第95話 手術
「飯。」
メスでは無い。飯だ。
実際、ヴェガはイーヴェンデルタとの戦闘で少しばかり回復したがっているし。俺も回復したい。
「勿論、あるよ。」
ディードは栄養ドリンク系ゼリー飲料を差し出す。実際、これは即効性があって効く。
「アルージャ、監視カメラをどうにかして。」
「ビクターは防音壁を継続。」
「ガブリエルは痛みを感じないように催眠かけて。」
ボスが次々に支持していく。
「カメラは一定映像を流すように仕組むね。」
ハーミット様はニヤリと笑いこのくらいは楽勝と言う。
「後のメンバーは気配は消して、何時でも戦闘態勢。」
了解。と全員が頷いた。
マーシェルファミリーに俺より劣るがシールドを張れる異能者が居て交代もして貰った。
でも、ヴァルヴァラ来たらこのシールドだったら速攻壊れるな。
先ずは集中だ。
「大丈夫やで。正直な。脳内チップが入ってる俺は死んだも同然やねん。」
リョウは寂しそうな顔をした。
「ディードは次の飯も用意しといて。」
さあ。開始だ。
――
ガブリエルさんがそっと異能を発動すると抗わないリョウには効いた。
普通は自分より強い異能者には効かないけど信頼されているんだな。
そして俺も。
――
見えた。
見えたがこれを取り出すのはヴェガだ。
――帝台これをヴェガに見せる事は可能?――
――やってみましょう――
そう言われヴェガに話す。
「一瞬見えるから。」
念を押して異能を発動する。
――
「了解。凄い異能だな。」
ヴェガは慎重に角度を定める。
「結界を張るね。」
――私がお手伝い致します――
降りてきたのは
ヴェガの手に結界を張る。
脳内にも結界を張る。傷をつけたらアウトだ。
――
結界と同時進行に玉女が行うのは修復再生だ。
本当に手術みたい。
――
ヴェガが決意した様にズズっと脳に指を入れた。
大丈夫。護れている。
再生・・・。触れた所は全て再生。
遠隔透視で再び視野を作る。
何故こんな物を脳に入れておいて異能者が無事なのやら。本当に理解出来ない状態だが。これも異能か・・・。
ヴェガの指がチップを掴みそっと取り出した。
「ふぅ。取れたぞ。」
――
遠隔透視をしながら脳内損傷が無いか確認する。脳内チップのあった位置に脳を戻さないとな。
ズレ無し。傷無し。
「呼吸してる。」
ガブリエルがほっとした声を出した。
異能空間も作動しているし生きているのは解るんだけど。
脳ってやつは障害とかが心配だ。
「うん。催眠解いてみて。」
ガブリエルが不安そうに催眠を解く。
ヴェガも自信なさげな顔をしている。
「リョウ。」
声をかける。
「おはようさん。」
そう言って薄らとリョウは目を開けた。
「やった!!」
成功したとヴェガが嬉嬉として声を上げる。
「むっちゃ頭痛い。」
リョウは顔を顰める。
「ちょっと待ってね。」
確かめる様に手を翳す。
――玉女?何か不備があったのかな?――
――脳機能の情動、感情、人道的行為を行う部分を長期間支配されていた事による回復の為の頭痛かと思われます。――
なるほど。
「リョウ。支配されていて今まで使われて居なかった機能が回復する為の頭痛みたいだよ。」
「何や偏頭痛みたいな感じや。まあ、そのうち治るか。」
リョウはゆっくりと起き上がった。
「ありがとうございました。この御恩は一生忘れません。」
そう言って頭を下げてヴェガの手を取る。そして、俺やガブリエル、ビクターさんにも何度もお礼を言った。
その時、見張りをしているボスに明らかに焦りが見えた。
「下へ奴らは向かって来ている。」
立ち上がろうとしたが
「限界到達してる・・・。」
神人を扱うと本当に一気に来る。
「同じく。」
ヴェガも疲労が顔に出ていて早く逃げる体制に入らなければならないのに2人して動けないで居た。
「急げ!」
ディードに急かされながらゼリー飲料を口にする。
「米が食いたい。」
我儘なのは解っているでも動けない。
コンビニおにぎりを開けて貰い頬張る。
「大丈夫や。俺が護ったる。」
リョウがそう言ってボスの隣に行った。
「此処、6階やねんけど下へ飛べるか?」
確認する様に皆に問いかける。
多分、大丈夫。
「シアンを連れて行った奴をそろそろ呼んどきや。外でかまへん。逃げるで。」
ボスは元締めに連絡を取る。
身体の回復5割かな。もう少し食いたいけれど恐ろしい程痛い様な殺気がどんどん迫っているのが解る。
取り敢えず動ける。
「もう大丈夫です!」
「すまない。俺も復活した。」
俺もヴェガも何とか大丈夫。
立ち上がった瞬間。
遠かった殺気が一気に迫るのが解った。
「カプリス!!シアンを何処へ隠した!!?」
ヴァルヴァラが怒りの形相で目の前に現れた。
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