第94話嘘が付けない空間で

「良し、質問タイムにしよか?」

マフィアを倒したリョウはハーミット様達にも空間に入るように強要した。


西アン・デスと違って此処は政府本拠地。

リョウの仲間が来たら逃げられる可能性は殆ど無くなる。

でも、情報を色々暴露はしたくない。


「なあ?お前。何で異世界人やのにそっちにおるん?」

俺にきた・・・。

質問されたらどんな感じになるのかと思っていたが。

本当に考え無しに口からポロっと出る感じだ。

「俺はカプリスが好きなんです!」

わー。こりゃガチで気を付けないと。ポロポロ喋りそう。


その答えにリョウはもう一度聞く。

カプリスが好きって理由だけでそっちにおるの?


「全員、大好きで!愛してます!特にウェン・ムーン様が大好きで。本当に大好きすぎるんです。」

ペラペラと話してしまって物凄く赤面してしまった。しかもこういう時って素が出るのか様付けてしまったし!


「あー。えーと。何か聞いて申し訳なかったな。嘘はついてないな。」

リョウは頭を掻きながら次は何聞こうか?と言う顔をした。


「この世界にどないして来たんや?政府召喚か?」

これ。聞かれると思った。


「エラー。召喚エラーって脳内に響く機械音が聞こえたら何時の間にかこちらの世界に居たんです。」

間違って無いし余計な事も言ってない。


「あの機械もぶっ壊れる事があるんやな。」

リョウはブツブツと独り言を話す。


「さて、この嘘付けへん空間は勿論、俺も嘘は付けへん。俺なあ偵察の異能もあるんよね。シアンをお前ら助けて逃がしたよなあ?」

リョウの問に首を横に振る事は身体が出来ずカプリス全員頷いてしまった。


殺られるのかな・・・。


「そもそも。シアンは政府に入りたくて入って無いやろ?それは解ってるねん。嘘付かれてるって。本間はなんでや?」

リョウに聞かれてボスがヴァルヴァラの話をした。


「ヴァルヴァラちゃんね。あの子は見境無いからなあ。で?西アン・デスに何で金印盗みに行ったんや?」

ボスはジェームズ・エンバスターの依頼話をした。裏競売の話も。


「おっさんが元凶やったんやな。漸く謎が解けた。んで?そこまでしてシアンを取り戻したかったのは何でなん?仲間やから?」

リョウの質問にボスの顔が明らかに赤面した。必死でリョウの異能に抗おうとしている風に見えた。

でも・・・。


「シアンを愛しているんだ・・・。」

ボスの口からポロっと言葉が漏れた。

恥ずかしさで顔を覆い見ていて気の毒なくらいだ。


「悪い!あーえーとーな。俺はそう言う差別はせーへんよ!な?寧ろ応援する。ヴァルヴァラちゃんが完全に悪人やん。」

リョウがボスが余りにも赤面するので焦りまくっているのが解る。


「話を変えよか。この中に防音壁張れる異能者おるよな?ちょっと見たんや。」

そう言われてビクターさんがスっと手を上げた。

「ちょっと防音壁張って。」

何のつもりだ?

「あと、その異世界人の君はシールド張ってな。」

俺の異能も見てたのか・・・。


俺とビクターさんは言う通りに防音壁と結界を張った。


「よーし!これで誰の邪魔も取り敢えず入らへんな。」

リョウはニヤリと笑い俺達を見た。


「本題や。ヴェガ?と言ったか?オッドアイの兄ちゃん。」

ヴェガがそうだと頷いた。


「うん。ヴェガ。俺の脳内チップ抜けるか?」

俺達、全員が顔を見合わせた。

え?これはどう言う風に捉えたら正解?


ヴェガも戸惑っていたが答えるしか無い。


「1度、試したが死んでしまった。」

そう正直に答えると


「そうかあ。試しはしたんや?これから抜ける様になる?」

またしても。ヴェガが抜ける様になったら殺す?


「抜ける様になりたい。」

ヴェガはそう思っていたんだろう。


「そかそか。俺なあ。脳内チップ抜きたいねん。」


「ええ?!!」

思わず声が漏れた。


リョウは腕組みをしてうんうんと頷く。


「そりゃあ驚くのもしゃーない。俺、嘘が解るやん?せやから政府の嘘も全部解るねん。」

ああ。そうか。この人に嘘は通用しない。だからシアンの事も。


「事の始まりは召喚された直後からや。俺の異能をまだ話して居ない時に既に政府の嘘が解った。俺達、召喚者は選ばれた勇者でも何でも無い。ただの殺し屋や。」

リョウは不愉快そうな顔をした。


「本間は嘘つく政府に逆らいたいねん。でも、コイツが言う事を聞かん。」

そう言って自分の頭を指さした。


「それは本当にそう思っているのか?」

まだ異能を疑っているのかラズがそう聞いた。


「この空間は嘘付けない空間。それは俺も同じやで。疑ってんの?じゃあ・・お前の好きな人とか暴露しよか?ほれ!言うてみ!」

リョウがニヤっと笑う。

話の内容はもうガキっぽいんだけどラズは聞かれたくなかったんだろうなあ。


口をパクパクさせて絶対に異能に抗おうとしている。でも・・・。

「張優炎・・・。あー!うーわー!」

言って誤魔化すように叫んで座り込んだ。


「ラズ。張さん好きだったんだ?へー。」

ボスがクスッと笑う。


「解った。抗えない空間だ。クソー!じゃあ!リョウ!」

ラズは赤面していてリョウを指差しで何か恥ずかしくなりそうな質問を考えている様だ。


「リョウの初体験は何歳?ちなみに誰?」

横からハーミット様がボソッと呟いた。


リョウの肩がプルプルと震えていた。

怒らせた?

「・・・!それ聞くか?!俺は新車や!この世界に来て5年!相手無し!」

相手を作る暇も無いんや!!と言って顔は赤いしキレ気味だけどやっぱりこの嘘が付けない空間は本当みたいだ。


「悪かった。別に馬鹿にした訳では無い。現にこの世界生まれの異能者は初体験は大体子供の頃にマフィアにやられる。相手は同性だよ。」

ハーミット様の話はリョウは初めて聞いた様でキレ気味だった顔が冷静になり少し苦痛そうな顔になった。


少しばかりの沈黙が流れた後。リョウは口を開いた。


「なあ?俺は本気で脳内チップを抜いて自由になりたい。」


リョウは本気だ。その本気に答えたくなる。


「ヴェガ。俺がサポート出来るかもしれない。だけどまだ試した事が無いから自信がないんだ。」

脳内チップの位置確認。そして結界で脳内をガードする。場合に寄っては治癒を行う。


「俺達を信用して話してくれているリョウを殺したく無い。」

それは完全に俺の本心。異能空間で無くてもそう答えたと思う。


「君、優しいなあ。確かに俺もハイリスクなのは嫌やなあ。どないしょ。」

リョウがそう言って顔色が変わった。


「あー。帰って来たで。ヴァルヴァラちゃん達。」


「上空か!」

ボスがそう言った。

戦闘機?が屋上ヘリポートにとまった?


「えー。どないしょ。」

リョウはどうしたいんだ?!


「やってみてや。手術。やらんのなら逃がさへんよ?」

どっちにしてもハイリスク。


ボスは・・・。

「成功したら仲間になってくれるか?」

そうリョウに聞いた。


リョウは嘘は付けへん。

「当然や!」

と笑った。

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