第167話もう1つのお願い

大丈夫だったかなあ。

昨日、発売のJUSTICE&の掲載雑誌にカプリスを全員死亡した話にした。


本当にミナキ君に言われた通りにした筈だ。多分・・。


あの帰還日に突然ミナキ君に呼び出されて衝撃の告白には本当に驚かされた。


でも、漫画が大ヒットすると言う話は同時にやる気も出たし記憶の異能は消えたけれど。過去に記憶した事は全て覚えている。


だから描けた。


そして、本当に大ヒット御礼中!!


「リュートとオーガとユウヤはまだやねんなあ?」

実は現在リョウはうちのアシスタントとして働いてくれている。

5年ぶりに戻った日本。その後、彼は大学には行かず両親とは最初は相当色々揉めたが何とか・・なったらしい。


今日はきちんとミナキ君が召喚されたかの確認とミナキ君の御両親に報告する気でいる。


頼まれたんだ。


駅で待ち合わせ中。会うのはあの日の以来。


「先生!!!」

「オーガ?!」

久々に会ったオーガは前より身長も伸びて男らしさ増した感じ。


「オーガ?!リョウ?せんせーい!」

その後ろからテンション高くリュートも。彼もすっかり大人になっていた。


2人はまだ学生さんだ。1年休学扱いになったようだけどしっかり学校に通っている。


背後から声が聞こえた。

「電車なんて久々に乗ったぞ。皆、お久しぶり。」


「榎津さん!」

彼は実家の後継ぎとなり住職になった。

住職だけど・・。

ちょっとその道の人っぽい迫力は未だに健在。


「行きましょうか。」

ミナキ君の実家へ。


「しかし、びっくりやで。なあ?」

「本当ですよね。この世界に帰ってその話を聞いた時はびっくりしましたよ。」


ファンレターを貰って連絡先交換をして全員の時系列が揃った時にグループトークを開始して暴露した。


「まあ、元々私はミナキの実家には訪れる予定だったんだ。伝説的な異能者に会ってみたかったしね。」

榎津さんはそう言った。


「あの!来週のJUSTICE&はどうなるんですか?!」

リュートが凄く真剣に聞いてきた。


「遂に出すよ。ミナキ君を。それで実はカプリスは生きていた!!完全復活さ!!」

フフっと笑うとオーガもめちゃくちゃ笑顔。


ここか。

香焼こうやぎって表札出てるし。


「俺達が先ずは行ってきますよ。」

「友達って事で!!」

年齢的にもリュートとオーガが近いし。

残りの俺達はちょっと外で様子見。


ピンポーン。玄関のインターホンをオーガが押した。

ドキドキ・・・。ちゃんとあっちの世界に行ったよね。


「はい?どちら様?」

お母さんだろうか?女性が出てきた。

ああ。ミナキ君に似てる。


「あの!皆輝君の友達の彼杵そのぎと言います。」

「初めまして!厳原いずはらです。皆輝君居ますか?」


暫く沈黙が流れた。


ミナキ君のお母さんは少し困った顔をして

「昨日から帰っていないのよ。バイトにも行ってないのよね。」

と言った。


「えっと。何処に行ったんですか?」

リュートがそう聞くとお母さんはフフっと笑って

「多分?想像はついてるのよ。」

と言った。

ああ、解っているのかもしれない。


待ちきれないと急かすリョウと榎津さん。俺達も御訪問。

俺達を見た瞬間僅かだけどお母さんが警戒で表情が変わった。


何だかその雰囲気が懐かしくてワクワクしてしまった。

「どちら様ですか?」

警戒した顔でそう聞かれた。


「アコさんですよね?」

榎津さんが聞くと彼女は頷いた。

「ご主人はシュウさん?」

榎津さんはニッコリと微笑む。


「そうですが?」

まだ警戒されてる。


「あの。アインシュタインってご存知ですよね?あと、エメリヒ・・とか?」


ミナキのお母さんは目を大きく見開いてクスクスと笑い出した。


「あらあら。まさかの?!」


「そのまさかですね。ここに居る全員。」

榎津さんが微笑むと一気に緊張が溶けた様に場の空気が和らいだ。

本当にお母さんも手練だったみたいだなあ。


「今日はミナキ君の話をしに来ました。私、漫画家の海誠と申します。」

俺が頭を下げるとびっくりした声を上げられた。


「えー!!!作者さん?!やっぱり現地に行かれてたんだ!あまりにリアルだったから。そうでしたか!」

興奮気味で是非中へと家の中に入る様に促された。


「今日は有給取って主人も居ますよ。」


ミナキ君のお母さんはそう言ってリビングルームへ案内してくれた。


「お邪魔します。」

全員でゾロゾロと遠慮なく。

ミナキ君のお父さんはちょっとびっくりした顔をされたがお母さんが話を少ししただけでクスっと笑い座ってくださいと促された。


「そうですか。うちの息子もやっぱり行ったんですね。」

嬉しそうにでも少し寂しそうな笑顔で。


「何から話しましょうか。」

包み隠さず御両親には話して置かなければならない。

もう、ミナキ君が帰らないと決めた事も。


「先ずは帰還されてからの異世界の現状から説明しましょうかね。」

榎津さんがエメリヒ大元帥の事、総帥がどうなったか。

自分が何をしていたか。


そして、向こうの世界を異世界人で征服する計画。

それは真剣に聞いてくれた。


「息子さんが世界を救ってくれました。」

榎津さんは笑顔でそう言った。


「あの子がねぇ。強かったんですか?」

そうは見えないけど?とお母さんは苦笑気味。


「正確には異能能力の遺伝ですかね。素晴らしい結界師でしたよ。」

「ホンマに護りのプロやったなあ?」

「そうなんです!他にも怪我を治したり出来たし!」

榎津さんもリョウもオーガも褒めまくりで御両親はちょっと照れていた。


「遺伝したんだなあ?」

「びっくりするわね。でも、良かったわ。」

お2人はそして真剣な顔になった。


「皆輝は残ると決めたんですね?」

お父さんがそう尋ねた。


俺達は一呼吸置いて頷いた。


「それで良かったと思います。」

お父さんもお母さんも少し目を潤ませていたが大きく頷いた。


「あの子の人生ですからね。ところでつかぬ事をお聞きしますが。皆輝はその。ウェン様とは・・?」

お母さんは知っている様で。


「そうだな。推しのウェン様とはどうなりました?友達ですか?」

お父さんまで聞いてきた。


言って良いのかな。御両親的に?

俺が躊躇していたのにリョウがあっさり。


「ウェンとミナキはラブラブですわ。法律成立したら結婚すると思いますよ!!」

と笑顔で暴露。全く相変わらずリョウは嘘が付けない。


御両親はそんな発言に驚きもせずにそれは嬉しそうな笑顔を見せた。


「良かった。皆輝が幸せで。あの子本当にウェン様が好き過ぎだったから。」

お母さんは息子が帰還しないと聞いた時よりも目を潤ませて終いには涙をながして喜んでいた。


「本当に良かった。推しはウェン様とボスにジハード様にラズ様?なかなか気が多い子でしたけど。」

お父さんはゲラゲラと笑い、息子の初恋みたいなものでしたからねー。としみじみと頷かれた。


流石、あちらの世界の経験者だ。

懐が深いと言うか。

あの世界の事を良く知ってらっしゃる。


言いたい事は全て話せたかな。

それからはカプリスの事とかこの後の漫画の話とか教えた。


御両親は洗脳が効かなかったからこそアインシュタインの性格等も解っていて自分達の我儘でこの世界に戻った事を後悔もしていたらしい。


2人がずっと居たら・・・?あの世界はもっと早く平和になったかもしれない。

でも、そうなると今の自分の立場は無い訳だし。ミナキ君も産まれていないだろうし。


これで良かったんだと思う。


最後に携帯番号を交換して、強請られたサイン色紙を書いてミナキ君の実家を後にした。


「任務完了やね。」

「漸くね。」

帰ったらJUSTICE&の続き描かないとなあ!!


「また、ゆっくり会おうね。」

榎津さんも一安心と言った顔で。


「是非!また!」

「社会人になったら呑みましょう!」

リュートとオーガともそんな約束をした。



ミナキ君。任務完了したよ!

俺達は日本で平和に楽しく頑張ってます。

JUSTICE&もアニメ化したし。

お陰様で儲けてるよー!


そう心の中で呟いた。

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