンダさん。直接会いに行かずに到着後直ぐに敵探し。ノルマ1人ね。」
まるでゲームの様な感覚のシアン。
「こいつらの名前はこの写真に書いてる奴なん?よー調べたなあ?」
リョウがシアンに尋ねる。
「そう。アドマンダさんも異能者でねぇ。念写って特殊異能者なんだ。ただ年齢が高齢でね。もう戦闘は無理なんだ。」
シアンは彼も若い頃は強かったらしいよ?と言った。念写ってもう完全に超能力だよなあ。
この写真は念写なのか。それを思うと凄いクオリティだ。
ダークネスの4人。イデクト、ナクサ、エイガス、ツェレ。
そして俺達は駆除屋から転移しアト・ランティスに到着した。
「初めて来た。」
「俺もや。」
ラズもリョウもそう言った。勿論、ウェンも頷いていた。
島の到着した場所は漁港だった。
潮風が気持ち良く気温もエバーステイより低く涼しくてちょうど良い。
空にはカモメやウミネコが飛んでおりのどかだ。
「こんな島にダークネスが隠れ住んでんなら退治してやらねーとなあ。」
ラズが周囲を見渡してそう言った。
まだ島の内部は見ていないが平和そう。
「さあ、今日は協力じゃないよ?個人のレベルアップだからね。」
シアンは早く別行動しようと言う。
「じゃあ、俺は結界だね。多分、結界張った時点で敵にはバレるから。」
異能者なら結界の気配は感じるだろう。
「では、解散!」
シアンがパン!と手を叩いて嬉しそうにいち早く駆けて行った。
「倒したら漁港に集合やなー!」
リョウもテンション高い。
「ミナキも気をつけて!何かあれば直ぐに電話!」
ウェンは酷く心配しているし。
「俺達もヤバいんだけどなあ。」
ラズは苦笑しながら立ち去った。
本当にゲームだな。先ずは、
――朱雀、偵察――
島の全土を見たい。なるほど。確かに行けそうで行けなさそうなギリギリの大きさ。
張るか!
身体の持つ限りだよね。
イメージは出来た。島を囲う。4人の仲間を広く護るイメージだ。
――四神結界――
本当にかつてない程の広範囲。
張り巡らせた瞬間からなかなかの身体への負担。
俺の本当に地味な戦い開始・・・。
・・・・・・・・・・・・・
「さてと。」
無事に皆がこの仕事に乗り気になってくれて良かった。
このマフィア退治の依頼は受けるつもりはなかったけど。ランジャンに相談したら面白い提案をしてきた。
なかなかダークネスの残党は強そうだし。
確実に俺達は強くなる。
漁港から少し離れた街の入口付近に来た。
危険察知。
凄いな。無気配・・・。
これは偵察異能じゃないと探すのに苦労しそうだ。
本当に居るのかと言える程、無気配だ。
島の住民の気配しかしない。異能者は居ない?
ミナキが結界を張った・・・。
ん?・・・。居る。
微かに反応した。
こいつか!!
捕らえたら逃がさないよ。俺が動き出すと奴も逃げ出した。
追い込むなら人気の無い所へ。
――拘束――
「チッ!!」
外したか。
俺も成長しないとならない。
何故なら異能が弱い。もっと何か・・・。
新しい何かを。
そうしないと。ランジャンを護れない。
ランジャンの足を引っ張る事にはなりたくない。
常に俺は最前線で戦いたい。
考えろ。捕えろ。
異能はイメージ。今、異能力だけなら俺はミナキより遥かに劣る。
クソ!取り敢えず追い付いた!
「見つけた。ダークネスのエイガスだね?」
間違いないな。
「誰に雇われた?」
エイガスは顔色ひとつ変えずに振り返った。
「それは守秘義務。」
そう答えた瞬間に俺の腹には強烈な拳が入っていた。
「グハッ!!」
なかなか効いた。
「全く人の話くらい聞きなよ?」
この速さ、一撃の重さは身体強化タイプか。
俺の1番苦手なタイプだ・・・。
殺るしかないんだけどね・・。
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