第97話俺の大事なミナキ

ヴァルヴァラの光弾にSランク異能者が当たって玩具に変わった。


俺のミナキはやっぱり凄い。

しかし、その瞬間倒れ込む様にミナキは意識を失い結界も解けた。


「降りるぞ!!」

ボスの声に頷きミナキを抱き抱える。

6階から抱き抱えての落下は少々キツイのだが。

「ウェン。」

バックスレーがミナキの頭部を一緒に支えてくれた。

「サンキュ。」

フワリと飛び降りる。

1人なら結構10階以上から降りたこともあるんだが。ミナキの身体も結構振動が来るので慎重に。

地上が迫り気を足元へ集中させる。バックスレーのお陰で大丈夫そう。


ストっと無事に着地。

そこから転移魔法陣は見えていた。


「全員居るか!?」

ボスは確認し元締めに礼を言っている。


元締めはリョウを不信そうな顔で見たが後で説明すると言って出発を急かす。

確かに。また何か来る気配。


「解った。急ぐ!」


――転移――


「此処は?」


見た事が無い場所だ。


「俺の自宅だよ。」

元締めがそう言った。駆除屋が自宅じゃ無かったのか。

案外普通の家なんだな。


しかし、ミナキ良く寝ている?

何か・・・変だ。

意識が飛んでいるというか。寝て回復中でも無さそうで・・。体温も何時もより低い気がする。


「すまない。ちょっとミナキの様子がおかしい。」

抱き抱えたミナキをそっと絨毯の上に降ろした。


「見てみるよ。」

ボスとリョウが側に寄る。


「異能の限界突破だな。」

「あまり良くない状態だね。出来れば何か栄養を取らせないと・・・。」

2人はそう言った。


限界突破・・・。

確かに今回の結界は今まで見た結界と違っていた。

完全に護られているのに中から攻撃が出来た。


「どうしたら良い?」


「駆除屋の医療班の元へ連れて行こう。シアンは奥の部屋に転がしている。暴れ疲れて寝てるよ。」

元締めが苦笑した。


「もう。元に戻った筈だよ。張さんありがとう。ミナキの事も宜しく頼む。」

ボスが嬉しそうに微笑んだ。


ミナキ・・。大丈夫かな。

不安に駆られる。


「ウェン、駆除屋に行こうか。皆は適当に休んでくれ。リビングなら寝て貰っても構わない。」

元締めに転移するぞと言われた。


「助かる。そうだ。ラズも着いてきて。」

何となく・・。好きって言ってたし。

「おっ、おう。1人じゃ不安だろうしな!」

そう言ってラズも駆除屋に行く事にした。


ラズは駆除屋で働いた経験があるから建物内が詳しくて助かるし。


――転移――


駆除屋の元締め部屋か。

「行こうか。」

元締めとラズと医療班の元へ。


産まれてこの方医者にかかったことすらないので良く解らないのだが今のミナキの状態がヤバそうと言うのは解った。


「すまねえ。診てやってくれ!」

元締めがそう言うと部屋の中に居た白衣姿の異能者が振り向いた。

白衣の男性2名と女性1名。あー。医者ってこんな感じか。なるほど。


「ラズお久しぶり。病人?怪我?」

「あらミナキね。」

「こいつは・・・結構ヤバそうだ。直ぐにベッドに降ろしてくれるかい?」

白衣の異能者に言われてミナキをベッドへ寝かせた。


「ヤバいのか?」

元締めが心配そうに聞いた。


白衣の異能者達は手を翳し何やらミナキの身体を診ている模様。


「異能限界突破ですね。」

ボスやリョウと同じ事を言った。限界突破したら?どうなるの?


「ちょっと点滴して。」


女性異能者が何やらミナキの腕に針を刺してその先には何か水?みたいな物が入った袋が吊るされている。

「あれ。何?」

ラズに聞く。

「あれは血管から栄養を身体に直接入れているんだよ。目覚めないと食えねーからな。」

なるほど。ラズ、物知りだな。


「さてと。説明します。」

白衣の男性が此方に来るように手招きした。

ラズと2人で座って聞くことにした。


「簡単に言いますと異能借金です。」

聞いた事が無い言葉だ。


「借金?」

ラズも首を傾げる。


「使える異能の限界値を超えたので前借りした感じです。ミナキの使える異能が100とすると120くらい使っています。」

限界突破ってこう言う事を言うのか。


「この普段は使えない20の異能は気力や自身の決意で無理矢理使用した物です。この20の異能借金を返済するまで異能は使えなくなる。」

何か解って来た。


「無理させたんだろうな。」

ラズが悲しそうに呟いた。


「うん。」

ラズが来てくれて良かった。俺だけだったら泣きそうだ。


「何時治る?」

そう聞いてみた。


「本人次第なんだけどね。頑張り屋さんには良くある事だよ。最低1日、長い人は1週間くらいかな。」

取り敢えず治ると聞いてホッとした。


「今、栄養を身体に入れているからもう少ししたら目覚めると思う。」

良かった。安心したら腹が減った。

ラズもそうみたい。


元締めに食堂に案内されて定食を食うことにした。

「ありがとう。本当に良かった。」

元締めにお礼を言わないと。


「気にするな。余程、強い結界を張ったんだな?」

そう聞かれて頷いた。

リョウの事を聞いてきたのでラズが説明してくれている。


「なるほど。それで連れて来たのか。手術に逃走。そりゃ本当に異能の使い過ぎにもなるな。」

最もな事を言う。


ミナキはこんなに頑張ったのに俺は全然頑張っていない・・。


飯を食って医療班の元へ戻ったがミナキはまだ目覚める気配が無い。


「俺はミナキの側に居る。」

「目覚めた時にウェンが居たら安心するよ。」

ラズもそう言ってくれた。


「ラズは帰るか?俺の家で寝るか?」

元締めに言われて嬉しそうなラズ。うん。それが良い。


「明日、駆除屋には勿論来るから。今日は此処でゆっくり休めよ。」

「ありがとう。」

元締めも優しいよな。


2人が帰ったので俺はベッドの横に座らせて貰った。

点滴は残り少しまで減っていた。


そっとミナキの手を取る。温かい。良かったさっきより体温が通っている。


「もう一本、点滴付けときますね。」

白衣の女性異能者がそう言った。

「宜しくお願いします。」


ミナキの顔色が少し良くなっていて安心してきた。

「此処でお休みになりますか?」

そう聞かれたので頷いた。


早く目覚めますように。そう思いながらミナキの手を握り座ったままベッドに頭を乗せた。このまま寝よ。


俺の大事なミナキ。愛してるよ。

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