第35話マフィアの猛追

標識読めないけれどボスが何も言わないから合っているのだろう。

ここからは山越えだ。山道は舗装されていて苦になる道のりでは無い。緩やかな坂を登っていく。


「あと2台追ってきて居る車いるんですか?」

俺はどの車か解らないまま山に入ってしまった。ボスは何処から来るのか解って居るのかなあ。


兎に角、気は抜けない。しかし後ろを見てもシアンの乗っている車しか着いてきていない様だ。


しかし、暫く進むと舗装されて居ない脇道から急に車が前に出てきて前に付いた。

「あーあ。仕方ないね。」

ボスは呑気な声で肩を竦めた。


煽り運転をする様にゆっくり走ったり急にスピードを上げてまた近付く。

蛇行運転をして決して抜かせはしない。

幸いにも他にすれ違う車は無く何とか事故にならずに済んでいる。見ているだけでハラハラする。


「面倒くさいね。」

運転手のジャックさんは必死で運転しているがボスは呆れた顔で溜息を付いている。


そして車は峠付近の開けた所で急ブレーキをかけて止まった。

運転手さんもしっかりとブレーキをかけて止まる。

両側一車線、でもUターン出来るスペースが作ってある。右は崖、左は山。戦闘場所は此処だと最初から仕込まれていたのかもしれない。

「あー。後ろもか。挟まれたね。」

前しか見てなかった。シアンの乗っている車の後方にも1台居た。

後ろはシアンに任せるとして。ちょっと行ってくるよ。とボスが車から降りた。


ボスが離れると途端に結界が薄くなった。

やっぱりカプリスメンバーが結界内に居ないとダメなのかも。近くに居る程度でも発動するだけましと思うか?

急に不安になる。

集中して結界発動!!


ボスは前の車の窓ガラスをノックしている。

出てこない。しかし、勇気あると言うか自信があるのか。相手マフィアだろ?


その時。


パン!!!


辺りに銃声が響き渡った。


何処から?!外を見る。


山?!山からだ!?

しかも何人居るんだよ!次々と現れるマフィア達。


ガタイの良い外国人が発砲してくる。


ヤバい。これはまじでヤバい!


結界は弾を弾く事が出来ずに結界で止まる。今の俺の結界は防弾ガラスくらいの強度しか無いかもしれない。

修復!明らかに結界薄くなっている。



ボスは多人数のマフィアに突っ込んで行く。

1人また1人と倒されてはいるのだがこちらへの発砲は止まない。

狙いはシンシアさんとフランツ君だ。


シアンは?!後ろを振り返る。

・・・敵が増えてる。


そんな嬉しそうな顔をして殺さないでさっさと此方を助けてくれ!


四神助けて。しっかりとした結界を張りたいんだ。

ふわふわと四神達は俺の頭上には居るがあの日の様な声は聞こえない。


「キャー!!」

「お母様、怖い!」

今度は車に斬りかかって来たマフィア。

かろうじて耐えている。


「大丈夫ですか?長い時間シールドを張るのも大変ですよね。」

運転手さんが不安そうな声で銃弾が結界に止まる度にビクッと体を震わせている。


「もう少しなら多分、大丈夫です!」

必死。ボスの相手のマフィアは後3人。シアンは?!後5人。もう少し。もう少しだ。


その時、激しい殺気を感じた。

空気が張り詰める様な。


「かなり強敵みたいです!」

運転手のジャックさんも険しい顔をしている。


黒いスーツ姿の青年がニヤりと笑いながら前の車から降りてきた。

殺気を放った奴か。

明らかにレベルが違うのが解った。


ボスはそいつを見てニヤっと笑う。


もうボスと言いシアンと言い!!そんなに楽しまないでさっさと殺ってくれ!


ボスが黒いスーツの異能者と対峙して戦い始めるとボスとの戦闘の生き残り3人はこの車を標的に定めて向かって来た。


「どうしよう!流石にヤバい。」

護れ!護れ!シンシアさんとフランツ君を護るんだよ!


――結界都合のいい男――

再度結界を張るが・・・。


シンシアさんとフランツ君を護りたいし自分も死にたくない。でも、結界は弱い。何故だよ。泣きたくなる。


もうこの人にも頼ろう!

「ジャックさんは異能者何ですよね?!その・・能力は何ですか?」

もしかしたら助けになるかもしれない。当てにしている情けない自分。


「私は・・・スナイパーですよ?外しません。そんな異能かな?」


え?!


「キャー!!!」

シンシアさんとフランツ君がガタガタと震えて俺を盾にする。


嘘?この人、敵なの?!


ジャックさんは俺達に銃を向けてニヤりと笑った。


「貴方は運転手では無いんですか?」

2人を庇いながら話しをする。

冷静に。俺も異能者だ。焦るな。


そして返事を待ちながら結界収縮。俺と2人を護れるサイズに。車を覆っていた結界を小さくした。


「まさか防御系の異能者が同乗するとはねえ。」

ジャックさんはガチャリと安全装置を外す。


「最終兵器が私です。車を降りて戦闘されている間に抹殺する命令。ちょっと予定外ですが。だいぶお疲れの様ですし。いけるかな?殺りますよ?」


ジャックさんはクスクスと笑い出した。


「貴方は主人が雇った異能者な筈よ!!」

シンシアさんがそう言うと

「倍の金額で奥様に雇われました。すみませんね。」

とニヤりと笑いながら


バン!!!!

至近距離での銃声が耳を貫く。


護れー!!思わず目を瞑った。


銃弾は結界を突き抜けて俺の膝の上にポトリと落ちた。

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