第105話対談の続き。過去を知る者

「怖い・・。俺、大丈夫かな?これから演技出来るかな。」

海誠先生はまたまた大きな溜息をつき項垂れた。

酒を飲むかの様に2本目の炭酸飲料を先生は飲みだした。

「やるしか無いですよ。ねえ?リョウ。洗脳解けたってバレるのかな?」

リョウは腕組みして難しい顔をした。


「エメリヒに会わなけりゃ大丈夫ちゃう?」

「確かに俺もそう思う。出来れば榎津さんや御厨さんにも会いたくない。」

海誠先生は本当に怯え気味だ。


全部語ってくれた訳では無いけれど。


ん?この世界に来た直後って・・・。


「そうか。俺もそうだったけど。自分に関する記憶が無いのに洗脳されたんですね?そりゃ怖い。」

「あー!そうや!無い無い!」


海誠先生は大きく頷いた。

「そう。漫画家って言われても知らないしさ!ある意味、恫喝?パワハラ?いや?異世界人ハラスメントだよ。本当に怖かったの思い出した・・・。」

何時も明るい先生は涙目で本当に恐怖を味わったんだと想像出来る。

暫く、先生の恐怖の愚痴と慰めと今後を考えた。

上層部の連中には会う事は無さそうだから何とか普段の勤務は出来るんじゃないかと言う結論で何とか落ち着いた。


「本当に一番大人なのに申し訳無い。」

先生は漸く笑ってくれた。


「いやそりゃ怯えるわ。気にせんといて下さい。」

「そうです。俺も記憶無くてどうしようと1人で荒野に居たの思い出しましたよ。見た目怖かったけどその時に出会って面倒見てくれたのがカプリスなんですよ。」

とあの日の事をちょっと話した。


「そうやったんやなあ。カプリスの皆は優しいよな。」

リョウはうんうんと頷く。


「俺はこれからも警官として何とか誤魔化してやって行くとして総帥の生存とカペルさんの事を誰か知ってる人居ないのかなあ?」

海誠先生が悩む様に天井を見た。


「俺で5年前やからもっと前に召喚されてる奴やなあ。Sランクやとアランとエンジェルか。」

漫画の中でカプリスを殺したアランか。


漫画のあのシーン?アランとレイとヴァルヴァラと誰だっけー?リョウは居なかった気がする。


「エンジェルって言うても男で。天使と言うより悪魔やで。年はアラン27歳、エンジェル24歳。共に6~7年前に転移したらしい。もっと昔の奴はおらんのか?」

リョウが解らないなら誰も解らない気がしてきた。


「でも、昔から転移は行われて居た筈。元締めは異世界人ハーフ。ボスは異世界人クォーターって言ってた!!」

そうだ。本当に昔からこの世界と俺達の世界は繋がっていたんだ。


「じゃあ軽く見積もっても80年~100年くらい前から異世界人は居たんだね。」

先生はうんうんと頷いた。


「そんな昔からか。こんなバトル生活してたらもう死んではるやろうしなあ。」

誰か生き残りはおらんのかい!とリョウは1人でツッコミを入れている。


何か思い出せそう。何だっけ?


「あー!獣人だ!この世界の最初の召喚されていた異世界人!」

ハーミット様の言った事を思い出した。

漫画でも出て来た獣人の反乱編。


「え?!獣人って今、政府が極秘裏に捜しているってオーガが言ってた。ミナキ君、何で知ってるの?!」

驚いた顔をして先生は俺の顔を見る。

何でって答えなきゃダメ?


「獣人は何処におるか不明な異世界人やろ?今もおるか疑問視されとるのを政府が捜索してんのや。」

リョウは政府に入りたての頃に獣人の話は聞いたらしい。見付けたら捕らえると指導されたと言っているが未だに見た事も見たと言う奴も居ないと言う。


「えーとね。カプリスのメンバーの中に獣人が好みな人が居て・・。それで聞いて知ってる。」

絶対、これ正直に言ったら盗聴してるハーミット様にブチ切れられる!!


「え?誰なん?」

リョウは何も考え無しに聞いてくるし。


「秘密。後で言うから。」

そう言って誤魔化したが異能使って聞こうかなー等と恐ろしい事を言う。


「まじで止めて。先生には申し訳ないですがプライベートな好みなのでね。」

先生は大丈夫と納得してくれた。


「政府が捜しとるちゅーことは!エメリヒと御厨の命令やろな。総帥のネタに繋がるって事やないか?」

リョウの話は最もだ。

もしかしたら獣人の子孫達には受け継がれている話があるのかもしれない。


「おるか不明なんを捜すか。ミナキはどないしたい?」


「捜す価値はあると思う。」

うん。先に見付けたら話が聞ける。


と言うよりも何処かに絶対に居るんだろうから護るべきでは無いか?


「俺は政府が見付けたら情報は直ぐに流すよ。獣人が滅ぶ前に捜して欲しい。多分、何か知ってるから捜索されている筈。」

先生もそう言うし。


「じゃあ。俺が帰還するにはエメリヒが邪魔、御厨も怪しいっちゅーことで。」

俺達は顔を見合わせて頷いた。


「先ずは獣人捜索だね。帰還は半年後を目安だ。」


その後は雑談して解散した。


玄関先から外の様子を伺う。

「大丈夫や。しかし、警邏警官はそう遠く無い所におる。異能使ったらバレるなあ?」

「少し移動する?」


先生の部屋のマンションは警察寮では無くて一般マンション。そこは助かる。


「確かにジ・パングは警邏増えとるな。まあ、俺のせいやな!」

リョウはクスクスと笑う。

「元はと言えばカプリスやヴェガ、それにエンバスター達。」

俺も一緒に笑いながら警官から遠ざかる様に移動した。


2キロくらい移動してから元締めを呼んで転移した。


戻ったアジトには全員集合しており盗聴で全て把握済と言った顔をしていた。


「エメリヒ大元帥。思った通りだね?さて、獣人捜ししようか?」

ボスは俺達の顔を見てニヤっと微笑んだ。

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