第164話帰還するもの達

連日、ヴェガと俺は脳内チップを抜く作業で大忙しだ。帰還する者を優先してやっている。


他のカプリスメンバーは政府管轄国をどうするかとかマフィアと交渉とか。

そういう事で大忙し。


脳内チップに関しては残してそのまま帰還させると後々後遺症が発生する可能性。

異能者である間は無い病気の可能性。

そんな理由で。


勿論、全員が帰還はしない。この世界が気に入ってしまった者。

帰っても身内が居ない等の者とか。



現在、ユウヤは日に5名程度帰還させている。


本当は優先的に帰還予定だった14歳のヴァルヴァラはまだ帰還せず休憩中とかに良く話しかけに来る様になった。


割と年の近いオーガとリュートが俺の側にいる事が多いので彼等の元に相談に。


「ヴァルヴァラ、昨日も行ったけどさあ。絶対、両親は心配してるよ!」

リュートの正論。


「でも、この髪色のせいで・・・。」

今日も始まったぞ。ヴァルヴァラは思った以上にネガティブ思考。

脳内チップは完全に性格を変える事は出来ないが持っている性格の一部分を増大させる事がある。

オーガにも俺様傾向があったから。


多分、ヴァルヴァラも女王様傾向の性格が何処かにあると思うんだけどなあ。


「何や?まだ悩んでん?」

「ただいま。」

他国へ偵察に行っていたリョウとレイが戻って来た。


「髪色と言えば!!俺、黒髪に染めなきゃ!」

オーガはこの世界に来てカラーリングしたらしい。


「それ?染めてるの?」

ヴァルヴァラは首を傾げた。


「そっか。染めればいーじゃん。勿体ないけど。」

オーガに言われてその発想は無かったらしく目をパチパチさせてヴァルヴァラは頷いた。


「日本人って黒髪を染める人多いんだよね。」

「そやねん。普通やで。」

「外国ではその発想はあまり無いのかもね。」

黒髪コンプレックスと言うのか?重たい印象を軽くしたいとか個性出したいとかは日本人に多いかも。


「そうか。それ良いな。」

ヴァルヴァラはまた大きく頷いた。


「もしやで?どうしても家の居心地悪いんやったら日本に来たらえーやん。」

リョウは日本ではその髪色も顔もウケるで!と微笑む。


確かにあと数年したらかなり美人さんになりそうだし。


「留学とか考えもしなかった。」

良かったヴァルヴァラもやっと笑顔になった。


「子供は可能性しかないんだよ。だから一時の感情で決めるもんじゃない。戻ったら良い事あるよ。」

レイはサラサラとヴァルヴァラの頭を撫でる。


そう言うレイは戻らない組の1人なのだが。

マジシャンであり芸能人。

本人は知らないけれど消えた事でかなり騒がれたし戻れない理由は良く解る。


「レイも頑張ってマジシャンしたら良いのに。」

ヴァルヴァラにそう言われて苦笑していた。


「さて!俺は午後も仕事して来るよ。」

ヴェガと頑張らないと。


「お疲れ様。頑張ってなぁ!」

リョウ達に見送られて再び医療室へ。


あと少しでこの作業も終わりの目処はついている。


皆、帰還かあ。寂しくなるなあ。


ちなみに、オーガとリュートは意外にも異能者を殆ど殺した経験が無かった。

斬りつけてもトドメを刺して無ければセーフ。要は生きていたら大丈夫。


2人ともこの世界に来て半年程度が最後の殺し。そこまで遡れるらしい。

だからそれ程、揉めずに済むのでは無いかと思う。


ただしリョウやヴァルヴァラ、ベイクは残念ながら・・だった。


海誠先生に至っては誰も殺していないという。


そう。転移直後に海誠先生は帰還出来るのだ。


記憶にあった連載開始日の俺の年齢。

それと先生の帰還する年が上手く一致した。


皆が帰る前に俺の経緯を海誠先生には打ち明けないとと思う。

後は聞いてくれそうならお願いもしたい。


「ミナキ、始めるぞ!」

「はーい!やりましょう!」

ヴェガと最後まで全員を安全に送り出す為に気合い入れて頑張ろう。


そして、今日もまた5人。


笑顔で元の世界へ戻って行く者達。

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