第165話別れと感謝と伝言

遂にリョウ、リュート、オーガ、海誠先生、ユウヤが帰還する日が来た。


ヴァルヴァラとベイクは昨日、無事に元の世界へ。

2人は泣きながらそして笑顔で。

ヴァルヴァラもきっと上手く行く筈だ。

もし、辛かったら日本へおいでとユウヤは住所を教えていた。


そして、今日は帰還ラスト日。


皆でお別れ会を兼ねて昼食を共にしている。

エメリヒ達を倒してから沢山語って来たけど。本当に寂しくなる。


元のカプリスに戻るだけなんだけど。特にリョウは出会いもびっくりだったし仲良くなるスピードも早くて凄く楽しかった。


リュートとオーガは初期からの敵。でも俺は主人公だと知っていたけどボス達も何か2人を憎めないと思っていたと思う。


海誠先生に至っては助けて貰ってばかりだったし、ユウヤとはつい最近まで敵同士だったけれど本当に気さくな良い人だと解った。


「嬉しいけど寂しくなってきたー!」

「俺も。しょっちゅう行き来出来たら良いのにー!」

リュートとオーガの言う事は本音そのままだろうなあ。


行き来出来たら嬉しいけれど。それでは世界がおかしくなるだろう。


「リョウは?楽しみ?」

ボスもリョウの帰還はずっと残念がっている。

「5年ぶりやん?日本も変わってるやろなあ。親に怒られるんか?とか考えるなあ。憂鬱半分、ワクワク半分やね。」


「リョウには世話になったから寂しいよね。」

シアンも寂しそうだ。リョウが仲間にならなかったらもっとシアン奪還も苦戦したかもしれない。


「漫画家さん。色々と助けてくれてありがとう。最初は疑ってたけど。」

ハーミット様がクスクス笑いながらちょっと暴露中。


「位置特定も出来るんだ!えー?面白いもっと詳しく!!」

相変わらずネタにする気満々。


「ユウヤはこの世界でトップに立とうとは思わなかったの?強いのに。」

社長が素朴な疑問をぶつけた。


「私はこの世界に迷惑かけ過ぎたと思っているよ。召喚の異能で沢山の殺し屋を呼んでしまった様なものだから。」

ユウヤは申し訳なさそうな顔でそう言った。


「償っても償いきれないよね。だから私が元の世界に戻る。そしたら新たに召喚は行われない。アインシュタインのみでは出来ないからね。」


核を失ったアインシュタインはもうユウヤの力無しでは起動もしない。


昼食も食べ終わってしまった。


名残り惜しい。


いくら話しても話が尽きない。


またねではなく・・さよならだから。


「ミナキ。本当に大丈夫?」

ウェンは未だに気にする時がある。

帰らなくて良いの?と。


「うん。俺は残りたいんだ。」

ウェンの不安な気持ちを払拭出来るくらいこれから大事に愛していきたいなと思う。



全員で別れの挨拶をし合った。


決意しないと踏み込め無いくらい帰る皆も俺達も寂しいんだ。


そして・・遂にその時間はきた。


「海誠先生。例の件宜しくお願いします。」

「勿論。本当に君って子は。驚かされてばかりだね。」

海誠先生には沢山お願い事をしてしまった。


「何?知りたいやん!」

リョウが横からブーたれた表情。


「まあまあ、日本に帰ってからだよ。連絡はファンレターとして雑誌社に送ってくれたら此方から連絡する。ね?」

5人は戻る年代がバラバラ。


3年ちょっと前に戻れる海誠先生が1番過去に帰れる事になる。


日本に帰ったらまた会おうと約束をしていた。


「それではお世話になりました!」

リュートが涙を流してそう言ったのを皮切りに俺達も涙が溢れてくる。


「さよなら。本当にありがとう。」


「元気でね。」

「彼女出来ると良いね!」

バニラさんとエルーカさんに言われてリュートとオーガは泣きながらもちょっと顔を赤らめて笑った。


「ユウヤ。お元気で。」

「レイもね。この世界を楽しんで。」

レイはやっぱりこの世界に残る。


「ほな!!お元気で!!ホンマにありがとう!楽しかった!皆、大好きやで!」

リョウが叫んだ。


「元気で頑張って!!!」


俺達のその叫びが終わると同時に転移は完了した。


居なくなった。


もう、会えないけれど。


ずっとこの事は貴方達の事は死ぬまで忘れない。


「これから良い世界にして行きましょうよ!」

社長が涙を拭って微笑んだ。


「俺達みんなでね?」

ボスも微笑んだ。


そう、俺達のこの世界の新時代はまだ始まったばかりだ。

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