第122話バックスレー・ストレンジ
夜、珍しくボスが俺の部屋にやって来た。
「おー?どうした?」
「リオに行ってきたんだ。」
古い付き合い。
こいつが電話で済まさず会いに来る時は頼み事がある時だ。
「何だ?マーシェルファミリーでも潰すのか?ヴェガ達の事で揉めたか?」
そう聞くと首を横に振った。
まあ、座れよ。と椅子に促して俺も座った。
「バックスレーって今、好きな奴とか付き合ってる奴いる?」
「いや。面倒だから居ない。相手に困る事は無いしなあ。」
俺は特にイケメンでは無いが体格からか結構モテる。
「じゃあさあ。ちょっと話だけ聞いてよ。」
ボスがニヤニヤと笑いながら話を始めた。
「乙女系か。別に好きでも嫌いでもねーけど?」
好みのタイプ?
「あはは!あんまりこう言う話した事無かったなあ!」
面白くて笑える。
色恋沙汰無縁。特にボスはその傾向が強かった。
しかし、ボスは見事にシアンとくっ付いた。
「フィーリングだ!特に好きってタイプはねーな。嫌いなタイプはいる。守ってってタイプの根性の無しの弱い奴。」
うん。俺の体型から寄ってくる男はそう言う奴が多くて。
だから一夜限りのお付き合い。
ボスはちょっと悩んで身長デカい奴は大丈夫?と聞いてきた。
「まあ、小さい方が好みだが。俺より小さければ良いよ。」
190センチね・・。デカいな。
でもまあ、会うだけなら良いか。
「いーぜ!マーシェルのボスを見て見たいしな!」
面白そうだからリオに行くか!
「まじで助かる!!でも、フィーリング合うか解らない!それに相手に気に入られ無いかも?その時はすまん!」
ボスはペコっと頭を下げた。
別にそう言うのは気にしないのに。
何とかなるだろ。
翌日。
リオのマーシェルファミリーのアジトの玄関口にはジハードとディードも居た。
「おーす!昨夜は楽しんだか?」
2人にそう言うと照れからかジハードに腹にパンチを入れられた。
「煩いですよ!!」
「キレるなって。良いじゃねーか。ラブラブで。」
ジハードはキレると敬語になる。戦闘中とヴェガの事でが多い。
「さあ、行こう。」
ボスに背中を押されてアジトと言うか会社に入った。
すげーな。立派なオフィスだ。
「あー。なるほどバックスレーか。気に入られるかなあ?」
最上階で出迎えてくれたヴェガが何やら失礼な発言をしやがる。
確かに俺はお前らみたいな綺麗な顔立ちじゃねーからなあ。
社長室と呼ばれている扉を開けた。
うちのアジトとは大違いだ。
「あら。昨日ぶりー!・・・っと。えーと。初めまして・・・。」
これが噂のマーシェルファミリーのボスか。
噂通り綺麗な顔立ち。ガタイも良い。
そして、こいつかなり強いな。
「初めまして。カプリスのバックスレーです。」
取り敢えず御挨拶はしとかねーと。
「私はマーシェルファミリーの社長のヴァレンティーナです。宜しくね。」
本当におネエさん系だ。
珍しいなあ。
しかも、ヴェガにヴァレンティノだと名前の突っ込み入れられているし。
「ちょっと!カプリスのボスさん!あの。彼は?」
ヴァレンティノはボスに俺の事を聞いてきた。
「取り敢えず、ガタイが良いのを連れて来ました。」
ボスの説明は相変わらず適当で。
そこがまあ、ボスらしいんだけどな。
おっ。何か立ち上がったぞ。
ヴァレンティノは此方へ向かって来た。
うん!並ぶと身長が解る。しかもちょっと年上か?
30歳いってるかいってないか。
「何センチですか?」
ちょっと上目遣いで俺の目を見てくるヴァレンティノ。
「あー。205センチっすね。」
頬に両手を当ててそりゃあもう女の子みたいにキャーキャー言ってる。
ボスは小さくガッツポーズしてるし。
「あの・・・。お姫様抱っこ出来ますか?」
言ってる事と仕草は乙女なのだがガタイがイカつい。
「多分?やってみようか!」
このくらいなら。いけるだろう。
ヴァレンティノの背中に手を添えてっと。
膝の裏に手を回す。
よいしょっと!!
「ほい!どーだ?!」
抱き抱えてヴァレンティノの顔を見るとそれは真っ赤で恥ずかしそうに照れていた。
そんなにか・・・。
「流石だなあ。バックスレー。」
ボスが嬉しそうに笑ってやがる。
「これくらい。何ともねーよ?」
実際、そんなに重いとは思わ無い。
んで?俺はお姫様抱っこをしに来たのか?
じゃねーよなあ?
「降ろして大丈夫か?」
うんうんと頷かれそっと降ろした。
「バックスレーさん。良かったらデートしませんか?」
デート?
あんまり面倒でそう言う事はした事無いんだが。まー。いっか!
「おう!何処か行くか?ってかバックスレーで良いよ。」
しかし、乙女系と言えど流石、男だから積極的だ。
こう言うタイプは確か女性扱いしてやらねーといけないんだったっけ?
「ちょっと行ってくるぜ!」
「私、行きたいカフェがあるのー。」
ボス達に見送られてヴァレンティノとちょっとリオ見物とお茶しに行く事になった。
しかし、目立つ。
デカいもん同士だし。
街を歩くと振り返られる率の高い事。
「デートだったらもう少しマシな格好が良かったな?悪ぃな。」
ヴァレンティノはマフィアらしいスーツ姿だし。スーツはちょっと派手な色合いだが俺は普段着だ。
「気にしないで。ラフでカッコいいし。」
「そうか?ガサツだからよ。嫌な所あったら言ってくれ。」
まっ。綺麗な奴に言われると悪い気はしねーなあ。
野郎2人いや、野郎と乙女と2人でテラス席デートか。
「何、飲む?」
「ここのラテアートが可愛いの!」
ほほう。
「じゃ、俺もそれで。」
思ったより話は弾む。
流石、マーシェルファミリーの頭だけあって切れ者だ。
ラテアートとやらは可愛いウサギとクマだった。
絶対、1人じゃ頼まねーなぁ。
「好きな方選びな。」
「ありがとう。じゃウサギさん。」
やっぱりそっち選ぶと思った。
・・・・・・・・・・・・
その頃の社長室。
「ボス、戻らねーな。」
ヴェガが予想外と言った顔で2人が出て行った社長室扉を眺めている。
「好みは人それぞれ。バックスレーはあれでモテるんだよ。」
カプリスで1番、初対面の男の扱いに慣れているのはバックスレーかも。
「うちの社長も久しぶりのデートだからウキウキなんですよ。」
ガブリエルが苦笑し、その意見にビクターが頷いた。
「じゃあ。戻るまで俺の計画のおさらいしようか?」
大元帥の異能に対抗手段としてのオーガの手術の件。リュートは今は次いでだが育てれば良い異能者になる。
「後はうちの社長?」
ビクターの意見に出来ればね?と頷いた。
そんな話をしているとガチャっと扉が開いて2人が帰って来た。
「ただいまぁ!楽しかったぁ!」
「すまねえー。待たせたよな?」
特に進展はしてないが嫌いあっても居ない様な感じかな?
こう言う事に利用してバックスレーには悪いとは思っていたが。満更では無さそうで良かった。
「ごめんね。突然、デートに行きたいとか言ってしまって。ボスありがとうね。」
ヴァレンティノの反応は悪くない。
「カフェの珈琲、美味かったぞ。」
バックスレーも大丈夫か。
「さてと。本題に入りましょ。」
ヴァレンティノはキリッと社長の顔になった。
「結論を言うとOKよ。カフェでバックスレーに色々と話は聞いたわ。」
良し!ホッとした。
後はこの人だな。
「私の異能も必要じゃないの?」
ヴァレンティノはニヤっと微笑んだ。
「是非お願いします。」
良し!
これで何とか形が出来てきた。
後は実行ね。
オーガとリュート拉致計画実行が決定したら連絡すると告げてエバーステイに戻る事にした。
「バックスレー!また連絡するわ!」
「おー!その時は宜しく!」
何やらヴァレンティノとバックスレーの2人は連絡先交換もした模様。
張さんを呼んで無事帰宅。
「ありがとう。バックスレー。付き合うのか?」
ちょっとそこは知りたい。
ジハードもディードもバックスレーを見上げる。
「お友達から?って言われたから。取り敢えず今度、体術特訓して貰うんだぜ!」
良いだろ?とバックスレーはニヤっと笑った。
まだ恋愛に発展するかは微妙だな。
「そりゃ良かった。強くなりそうだ。」
ヴァレンティノの異能の1つに攻撃力強化って言うのがあった。
これ、絶対バックスレーと組ませたい。
「解散しようか。後は・・・。また計画しないとね。」
バックスレーに感謝して自室へ戻った。
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