第28話ボスとシアン

部屋の外、気配無し。マンション全体大丈夫。

仲間も動き無し。

行くか。彼奴の部屋に。


初めての出会いはマフィアとの抗争で。

サシで勝負をした。


殺人鬼シアン。


噂には聞いてたが強い。そしてこの異能オイシイ。

身体能力の高さ。

何より綺麗な顔立ちと均整のとれた筋肉。

どストライクだ。

うーん。欲しいなあ。

戦っている最中にウズウズしてきた。


「お前を食いたい。」

バトル中に囁いた。


こいつはそれは面白そうだな?とマフィアを見事に裏切った。


このやり取りは勿論カプリスメンバーは知らない。


だからそんなシアンのマフィアを簡単に裏切った行動を良く思って居ないメンバーが多い。


反発しあうドS(俺)とドS(シアン)。


なんと言うかそれを欲しいと言う衝動。押さえ込みたいと言う衝動。



しかし、ミナキを食うとはね。

仕方が無い。異能者にはめったに居ないあの子はMだろう。


食いたくなる気持ちも解らなくは無い・・。


解らなくは無いのだが・・。



ウェンは初対面の相手には心を絶対、開かない。

育った劣悪な環境が一番影響が強いが加えて好意が見える異能のせいだ。


出会った頃。多分12歳くらいだったウェンの心は氷の様で仕事はこなすが会話を殆どしない。

年月をかけて少しずつ溶けてきた心の氷が多分、今、一気に溶けた。


8年越しだ。一気に溶かしたのはミナキ。


俺はね。弟の様に可愛がって来たウェンの幸せを奪わせる訳にはいかないんだよ。


なあ?シアン。

俺じゃ満足しないの?


妬けるな・・・。



・・・・・・・・・・・・



気配なし。

夜中、音もなく部屋の鍵が開く。

流石プロ中のプロだな。まあ、こういう行動をするのは1人しか居ない。


「よう。シアン。」

「あれ?御立腹?」

不機嫌そうな顔。ボスだ。


「怒られる様な事はしていないけど?」

心当たりは・・。シラを切りながら珈琲を入れる。


ボスはソファに静かに座り俺に隣に座るように言った。


「ミナキを食ったのか?」

やはりこれか。

「食ったよ。欲情したんだ。」

殺人以外で生まれて初めて自らね。


ふーん?と面白く無さそうな目付き。


困ったなあ。こんなに早くバレるとは。

視線を逸らして次の言葉を考える。

実際に初めての感情だったし。何かこう征服したい欲と言うか縛りたい欲と言うか。

求められてする事と自ら欲するのはちょっと違う。

あの時は本気で食いたいと思った。


まあ、簡単に言うなら二股だ。


恋愛感情って未だにどちらにも湧かないんだけどね。

我ながら困った性癖だ。


「でも、ミナキは?ウェンが好きみたいだね?」

解りやすい子だ。ちょっと面白く無いからもう1回くらい押し倒そうかと思っていたが・・・。これは無理そうだなあ。


「で?お前は惚れたのか?」

「まさか。俺は好きという感情が解らない。」

そこは本気で正直に。


「そこは俺もお前の身体目当てだけれどな。」

ボスは俺を見詰めてニヤリと笑う。この関係カプリスに入ってから誰にもバレずにずっと続いている。


「したくなった?」

俺もニヤリと笑い返す。


「全く、マフィアの裏切り者シアンを可愛がっているのは誰だと思っているんだ?」

「ランジャンだよ。」


腕を伸ばすと彼は俺を抱き締める。


本当に殺人以外では全く発情しないんだけど。


この人は上手いんだよね。


キス美味しい。舌が絡む。

捕食される。そんな感覚。


そのままソファに押し倒される。

「いつも食われる立場の癖に。」

「それは君が上手いから。」


実際身体の相性は抜群だと思う。


彼の目を見詰める。

「俺はいつかお前を殺すかもよ?」

「望む所だ。」


ニヤりと微笑まれキツく抱き締められた。


ランジャンに抱かれると快楽に溺れる。


何時もそうだ。


殺る時の快楽を与えてくれる。犯す快楽も犯される快楽も殺る快楽も・・・。俺にとっては同じだな。


そして今日もランジャンの身体に溺れてしまった・・。


「スッキリした・・・。」

「同感。」

身体を浄化して服を着る。


ボスは冷めた珈琲を啜る。

「入れ直そうか?」

「いや、これで良いよ。」

俺の方を向いて不意打ちのキス。

美味い。珈琲の味。


「じゃあ。バレないうちに帰るかな。」

「フフ。そうだね。」


立ち上がって帰り際ふとボスは振り返る。

「一緒に寝て欲しい?」

何時もはそんな事言わないのに。

「バレたら困るだろ?」

「そうだね。」

そう言って気配を完全に消して部屋を出て行った。


隣に寝る・・・。案外、俺が求めているものはそんな些細な事かもしれない。


「寝るか。」

猛烈に眠い。


彼は・・本当に上手い。


ベッドに倒れ込む様に横になり眠り込んだ。

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