第107話エクア・ドル

数日後。

装備を整え食料はディードが今回も担当。


エクア・ドルに行く準備が出来たので元締めをアジトに呼んだ。


ハーミット様は本当に内緒にしたかったんだろう。

元締めにさえ話すのを最初は嫌がっていた。


「そう不機嫌になるな。誰にも言わない。」


ハーミット様は解っているよと元締めの顔を見る。


「俺の淡い初恋・・。獣人はノンケが多いんだ。人間と違って異能者産んでも母親が死ぬ確率が10%くらいなんだよね。違う世界の住人だったってだけでこの差はなんだろうね・・・。」

と聞いてもいないのに遠い目をしていた。


要するに失恋したんだろう・・・。10%の死亡率でもかなり高いと思うんだけど。


何が違うか不明だがこの世界と俺達の居た世界は人間で異能者を産んだ母親は致死率100%。

獣人世界からやって来た住人は人間に獣人を産ませても、自らが産んでも致死率10%なのか。


「異能が獣人化って限られているから複雑じゃないのかなあ?」

等と疑問を口に出してみる。

獣人化の異能は文字のままなのだが身体強化タイプの異能に見た目の変化が加わった感じだ。


「まー。頑張って捜そうや!本間に居たらえーな。」

リョウは兎に角、謎を解く鍵となる獣人に会いたがっている。勿論、俺もそう。


「ん?メールだ。」

ハーミット様が海誠先生と連絡用携帯を取り出した。


「まじか!?今すぐ急いでエクア・ドルへ!!いや?かなりヤバい。ボス読んで!」

ハーミット様はボスに携帯を渡した。


『ミナキ君!大変だ!エクア・ドルで昨日から戦争が起きているらしい。今日、オーガとリュートがそう言って戦地へ向かった。多分、獣人絡みだと?詳しく教えてくれなかった。ごめん。』

ボスはメールを読み上げながら苦虫を噛み潰したような顔で頭をガシガシ掻いている。


「戦争・・・。あかんやん!」

「これはちょっと危険だな。」

リョウもジハードも大きく溜息。


「行くしかないね。早くしないと獣人が居なくなる。」

ウェンが頷いてハーミット様の肩をポンと叩いた。


「行きたい人!」

ボスが挙手をすると全員満場一致で手を挙げた。


「スタンバイOKだぜ?行くに決まってるだろ?」

元締めがニヤっと笑った。


「カプリス出動。」

ボスがニヤっと笑うと横のシアンもニヤっと笑ってボスを見る。


「行くぜ!いきなり戦場かもしれないからな!」

元締めに言われて俺は頷いた。

「護ります。」



――転移――



アジトの床が光り着いた場所は市街地が見える丘だった。



「街が燃えてる・・・。」


今、まさに戦争が起こっている現場を見下ろす形の場所だった。


異能者の戦争と言うのは戦車や戦闘機がメインでは無いんだな。


飛び交う炎弾、銃弾は異能者同士のぶつかり合いによるものだ。


「俺は獣人捜しをメインで行う。異能を見れば解るんだよな?」

ボスがハーミット様に尋ねるとそうだと頷いた。


「勿論この国には獣人以外のマフィアも多い。俺が居た売人達や普通のマフィア。今、殺りあっているのが獣人か先ずは確かめたい。」

ハーミット様が案内すると言って街へ向かう事になった。


市街地の外れ付近から様子を伺う。

「しかし。ひでーな。一般人も巻き込まれまくりだ。」

ラズが苦い顔をして倒れた人や燃え尽きた一般家屋を見て言った。


本当に酷い有様だ。


「偵察するわ。ちょっと待ってな。ミナキは結界に温存しとき。」

リョウが偵察異能を発動してくれた。


「Sランク。レイとエンジェル発見。Aランク多数。相手はマフィアにしか見えへん。」


レイとエンジェルを避けて行こうと言われて別の戦闘現場へ。


「多分、違うよねえ?」

シアンが言う様に向かう戦場からの殺気は

弱い。


この戦地でSランク異能者を避けて獣人が本当に見つかるのか・・・。

不安しか無い出だしだ。

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