第96話鉄壁

「私の従者を何処へやった?!!!」


キレ気味のヴァルヴァラにリョウは質問した。

「プエル・トリコでは新しく従者は作らへんかったん?」


ヴァルヴァラは

「いや?1人作った。ろくな奴居なかったからな。1人だけだ。」

まだリョウの脳内チップが抜けている事はバレて無い?


「今、尋問中やねん。皆の秘密を聞いて楽しんでたんやけど?ヴァルヴァラちゃん邪魔するんか?」

上手いな。流石、嘘は付いてないし。嘘付けない空間の異能者。


「尋問?生温い!!どけ!シアンが逃げたのならそのボスかミナキを仲間にする!」


ヴァルヴァラの手が光る。


「前から思っていたんやけど。クソガキが!我儘過ぎるねん!!」

リョウがそう言った瞬間もうヴァルヴァラの背後に回っていた。

速い!!

あれだけボスが手こずっていた相手なのに。


ヴァルヴァラを蹴り飛ばした。ヴァルヴァラの光弾は小さく放たれたが直ぐに消滅した。

「クソ!痛いーーー!」

ヴァルヴァラが背中を押さえて苦痛の表情をした。


「リョウ!貴様!私を蹴ったな!!」

背中を押さえながらも怒りの形相でヴァルヴァラは剣を構えた。


「元帥様に怒られても構わん。リョウ!お前も従者にしてやる!」


「おーおー!怖い怖い。あかんなあ。本間に怒られるで!」

揶揄う様にリョウはヴァルヴァラの剣を受け止めた。リョウの方が強いかも!!


此処から飛び降りるって言ってたよね?タイミングは?何処から?あのデカい異能者の攻撃も防ぐ防弾ガラスから?


「また来るぞ!!!」

ボスが叫んだ。


「あー。本間や。」

リョウはヴァルヴァラの攻撃を軽く受けながら不味いなあと言う表情を見せる。


人を試す様な柔らかい殺気の風がふわっとホールに広がった。


ベイク・マスターとアラン・ハーエイト。

間違い無いSランク異能者。

一気に形成は不利になってしまった。


「良い所に!リョウと喧嘩中だ!味方しろ!」

ヴァルヴァラが2人にそう言った。


「どうせヴァルヴァラが諜報活動の邪魔したのでしょう?」

ベイクは苦笑し


「でも、リョウも情報仕入れより逃げられる前に殺しを優先すべきだよ?」

アランは冷酷な顔で此方を見た。



ドクン・・・。俺の心臓が鳴って鳥肌が立った。



此奴!!俺のウェンを殺した奴だ・・。



Sランク異能者の裏情報を見た時は思い出さなかったのに。


その冷酷な笑み。


此奴だ。


俺の脳内に鮮明にカプリスが殺されたシーンが蘇った。


アラン・ハーエイト。

体術Sランク。異能SSランク。

火・風・水のエキスパート。


護らなきゃ。俺は全力で護らなきゃならない。何があっても護る!!


「アラン。情報は大事やで?現にこの戦争を仕掛けたのはエンバスターって奴が首謀者。マフィアはイーヴェンデルタ、アザレング、ディブル商会。覚えたか?潰しに行ってこいや。」

リョウもアラン、ベイク、ヴァルヴァラの3人相手となると何とか戦闘回避したいのか誘導する様に語る。


「覚えたよ。でも?取り敢えずカプリスを先に殺ろうか?」

「そうだな。皆殺しだね。」

アランとベイクは2人共、剣を抜いた。


リョウはヴァルヴァラの側におり俺達からは少し距離がある。


アランとベイクは俺達を見ていて多分、この距離なら一瞬で詰め寄られる。


張り詰めた空気・・・。殺気・・・。


「しゃーないなあ!」

リョウがそう言うとアランとベイクはそちらを見た。


リョウはアラン達に背を向けて無言で此方に歩いてくる。

口は「逃げるで!!」と言っている。


本気で逃げれるの?

リョウは剣を抜いた。嘘を付かないリョウは喋らない。

「シールド!」

そう言っている様だ。


護れるか・・・。いや、護る。


此処で護らなきゃ全員死ぬ。


――いけるよな。四神に神人達――


――今の回復具合なら2分――


朱雀から返ってきた言葉は2分。

やろう。


「ウェン。倒れたら運んでね。」

ボソッと呟いた。ウェンは静かに頷く。


リョウが俺達へ向けて駆け寄った。

アラン達はリョウが攻撃を仕掛けると思ったのか動かない。


俺達も走り出す。リョウが俺達の側に来た瞬間。


「青龍・白虎・朱雀・玄武・勾陳くうちん、帝台、文王、三台さんだい、玉女。」


――皆、行くよ!――


――九芒星鉄壁ノナグラム――


俺の頭上の神達が光を放ち九芒星を描き結界が出来た。


何度目だろう。カプリスの代名詞みたいな物だな!逃げる!猛ダッシュ!


リョウの異変に漸く気付いた3人の殺気を感じたが絶対に止まらないし護る!


背後から攻撃を受けているのは感じる。

しかし、結界はビクともしない。

Sランク異能者の3人の攻撃でも壊れる気配すら無かった。


「バックスレー!ウェン!リョウ!行くぞ!」

ボスが叫んだ。

結界の中でボスの手には地獄の大鎌が装備されて居た。

ウェンも指先が光っていた。


レベルアップはこれか。ボスもいつの間にか大鎌装備しているし。

溜めなくても放てる威力は落ちるが光弾。


銃弾の様な光弾が異能者用防弾ガラスに穴を開けた。

バックスレーさんの拳とリョウの剣とボスの大鎌が振るわれてデカい1枚ガラスが砕け散った。


「逃がすかー!」

ヴァルヴァラの声が聞こえた。


光弾が放たれたのが解った。


――ミナキ、叫べ!!!――

脳内に響くのは玄武の声。


――反射リフレクション――!


九芒星の玄武が盾となりヴァルヴァラの光弾を跳ね返すのが解った。


反射された光弾は屈曲し思わぬ方角へ飛ぶ。


アランとベイクに当たった。


「ヴァルヴァラァー!!」

「このクソガキ!!!」

アランとベイクの断末魔の様な叫びが聞こえて気配が消えた。



「やばい・・・。元帥に怒られる!」


ヴァルヴァラのその声を聞いたのを最後に俺の結界は解け、俺も意識を失った・・・。

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