第133話アインシュタインの中・・・その2

「チッ!どうやって倒すかな。」

焼きそばをズルズル啜りながらハーミット様は不機嫌な顔。


「毒蛇って事は。ボス部屋はアナコンダとか?コブラのデカいやつ?」

俺も同じく焼きそば食べながら苦笑。


「蛇ねえ。火だろうね?」

ウェンは珈琲を飲みながら真顔で言った。


「炎出せるなら楽勝だろうけどなあ!出せねーし!」

俺も他の四神が居ないと結界も張れないし。


うーん?ハーミット様と顔を見合わせながら取り敢えず腹を満たす。


「何か思ったんですけど。矢が出てライオン出て今度は蛇。」

「うん。そうだな?」

ハーミット様は俺の話に頷く。


「もしかして?トール元帥の恐い物なのかなー?って。発想が人間的だし。」

ちょっと思った。触手は趣味なのかもしれないが。


「有り得なくは無い。異能はイメージだし。自分の恐い物をトラップにするって言うのは有るかも。」

焼きそばを食べ終わったハーミット様は食後の珈琲を飲み始めた。

相変わらず食べるの早い。


「大量の蛇か・・。油断したけど斬りまくるしか無いだろうなあ。」

ハーミット様が溜息を付いた。


「ねえ?俺が潜入って出来ないの?」

ウェンが俺の顔を見てニヤっと笑った。


「ウェンが?どうやって?」

・・・?あぁー!

「三台の異能でウェンに能力を貸すって事か!」

ウェンはうん!と満足そうに頷いた。


――そんな事出来る?――

皆に聞いて見よう。頭の上の四神と神人達へ話し掛けた。


――出来ますよ。但し光弾は威力が強すぎるのでハッキングがバレてしまう可能性があります。――


なるほど。やり取りをした感じだと軽い光弾ならOK。後は体術のみか。


「ウェン。光弾は軽くなら使えるけど強いやつならハッキングがバレるって。」

俺よりウェンが行った方が勝てるだろうし!ウェンなら安心だ。


「解った。加減する。」

ウェンは嬉しそうに微笑んだ。


「助かる。ウェンなら体術だけでも行けるかもな。」


ハーミット様はすっかり回復した様なので再潜入する事にした。


――権限委譲エンパワーメント――


ウェンに四神達を移す。


「へー。こんな感じか。早く行こう。時間は限られている。」

「じゃあ!行こう!!」


俺は今度は見張り役。2人はアインシュタインの中へ潜入して行った。



・・・・・・・・・・・・


再潜入開始。

声だけはウェンの見た目は神人。相変わらず不思議な異能。


「おお!凄い!」

珍しいウェンのテンションが高い。


「急ごう。」

「へー。飛べるんだ?」

操作に慣れないのかウェンはちょっとフラついているが何とか飛んでる。


「これがコンピューターの内部とはね。」

「面白いだろ?」

うんうん!と可愛い反応だ。

ウェンに合わせてキョロキョロと周りを堪能しつつ闇の前に辿り着いた。


「軽い光弾放つよ?」

ウェンがそう言って指先を光らせた。

「頼む。」


加減しながらウェンは暗闇に光弾を放った。

闇の中を光弾が駆け抜け闇の最奥まで一瞬だったが見えた。


光弾は最奥にあった数メートル先の厳重そうな扉に当たった様だが爆発等はしていない。


「今ので銃レベル。何も無かった?」

ウェンがうんうんと頷く。

「やっぱり・・。闇に1歩踏み込まないとトラップは発動しないのか。」

セキュリティシステムでは良くある事だ。


ウェンは首を傾げて解っていないみたいだが。

「要するに、この闇に入れって事。」

剣を抜く。

「了解。」

ウェンも剣を抜いた。


慎重に足を踏み入れる。

さっきは無気配だったからだと言い訳にしかならないが思いっきり蛇を踏み付けたのが失敗の原因だ。


シュルル・・・シャー・・・と蛇の擦り合う音が闇に入った瞬間から聞こえた。


さあ、殺るか!


ウェンも早速、剣を振るいだした。


流石、ウェン。正確に蛇の首をはねていく。

この数の蛇も2人だと早い。


大口を開けて飛びかかってくる蛇を斬る!

斬りまくる!!

「ラスト!」

あれだけ居た蛇を片付けた瞬間にパッと明るくなった。


「おー!電気付いた。蛇、沢山だったね。」

死骸も消えたと驚くウェン。初体験の反応って感じだなあ。

「じゃあ、ボス部屋に行こうか。」

ミナキの予想じゃ大蛇だろう。俺もそう思う。


扉を開けると・・・。

「すげー!」

ウェンがゲームかよ?と笑いながら部屋に足を踏み入れた。

「蛇のボスは竜か。」

予想を上回るデカさだ。


でも、ウェンはRPGみたい!と嬉嬉として竜に斬りかかる。

こいつゲーム好きだもんなあ。

良かったウェン連れてきて。俺は手抜きしよう。


指先から光弾を放ちながら斬り付けて行く。

「皮膚が硬いようだな?」

なかなか簡単には殺れない様だ。仕方ない。俺も殺るか・・・。


竜は口からお決まりの様に炎を吐いた。


スピードは早くない。ただ硬い。


「引き付けるから光弾を少し溜めろ!少しだけな!」

「加減する。」

竜の前に飛び出し俺へ攻撃させる。

避けるけどね。


やはり刃こぼれはしないが致命傷を与えられ無い。


「お待たせ。」

ウェンは飛び上がり竜の後頭部を狙って光弾を放った。


バシュッ!!


鮮血が舞って竜が揺らっと倒れる。


ドスン!!!と大きな音を立てて竜は倒れて消えた。

「倒せたね?」

「助かった。流石、ウェン。」

思ったより楽勝。


さっきウェンが放った光弾で見えた最奥の扉が見えた。


「もう闇は終わり?」

「予想ではエメリヒの前にも闇の予定だったけど。いきなりボスみたいだね。」

何が出るか?


明るくて静か・・・。

静寂。


最奥の扉の前に2人で立った。


「行くか。」

入って直ぐにでも攻撃が出来る体制でゆっくりと扉を開けた。


扉を開けても攻撃は無かった。


部屋の真ん中にキラキラと光る玉がフワフワと浮いていた。


「何?」

「解らない。抜かるなよ。」


ゆっくりと扉を閉めた。


無音の不思議な空間。


光る玉はクルクルと回転し始めた。


俺もウェンも剣を構える。


『君は11年前にハッキングしてシステムシャットダウンした子だね?』


光る玉が喋った・・・。

しかも、バレてる!!


「不味いな。」

「撤退する?」

ウェンがそう聞いたので軽く頷いた。

光る玉の方を向いたままそっと扉に手をかけた。


今のハッキングも過去のハッキングもバレてる。身バレもしている可能性も高い。


『あのハッキングは本当に助かったよ。ありがとう。』

光る玉はそう言った。


扉からは手は離さず何時でも逃げる体制を取る。


『私はアインシュタイン。この異能コンピューターのコアだ。そして元、総帥・・・。』


逃げる?


話を聞く?


少し迷いが出てきた。

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