第149話間もなく

「ベイク大丈夫か?」

脳内チップはヴェガと俺とで抜いた。


「あー。うん。頭痛薬欲しい。」

ベイクは顰めっ面でリョウの顔を見た。


自分の頭を触り頬を触り。首を傾げた。両手を見たり。


「ヴァルの従者でも無くなってる!」


「そかそか。そりゃ良かったやん。しかし、惚けてるなあ?」

リョウが笑顔を向けるがまだ全然理解出来て居ない感じのベイク。少し天然っぽい雰囲気。


「参りましたね。ヴァルヴァラの従者でも無くなり侵入者有りの連絡も大元帥には伝わっている。もう間もなく帰って来ますよ。」

榎津さんは溜息を付いた。


「ユウヤ。貴方は自分の能力だけで何人、元の世界に戻せますか?」

ボスがそう聞くと


「うーん?召喚システムの話を詳しくしようか。」

榎津さんが言うには基本的にアインシュタインとの共同作業で行なうそうだ。

「召喚人物を無作為に選んで転移させる事は俺だけで簡単に出来る。しかし、求められているタイプ?性別や年齢となるとアインシュタインが必要。」

榎津さんが言うには10代~20代を召喚する様に命令されていたと言う。


「元の世界に戻る人数制限は?無いと言えば無い。でも、位置特定がね。」

と苦笑した。


「アインシュタイン無しだと何処の地域に戻れるか。日本に帰りたいがアメリカかもしれないし?下手したら海の上かもしれない。」

なるほど。それはやはりアインシュタインを破壊するのは厳しいのか。


「なあ?元の世界に戻ると異能って無くなるん?」

リョウが尋ねると榎津さんは

「無くなるね。ただし鍛えた筋肉とかはそのまま。後は記憶も消えない。実際にアインシュタインを使って元の世界にエメリヒは戻って。こちらにまた帰って来たらしいよ?」


アインシュタインと榎津さんが合わさると完璧な召喚士になる。

多人数の召喚が出来る榎津さん、1人しか召喚出来ないが位置特定や人物特定が出来るアインシュタイン。



ボスは考えるようにその話に頷いた。


「アインシュタインの中の総帥はコアとして生きています。」

そう言うと榎津さんは知ってるよ?と苦笑した。


「エメリヒを倒したら総帥は暴走すると思いますか?またはトールを倒したら人間の姿に戻るとか?」

これが1番重要だろう。


榎津さんは黙ってしまった。

考え込むと言った感じで。

「時間が無いのは解っているが少し考えさせてくれ。」

正直、解らないと言うのが正しいなと言いつつもこれ迄、エメリヒ、トール、アインシュタインに深く関わって来た人物だ。

何か名案があるのかもしれない。


「レイは何で政府におったんや?」

リョウはその間にレイを質問攻め中。

マジシャンもリョウには嘘は付けない。

話を聞く限りでは彼は世渡り上手だ。

芸能界に居ただけの事はある。


「死にたく無いし!」

それが1番正直な寝返りの結論か。

今の所、あんまり信用出来る人物では無さそうだけど。


「ユウヤ。俺達は同時進行で倒せないかと考えています。」

ボスは考え込んで黙ったままの榎津さんに俺達の計画を話した。


「それは正解かもね。」

榎津さんは頷いた。


「これでミスリードされてないですよね?」

ハーミット様が洗脳された話をした。


「総帥にそんな力があるとは思えないんだけど。あるとしたら?機械を作ったトール元帥かな。」

榎津さんの意見でまた頭混乱。


ボスが空港に着いたって連絡が来たよ。と言った。

バニラさんとエルーカさんからのメールだ。


「榎津さんは安全な場所に隠れて貰えませんか?」

元々は拉致目的だったけれど。


「この世界に安全な場所なんて無いんだけど。でも、俺が再び洗脳されたら厄介だろうしね。」

榎津さんと海誠先生は海誠先生の家に避難してもらう。


「レイとベイクはどうする?」

ボスが尋ねた。

「俺達は他のSランク異能者の相手をするよ。」

レイはニヤっと笑った。


元締めがバニラさんとエルーカさんをこの場に転移させてメンツは揃った。


SランクやAランク異能者のバトル対応はベイクとレイとエルーカさん、バニラさんが行なう。


後はどう分かれるか。


――ミナキ。みんなに異能を貸そうか。それが全てを護る事になるよ――


久しぶりに朱雀が話し掛けてきた。

やっと他の四神と神人が目覚める。


――全部を貸すんじゃないよ。――

神達はクスクスと笑いながら俺の前に降りてきた。


「変わっていると思っていたが本当にミナキ君は凄いな。」

海誠先生と転移しようとしていた榎津さんが俺を興味深げに見詰めた。


「護りたいんです。皆を。」

「君、苗字は?」

そう聞かれて香焼こうやぎです。と素直に答えた。


「そうか。なるほどね。」

榎津さんは何故か嬉しそうで何故か納得した様な顔で転移して行った。


何で??


後で聞こう。今は異能のレンタルだ。


――唱えてみてよ――

朱雀が急かす。


――加護プロテクション――


「何か来たぞ。」

オーガへ白虎が。

「お?俺にも!」

リュートへ青龍が。


「アインシュタインに入れって事か。」

ゼットに文王が。


迎え撃つ準備は整った。

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