第154話先に倒すのは・・・

「ここまで来たら話せや!お前がエメリヒを洗脳しとるんか?」

あの大元帥を?どうやって?そんな疑問しか無いが聞く権利はあるねん。


「私では無いよ。」

あーもー。

この異能のこういう所な。攻撃しながらじゃ上手く質問が。


「お待たせ!」

ジハードがアンドロイドを一体倒し此方に援護に来た。


――最大重力圧死マキシマムグラビティデス――


「ぐっ・・・。」

トール元帥の顔が少しばかり苦痛で歪んだ。

ジハードのお陰で動きがかなり鈍った。

「早く聞けよ!」

結構抵抗されている様でジハードは機嫌悪い。はよ聞かな。


「エメリヒを洗脳したのは誰や!」


「・・・アインシュタイン。正確には機械になってからの彼だよ。」

じゃあ、後は。


「どうやって。エメリヒに何があったか過去を丸ごと話せや!」

これで良いやろ。全部聞いたろ。


トール元帥は必死で重力に抵抗しながらも俺達への攻撃を止めない。

アンドロイドもまた追加されたが前ほど強くはない。


「アインシュタインを洗脳しコンピューターにした。そのお陰で元の世界へ帰れる様になったのは知っているんだろう?」

「ああ。知ってる。」

ウェンとアルージャが過去を見せられたと言ってたやつや。


「あれね?俺は帰って居ないのさ。」

は?なんで?


「あの日・・・。」

トール元帥は不敵な笑みを浮かべ語り始めた。



エメリヒには白血病の母親がいた。

そして骨髄移植適合者だった。

3人兄弟で唯一の適合者。この世界に召喚されたのは手術日当日の朝。


総帥に対する憎しみと不安で爆発しそうなエメリヒの心を完全に手に入れるのは容易だった。


そして、総帥を洗脳しトール元帥はアインシュタインを機械化した。


「最後の仕上げは絶望させる事。私もエメリヒに軽く洗脳されていたから早く解きたかった。」

トール元帥はクスクスと笑う。


アインシュタインを使って24時間限定で元の世界へ戻した。


「何故24時間にしたと思う?解っていたからね。多分、母親は死んでいるだろうって。」

ゲスい奴や。


何や聞いててムカムカしてきた。


お互い元の世界に戻ると嘘をつきエメリヒだけを元の世界へ帰した。


「その間に私は目をサイボーグ化したんだ。もう洗脳されない様にね。」


ゲス過ぎてホンマにギッタギタにしたくなってきたわ!!


「この世界にエメリヒが戻って来た時は感謝されたよ。元の世界では居場所が無くなってしまったと。父親、兄弟からも縁を切られたと言ってたなあ。」


「お前、腐れやな。」

そう言うと嬉しそうな顔で斬りつけてきた。

その剣をガシッと受け止める。


「早くエメリヒが死んでくれると私の洗脳は完全に解ける。彼奴にはマインドコントロールと言霊と言う異能があるんだよ!」


「なるほどな。」

剣を強引に押し返し距離を取った。


「全く!洗脳じゃなんだと言いやがるが!!俺達、この世界生まれの異能者にとっては何も関係ねー!」

ラズの凍気が部屋中を凍らせるかの様に巻き起こった。


「その通りだ。総帥?大元帥?元帥?誰が1番悪いか何て関係無いよ。」

ジハードの殺気も更に上がり重力の圧がさらにトール元帥に及ぶ。


アンドロイドを倒し終えたリュート、元締めさんも構えた。


「まあ、エメリヒより先に殺すんはお前やな。トールさん。」

俺も剣を構えた。


その時だった。


ビービービービー!!!


奥の機械室から激しいエラー音の様な音が聞こえた。


「何?!!まさか?!」

トール元帥は奥の部屋の方を驚愕の表情で振り返った。


もしかして?

アルージャとゼットがアインシュタインの核を?


ビービービービービービー!!!


煩いくらい鳴り響くエラー音は更に激しさを増し・・・。


「私のアインシュタインが!!」

トール元帥は狂った様に叫び機械室の方へ足を向けた。


「無駄だ。」

その声に振り返る。


「壊したよ。」

アルージャとゼットの姿があった。


トール元帥は唇を噛み締め此方を睨み付けた。


「正解だったね。俺、天才。」

アルージャがクスクスと笑いながら剣を抜いた。


「ゼット、ボスの元へ。この話を伝えて来て。」

「了解。」

ゼットは微笑みその場を離れた。


「チッ!どいつもこいつも・・・。邪魔しやがって!!」

トール元帥はブツブツと呟く様に下を向いた。


ブワッッッ!!!


うおっ!


顔を上げた瞬間、殺気の圧で俺達は壁に打ち付けられた。


「全員、皆殺しだ。」


漸く・・・本性出しおったな。


壁に打ち付けられた背中が痛いわ。

こないな力隠してたとは。


また冷や汗が流れそうなくらいの殺気を浴びながら構えた。

殺らな殺られる・・・。


皆が牽制する中、リュートが1歩前へ進み出た。


「龍が目覚めたよ。」


リュートは頭上を嬉しそうに指した。

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