第27話ウェンの部屋

「明日は昼にアジト集合な。」

そう言われて2人とは別れた。


「じゃ、入って。」

ウェンに促されてウェンの部屋へ。改めて緊張する。

皆の部屋は2LDKなのか。作りはやっぱり部屋の大きさと数以外の違いは無い。

リビングにテレビと繋げられたゲーム機本体。ソフトが色々と。何かウェンらしい。

ソファに座って出来る様に3人がけくらいのソファがテレビの前にはあった。


アジトの半分くらいの広さのダイニングキッチン。テーブルと椅子がきちんとあって部屋もテレビ前以外は生理整頓されている。


「あの。」

えーと。何て言おう、朝のボスの話をもうちょっと聞きたいと言うか。


「今日は俺の部屋で寝る?アジトで寝る?」

ウェンがそう聞いて来た。

俺に選ばせるのか・・。


「ゲームしたい!」

そう答えた。俺の精一杯。

「うん。しよう。」

ウェンは嬉しそうに微笑んだ。


「ねえ。自炊しないの?」

弁当食べながら聞いてみる。

「自炊?ご飯を自分で作る?」

不思議そうに首を傾げてそう言われてしまった。

「いや。まあそうなんだけど。」

「した事ない。」

そうか。

「俺。作ろうか?」

簡単な物しか作れないけど。


「え?」

ウェンは驚いた顔をしてちょっと顔赤い。

「う、うん。食べたい。」

何か反応が・・。俺まで顔赤くなってきた。


「えーと。取り敢えず。今度、包丁とか鍋とか買いに行こうかな。道具無さそうなら。」

ウェンはうんうんと嬉しそうに頷く。


やべー可愛い。ヤバい可愛い。

語彙力低下。落ち着こう。


「あのー。携帯の使い方教えて!後、電話帳登録とかして欲しいな。」

「いいよ。」

弁当食べ終わったウェンが俺の携帯を受け取った。

「お揃いだ。」

「そう。お揃い。」

機種も色まで。何か嬉しくて照れる。


ウェンは自分の携帯を見ながら入力してくれている。

「これ、俺。」

この字は絶対覚えよう。今日、自分の名前を何とか覚えた。

「かけて。」

そう言われて電話の通話ボタンを押す。

ウェンの携帯が鳴る。

「履歴はここのボタンね。」

なるほど。

ウェンは俺からの着信で電話帳登録をしている。

文字かあ。漢字、平仮名、カタカナがある日本語よりはマシな気はするけど。

「ミナキ?」

「あっ。ごめん。入力ありがとう。難しいなあって眺めてた。」

「俺が教えるから。大丈夫。」

うん。優しく微笑むウェンにキュンキュンしながら頷いた。


「風呂、入ったらゲームしよか。」

「そうだね。」

もうパターン的にはゲームは中断しない!そんな感じってのが解る。俺もそうだけど。

「ミナキはお湯に浸かるの好き?」

「へ?ああ。うん。」

じゃあ、溜める。そう言ってウェンはパタパタと風呂へ向かった。


風呂文化があるって良いな。

ウェンが入った後に久々にゆっくりと湯船に浸かる。

「あー。日本人はやっぱり風呂だあ。」

ウェンも中入ったのかな・・。だとしたら何か照れる。俺、変態か!

風呂上がるとしまった。着替えはアジトだあー!!

「ごっ。ごめーん!ウェン!」

脱衣場から叫ぶ。

「どうした?」

慌てた様子でやって来たウェンに裸を見られるのはやっぱりちょっと恥ずかしくて隠した状態で

「ごめん。着替えアジト・・。」

「あー!確かに。待って。」

何かもう俺。本当にしっかりしなくちゃ。甘えっぱなし。頼りすぎ。


「ほら。俺のだけど。下着は新品。」

「本当に何から何までごめんね。」

はぁ。と大きな溜息が出た。


「何故?謝る?」

「いや、迷惑かけてばかりだし。」

ウェンの顔は不機嫌。え?どっちを怒っているんだ?甘え過ぎ?謝ったから?


ウェンは不機嫌なままリビングに戻っちゃったし。

「はぁー。」

全然解らん!


ウェンの服。嬉しい。

ちゃんと聞こう!リビングへ行くともうゲーム開始している。


買ってきていた炭酸飲料を飲む。

やっぱり怒っている?終始無言。気まずい。

・・・。やっぱり座る。

ウェンの隣にそっと腰掛けた。


「好き。」

え?

「俺はミナキが好き。だから迷惑なんて思った事ない。」

ウェンはゲームをしながらそう言った。


鼓動が早鐘の様にドキドキし過ぎて。

その好きは・・どっちの好き?


聞けない。怖くて。


「うん。」

出てきた言葉。


「はい。」

何事も無かったかの様にコントローラーを渡された。ゲームするけどね。


仲間として?恋愛感情?

頭の中はグルグルで対戦2回ボロ負けした。

「集中してる?」

ムスっとした顔で俺の顔を見る。


「してない。ごめん。」

ただただ、気まずい。

その瞬間、フワッと優しく頭を撫でられる。

「疲れてる?」

そう言って見詰められて顔が赤くなってくるのが解る。


「つっ・・・疲れてない!まだやれる!あのえーと!明日の裏競売って怖い人とか来るのかなとか!!めちゃ考えてた。」

苦しい言い訳。


ウェンは俺の髪をサラサラと撫でて

「あー。競売ね。来るよ。」

うんうんと頷いてまた画面を見た。


「まじで?どんな感じ?」

「宝石も実質博物館の盗品。それを堂々と買うような連中。他にも面白そうな品が出ると思うよ。」

コントローラーを操作しながらウェンはそう言う。


「まあ、怖がる事は無い。そこの所フェアだし。」

会話が逸れたお陰で調子が戻ってきた。


「げげ!そこでそれやるー?」

「俺に勝とうなんて100年早い!」


「はーい!勝ちましたぁ!」

「ふん。たまたま。」


笑いあって。楽しんで。


「次、これやろう。」

「OK。」


夜が更けていく。



「あー。眠い!絶対もう勝てる気がしない!!」

「俺も。」

お互い顔を見合わせてクスクスと笑う。


「一緒に寝よう。」

ウェンは微笑んで立ち上がった。


やっぱりそうなるのかぁぁ!!

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