第101話シアンが部屋にやって来て

新居引越し晩御飯会議も終わり皆、自室に戻って行った。


「・・・。来る?」

「うん。ちょっと待ってて。」


実際、シアンが戻った翌日に沢山したので結構満足したけれど。

やっぱり週一くらいでしたいのが希望。


「やっ。来たよ。」

シアンは飲み物持参でやって来た。

そういう所マメなんだよね。


「はい。炭酸水。」

「ありがとう。風呂上がりに頂くよ。」

風呂を溜めながらソファで2人でまったり。

何かこういうのも良いなあと思っていたらシアンが少し深刻そうな顔をした。


「さっき。リョウは元の世界に戻りたいと言っていたよね?」

「そうだな。まあ、普通そう思うんじゃねーか?ミナキは別みたいだけど。」

引き止める権利は無いがミナキには居て欲しい。それはウェンが1番願っているだろうし。


「実はちょっと思う所があって。政府機関ってやつは少し変だった。」

シアンは操られていた間の気にも止めなかった記憶が頭を過ぎると言う。


「俺は操られて居たけれど心は完全に支配されていなかった。だから従うフリをしている部分もあってね?」


「勿体ぶるな。気になる。」

急かす様にシアンの顔を見た。


「総帥が居ない。多分、居ない。夜勤の時にこっそり確認したんだが。大元帥、元帥は存在するんだ。」


危険察知能力はシアンはかなり高い。

偵察能力程では無いが近いくらいのスキルは俺と同じ。

「居ないと言うことは?」

総帥が居ないのは逆に一番強い奴が居なくて良いのでは無いのか?


「この世界の政府機関を仕切っているのが異世界人と言う事になるよね?だからおかしくなった?」

シアンはそう言った。

多分、政府に居る時に何かの違和感があったのだろう。


・・・。じゃあ?何時から総帥は居ないんだ?名前すら俺は知らない。あのアルージャも知らなかった。


もしかして?異世界人でこの世界を支配しようとしている?

そんな予感がした。

シアンの顔を見ると同じ様な考えをしている様で・・・。


「ミナキはこの世界はおかしいと言ってたよなあ。」

俺は育ってきた環境だからこれが普通だと思っていた。

「うん。果たしてリョウも帰れるのかな?後、漫画家さんも。」

シアンの言う何か矛盾した?狂った?この世界。

片足突っ込んだ様な俺達は多分、調べる事になるんだろうな・・・。


「明日以降に少しずつ探ろうか?」

今日は引越し記念でイチャつきたい。


「そうだね。ランジャン?風呂沸いたよ?」

「入るか?一緒に。」

シアンは肩を震わせて笑いを堪えている。


「何だよ!笑うな!」


「いや・・・。あはは。何か可愛いなあと思ってね?」

クスクスと此奴まで揶揄いやがる。


「クソ!今夜は泣かせるくらいイかせてやる!」

「言ったね?」


風呂はちょっと狭いかなあ。

俺達2人はデカいからな・・・。


取り敢えずシアンを前に背後から抱ける感じで湯船に浸かった。

「あー。生き返るー!風呂最高!」

「おっさんぽいよ。」


「どの口が言ってんだ?!」

背後から頬を摘む。確かにシアンの方が少しは若いけど。

「もー。痛いってー。」

これくらいの痛み痛くないだろうに。

全く、何だこの・・・何だ?この感覚。本当にヤバい。嬉しい。

可愛い!!

背後から抱き締める。


「ランジャンって何時から俺の事、好きなんだい?」

「うーん?何時からだろうなあ。シアンは?」

シアンも首を傾げる。


「俺は殺人の快楽が人生の全てだった。エッチの快楽と人を殺す快楽は同じだった・・・。と思っていた。人を好きになった事も無かったし。」

まあ、そうだろうなあ。


「好きと言う事が心を乱すモヤモヤした何かだとすると?君に初めて出会った時からかもしれない。」

シアンに言われて俺も・・・とキュンとした。クソ、可愛い。

ガタイはデカくて可愛くないが。可愛い。


「もう、俺の元から離れるな。」

そう言って抱き締めた手に力を込めた。

「うん。離れる気は無いよ。まあ?何かあったらまた護ろうとしちゃうかも?」


「バカ・・・。」

本当に愛おしい奴だよ。



風呂上がりは軽く寛いで。そろそろ寝るか。

「さあ、どうぞ。」

新居、寝室へご案内。


「いいね。」

シアンはベッドに腰掛けた。


頬を優しく撫でる。


俺の好きな目だ。


「綺麗な瞳だ。」

「ありがと。」

クスクスと笑いあいキスをする。

甘い。

こんなに甘いなんて。


「ランジャン。愛してる。」

「シアン。愛してる。」

ひとつに繋がる身体。


もう。離さないから。抱き締めてお前を何があっても護るよ。

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