第155話リュートと青龍
――リュート君?ミナキより我を託された者よ。そろそろ敵を片付けましょうか。――
トール元帥の激しい殺気で壁に打ち付けられた時に声が聞こえた。
借りたのは良いが無反応で使い方も解らなかった青龍が・・・喋った!!
目覚めたんだ!で?何が出来るの?
――青龍は水と雷を使える。ラズ君と協力してみようか――
了解です。
何かこう言うの初めてだし!異能の発動系って初過ぎてワクワクする。
トール元帥の殺気は凄まじいのに何故かワクワクするぅ!!
「龍が目覚めたよ!」
1歩前に出て頭上を指さした。
ん?と言う皆のパチクリした目が面白い。
「ラズ。援護お願いします!」
「へ?ああ解った。」
ラズは何の事やら?と言った顔だが凍気を更に高めて構えた。
「雑魚共がぁ!!!」
トール元帥は怒りが頂点に達した様な形相で剣を真上に振り上げた。
これは振り下ろしたら全員斬られるやつ!!
――
小さな真っ黒な雲が室内に広がる。
ドドーン!!!
雷はトール元帥の剣に落ち部屋の中で雨が降り出した。
「ぐあぁぁぁぁぁ!!!!」
雷に撃たれたトール元帥の苦しむ声に合わせてラズの凍気が増した。
――
雨が氷の刃に変わる。
「すっげー・・・。」
思わずそんな声が漏れた。
ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!
氷の
「ぐっ・・・。クソったれが!!」
雷に撃たれ氷の刃を食らったのにまだ生きてる・・。
フラフラと立ち上がりまだ戦う気かよ?!
しかし、満身創痍・・・。
「やるで!!畳み掛けるんや!」
リョウの合図で一斉攻撃。
――
――
――
異能一斉攻撃。
トール元帥は重力に押し潰され地に膝をつきヴェガによって肩を貫かれた。
「うあぁぁぁぁぁ!!!!」
断末魔が機械室のエラー音をかき消すかの様に響いた。
それを弔うかの様にトール元帥は凍っていく・・・。
ピシッピシッと足元から。
俺とリョウ、元締めさん、アルージャで狙いを定めた。
凍った・・・・・。
「ジ・エンド!!!」
凍りついたトール元帥を分断する様に斬りつけた。
音を立て氷の墓石は粉々に砕け散って・・・。
エラー音が鳴り響いていた機械室からの音が止み室内は静寂に包まれた。
「本真に・・。」
リョウがニヤっと笑った。
「勝ったぁぁ!!」
全員、ちょっとフラフラだけど勝った。
本当に勝てた。
頭上を見上げるとミナキの元へ青龍は戻って行った。
凄いな彼の異能。本当に俺達を護るスペシャリストだ。
「リュート!!良くやった!!」
ラズに抱きつかれジハードとヴェガに頭をモジャモジャ撫でられて。
全員とハイタッチ!
良かった。
後はエメリヒ大元帥だ。
・・・・・・・・・・・
アルージャに促されて急いで上の階へ上がった。
「うわっ!!」
27階へ入った途端の殺気と言うか異様な空気に鳥肌が立つ。
「これが・・。獣人達を苦しめ殺した奴の殺気か。」
父よ。母よ。
仲間達よ。
漸く敵討ちをする日がやってきました。
元凶はトール元帥だった。
だが?
許す訳にはいかない。
殺気の方へ走り辿り着いた。
そっと壁越しからチラ見。
何か話してるけど聞こえない。ビクターの異能が効いているんだな。
エメリヒは自分の両手を見詰め確認するかの様に首を傾げていた。
俺も異能破棄かけて貰わないとヤバいよね。
「オーガ!」
小声で呼んだ。
振り返ったのはウェン。
誰でも良い。気づいてくれたら何とかなる。
「ゼットが来た。」
ウェンがそう言うとオーガが俺に向かって異能破棄をかけてくれた。
「みんな!アインシュタインの核は壊した!」
急いで駆け寄ると全員が傷だらけでかなり疲労しているのが解った。
「大丈夫か?下の階ももう少しだ。」
そしてトールが元凶だった話を聞かせた。
「今、エメリヒは混乱しているよ。」
「アインシュタインの洗脳が解けたって事ね。」
ボスと社長が簡単にこれ迄のエメリヒの話をしてくれた。
狂ったエメリヒを洗脳し更に狂わせたんだろうな。
今が本当のエメリヒか。
「唇を読め。」
バックスレーにそう言われてエメリヒの言葉を確認する。
「この私が洗脳されていたとはトールめ。飼い犬に手を噛まれるとは正にこれか。まあ、それでも皆殺しには変わりないがな。」
なるほど。
「確実にトール元帥を殺してから殺らないとね。」
ボスが全員の顔を見て頷いた。
「そうは言っても強いのよね。」
社長は全力でやっても今、勝てる見込みが無いと苦笑した。
「それでも。殺るでしょ?」
シアンがニヤっと笑った。
「当たり前。」
全員で構える。そしてニヤリと微笑み頷きあった。
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