第106話獣人捜し・・そんな日が来るとはね

アジトで盗聴中。

「獣人!」

ミナキの嬉々とした声に思わず吹いた。

そして獣人好きが俺だとバレた・・・。


「アルージャって何時会ったの?」

ボスが興味津々。最近、弄りすぎたお返しが今、来た感じ。


「・・・。本当に捜すの?」

俺は彼等をそっとしておきたい。だけど政府に見付かってしまったら滅びるかもしれない。

それよりも・・・。

「ミナキとリョウが帰って来たら話すよ。盗聴続けよう。」

ボスは納得してくれた。リョウが聞いたら嘘はバレるか。

その方が俺的には正直になれて良いかもな。

ミナキとリョウが漫画家さんの家を出てからも盗聴は続けている。これはもしもの為の録音も。信用しているがやっぱり警官だしね。

「明日から働きたくなーい!!」

漫画家さんが部屋で大声で独り言。思わず笑った。洗脳とは本当に気の毒だ。


5分後くらいに2人は帰って来た。


ボスは獣人捜索をすると言った。そして俺の顔を見る。

はいはい話ね。


「先ず皆に聞きたい。獣人ってどんな姿だと思ってる?」


皆は勿論と言ったふうに

「ケモノと人の融合?」

バニラがそう言うと

「ケモみみ!!」

と何かミナキが不思議なワードを叫んだ。獣耳の事らしい。

だいたい想像通りの答えだ。


「獣人は人の姿をしているよ。普段は解らない。」

俺がそう言うと皆、驚いていた。そーだろうなあ。

「異能がね?獣人化ってヤツなんだ。これは共通異能。異能を使う時初めて獣人かどうか解る。」

うんうんうん。とそれは皆、大真面目に話を聞き出した。

本当は話したくなかったんだけどねぇ。


「昔は本当に獣と人の中間みたいだったらしいよ。でも、こちらの世界の住人と異種族結婚で人の姿だ。今は純血は居ない?か殆ど居ない。確かそう。」


「アルージャは何時、獣人と出会ったの?俺達と出会う前?だよね?」

ボスがそう聞くから


思い出話でもしようかな。



・・・・・・・・・・・・


幼児期。


気が付くと俺は施設に居た。


俺が異能者だったから母親は死んだのだろうが父は最初から居なかったのか逃げたのか?俺は赤子の時から施設育ちだ。



異能が目覚めるか目覚めないかの時期にマフィアに引き取られた。


マフィア達は皆もそうだろうけど見事に俺を慰みものにした。


でも、何ヶ月か後に異能が目覚めた。

何時、殺ろうか?

虎視眈々と狙って決行した。


「お前ら笑えるくらい弱いな?」

犯した連中を全員殺った。


マフィアは俺を置いておけなくなって別のマフィアに俺を引き渡した。


そこはクスリの密売系組織だった。


俺を引き取った奴らは俺にクスリを使った。


いやぁ。見事に飛んだよ。


意識が戻った時にまじでヤバいと思ったね。


これは2度も3度も使われたらダメなヤツだとガキながらに解った。


逃げねば・・・。


此処から死ぬ気で逃げなければ本当に死ぬ。


しかし、此処は牢屋っぽいなあ。


まだ当時はイマイチだった危険察知で辺りを見回す。

隣も牢で誰か居る。


此奴も俺と同じで薬漬けにさせられようとしている奴かも。


見張りはこの牢屋の外か・・・。


喋ったら聞こえるよなあ。


クソ。困ったなー。でも、この見張り弱いよね。問題は牢屋の鍵。


悩む事、数分・・・。


携帯電話は取られてない。良かった。

本当はパソコンが良かったんだけれども。


と言う事は隣の奴も持っている可能性あるね。

隣に居るし電波でハッキング出来るだろう。


はいはい。

メールアドレスゲット。


俺、天才。


『初めまして。隣の牢屋に居る者です。クスリ抜けてたら一緒に逃げませんか?喋るな。バレる。』


ビクッとした反応。そりゃそうだろう。


『了解。クスリは抜けている。俺も逃げようと考えていた。』


よっしゃー!!


それからはメールのやり取りをした。


『俺が牢をこじ開ける。』


ん?と思った瞬間。ミシッと音が聞こえて錠前は壊されていた。


馬鹿力!!


そして隣の男は俺の牢の鍵も壊し2人で見張りを倒して逃げた。


2人でアホみたいに殺りまくって密売組織を無事に脱走。


「ここまで来たら大丈夫かな?誘ってくれてありがとうな!君、強いよね!俺はゼット。」


「いやいや。馬鹿力ありがとう。君も強いなあ!本当に助かった。俺はアルージャだ。」


ゼットは俺より身長もかなりデカくて少し年上だった。


密売現場の金を奪う時にドジって捕まった別の組織の新入りらしい。


それからゼットの組織に案内された。



・・・・・・・・・・・・



「その組織が獣人集団だよ。俺は人間だから組織に受け入れてはくれなかったけど。ゼットを助けたお礼で暫く寝泊まりさせて貰った。」


ハーミット様は懐かしそうな顔で微笑んだ。


「はあ・・・。アルージャ秘密主義過ぎる。」

ボスが溜息を付いて苦笑した。


「内緒って言われたからね。存在さえ秘密事項なんだよ。彼等は普段は人の姿だし。獣人化は見た事有るけどね。」

ちょっと自慢げにハーミット様は語る。


「ほんで?獣人のゼットさんが彼氏なん?」

リョウが聞にくい事をサクッと聞いた。


「は?彼氏じゃないよ!」

ハーミット様はムスッとした顔に変わって

「初恋だ。」


と不満げにそう言った。


「場所は?」

ボスに聞かれてハーミット様はふぅと溜息を付いた。


「二度と会う事は無い予定だったのに。」

窓の外の遠くを見て呟いた。


「エクア・ドル。」

ハーミット様はそう言った。


「リオからの方が近いな。でも、行ったこと無い。」

ジハードがそう言った。

政府管轄国でも無いちょっと危険なくらいの国らしい。危険規模はサン・パウロと同じくらい。


「今もそこかは不明だよ?何せ11年前だ。」

ハーミット様はその後、政府に捕まりボスと出会うまで色んな国を転々として来たと本当に懐かしそうだ。


「エクア・ドルね。ヴァルヴァラちゃんの管轄国が近いねんなあ。本間に気を付けるで?」

リョウがちょっと嫌そうな顔をした。


政府より先に獣人を見付ける。それがこの世界の謎を解く鍵・・・。

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