第163話生き残った・・・
長い夢を見ていた。
生まれつき髪が銀色の私はその事でイジメにあっていた。
毎日、辛い・・。
両親も兄も姉もこんな髪色じゃないのに。
家でも居心地悪かったなあ。
そのうち学校にも行かなくなって親とも顔を合わせなくなった。
そう・・・引きこもった。
友達はぬいぐるみだけだ。
「ここは?」
点滴ついてる。医療室?
「良かった!お目覚めですね。ヴァルヴァラ様。」
看護師と医者の異能者。
そうか、此処は異世界だった。
「ありがとうございました。もう大丈夫です。」
起き上がると背中の傷も治っていた。
今は?
朝か。あぁレイとバトル後から寝てたんだ。
「無理はなさらないで下さいね。」
「ああ。はい。」
何か色々と・・・この世界に来てからの自分が思い出されて・・・・・。
恥ずっ・・・。
医療室を出ると1階フロアは私と同じ記憶を取り戻した異世界人異能者で溢れていた。
大元帥と元帥が死んだんだ。
びっくりするくらい頭がスッキリしている。
他の皆の目も活き活きしている気がする。
話、聞きたい。
目指すは知り合いが居るところ。皆の間をぬって通る。
時折聞こえるヴァルヴァラ様だって声が恥ずかしい。
赤くなる顔を伏せて誤魔化しながら走った。
私・・何て呼ばせ方していたんだよ!!!
でも、前みたいに敬うって雰囲気じゃなくて可愛い子供を見る目みたいで。
しかし、色んな国の人が居たんだな。
恐らく日本人?の割合が多い気もする。ユウヤが日本人?だからかな。
さてと。あいつらは部屋か。
エレベーターで上層階へ。私の部屋もそこにある。
フロアに着いた途端に各部屋の扉が開いた。
くそ。流石、Sランク達。気配でバレたか。
「ヴァルヴァラちゃーん。生きとるやん!」
「うわっ。リョウ!」
「ヴァル!大丈夫だったか?すまない。刺してしまって!」
「レイ・・・。それはそのあの。うん。大丈夫・・です。」
「ヴァルヴァラ。どう?スッキリした?」
「ベイク・・。」
うう。その節は従者にしてすみません。
とか言えない。
何か猛烈に恥ずかしい。
「あーうー。」
3人に見詰められる。
今までの自分の言動を思い起こすと恥ずかし過ぎる。
「えっと。色々と・・ごめんなさい。」
暴言とか暴行とか。
年下なのにタメ口とか。上から目線とか。その他、沢山。
「うわぁ。あのヴァルヴァラちゃんが謝っとるわ。」
クソリョウ・・・。脳内チップ無くてもこのテンションは変わらないんだな。
「まあまあ。元の普通の子供に戻ったって事だよ。」
レイとはあんまり話した事ないけれど不思議なお兄さんだった。
今もそんな雰囲気。
「ヴァルヴァラ。見た目だけでなく中身も可愛くなったね。」
このサラッと照れるセリフを吐くベイクも前と余り変わらない気がする。
「アランは死んだの?」
3人は頷いた。
そうか。アランは見た目と違って直情的で残忍で手がつけられ無いタイプだったしね。
「他国に派遣されていた奴らは生きているよ。」
レイに言われてホッとした自分。
何だろう。これが普通なんだろうけれど。
「えーと。みんな?」
背後から声がして振り返った。
「クリスナ!」
リョウが声をかけたので振り返った。
政府管轄国に派遣されてたクリスナだ。
その後も次々にSランク達が戻って来た。
「なーなー!改めて自己紹介しよや。出身国とか!俺は日本人や。元、大学生やってん。」
リョウが人懐っこい笑顔で呼びかけた。
「そうだね。俺も日本人。職業はマジシャンだったよ。」
レイはマジシャンだったのかあ。
何か異能が!!そんな感じだ。
「俺はカナダ人。理科教師だよ。」
ベイクは先生か。爆弾魔じゃなかったか・・。
「私は・・・。ロシア人。」
それ以上はあまり話したくない。
「早く戻らないと親も心配してるよね。」
「ヴァルヴァラは優先で。」
戻る?皆が気を使ってそんな話を始めて・・。
「あの。えと。戻りたくない。」
視線が痛い。嘘言ってもリョウにはバレるし。
仕方ない。
話をした。髪色の事とか。引き籠もりの事とか。
「うーん!でも、戻りや!」
リョウ?話聞いてたか?
暫く説得や口論をしていたら背後に気配。
「ユウヤ!」
洗脳抜けてても緊張する。
「皆、お揃いで。今日から元の世界に帰還させていくから。戻りたくない奴はそのまま。後はー?カプリスの奴らに挨拶行ってこい!」
ユウヤは私は1階のフロアに降りる!
と言ってまたエレベーターに乗って行ってしまった。
カプリス・・。あーいーたーくなーい!!!!
「ほな、行こかー!」
リョウは呑気で。って此奴はもうSランクじゃなくてカプリスだった。
「レイとベイクも?裏切ったんだよね。」
裏切ったって表現は可笑しいか。先に脳内チップが抜けたから普通の人になったんだ。
「うーん?政府に義理立てする必要無くなったから?」
ベイクはそう言って頭をポンっと叩いて来た。足が止まる私に歩けと言う様に。
「ヴァルはまだ子供の頃からこの世界に来たから。特に洗脳が強かったのかなあ。」
レイも行くよと背中をポンと押される。
確かに子供だった。今もまだお子様だと思う。
迎賓フロアにカプリスは居ると言う。
ぐー。お腹が鳴る。
そう言えばお腹減った。
「俺達も一緒に飯にしよーや。」
「そうだな。」
朝食も準備されているらしい。
「おはよう。リョウ!」
部屋に入るとボスの声が聞こえた。
あー。みんな居るのか。
憂鬱・・・。
「おはよーさん。紹介するで。」
リョウが毎度の如く元気に挨拶して私達を紹介している。私はベイクの後ろに隠れる様に目立たぬ様に。
「で、皆も知ってるヴァルヴァラちゃん。」
視線が痛い。痛すぎる!!
「ヴ・・ヴァルヴァラです。その節は色々とごめんなさい。」
怖くて顔を上げられなかった。
皆、大人だ。
「やっぱり洗脳されていないと可愛いわね。」
何かでっかい綺麗な顔の新総帥って人がそう言った。
「いや、可愛くないです。銀髪気持ち悪いって言われてたし。」
私はコンプレックスの塊。何も自信無い。
「そんなに綺麗なのに?」
えっと。そう言ったのはミナキだ。綺麗・・初めて言われた。
朝食を食べ始めると結構、皆から絡まれる。
あまり話すの得意じゃない。
特にカプリス怖い。
自業自得だがやりすぎた。
ああ。そうだ謝らなきゃ。
「あの!・・・。その。シアンさん!本当にごめんなさい。すみません。でした!!!」
シアンと目がバチっと合った。さっ・・殺人鬼・・・。私は何て奴に手を出したんだ。
「気にしてないよ?」
フフっと微笑まれて逆に怖い。
「俺は恨んでるよ。」
ボスがシアンの隣からそう言った。だよね。恨まれて当然。
「でも、感謝もしてる。」
ボスはニヤニヤと笑い私を見た。
「へ?何で?」
そこから素敵な惚気話を沢山された。
そっ・・・そうなんだ。
シアンとボスが・・ね。お付き合い。
「こら!子供にはまだ早いで!」
リョウが注意してくれて収まった。
顔赤い。
まっまあ。私は恋のキューピット的な事をしたのかな?
許してくれたのかな。
良かった。
本当に良かった。
まだ皆の事は怖いけど少しは仲良くなれたら良いな。
そして、私はどうしよう?
元の世界に帰った方が良いのかな。
急に言われても。困る。
本当に・・どうしよう。
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