第86話再潜入

ポンッ!!と言う音がしてベッドや他の家具が元に戻った。

解って居てもビックリする。

ビクッとした俺を見てウェンがクスクス笑った。

「もー。笑い過ぎ!」

俺も何だか可笑しくて一緒に笑う。


「ミナキ。ベッド行こう。」

まだ夜では無いけれどウェンは待てなさそう。

「うん。」

ベッドで横になる。イチャイチャが幸せ。


その時だった。ウェンの携帯が鳴った。

「ん?アルージャ?」

ウェンが電話に出た。

「あー。今?・・・。仕方ない。」

電話を切ったウェンは大きく溜息。


「ミナキ、アルージャが呼んでる。」

「そうなの?ハッキングの事かな?」


ウェンはストックのカップ麺をビニールに詰めている。

「もしかして晩御飯?」

「それも含めてだね。あっちで食べようか。」

それもありだな。

イチャイチャはちゃんとお風呂に入ってから。沢山キスしたからかウェンも機嫌が良い。


「んじゃ焼きそばにして。」

「じゃ、俺もそうする。」

ラーメン3つと焼きそば3つ持ってハーミット様の部屋へ。


ウェンがちょいちょいっとピッキングする。相変わらず早い。


ハーミット様の部屋はうん。やっぱり暗い。


「やー!良く来た!ありがとう!」

電気付けても良いよ?と言われて遠慮なく付けた。


「ウェンすまないね。少しミナキを借りるよ?」

ハーミット様は画面を見る様に俺に言った。

「潜ったんだ1人で。やっぱり闇の正体はこの異能者裏情報だった。この前行った所が明るくなっていてその先が闇。」

そうかSランク異能者を閲覧したければあの闇に潜るのか・・・。


「政府のプロテクトは頑固だからねー。普通にやってたら2日寝ないでやればいけるかな。」

「時間かかりますね。」

うん。とハーミット様は頷いて俺の顔を見た。


「行こうか。」

「了解です。」

俺もハーミット様の隣に座った。


「ウェン。もしも俺達に異変があったら。ミナキを起こせ。俺は起きるのは不可能だからな。」

「危険なの?」

ウェンは怪訝そうな顔でハーミット様を見た。

「この前はヤバかった!が!しかし!今日は武器がある。」

見えないけれど意識専用武器?エルーカさん作ったんだ。


じゃあ、行こうかと言われ俺も集中。


――潜入インフルテーション――


――文王。潜入。――


頭上の文王がフワリと降りてきて潜入開始だ。

俺は見えているだけど。意思で文王を操作しているので集中するために目を閉じる。


夢を見る様な感じで眼下にこの前と同じ景色が広がった。

「行くぞ。」

「はい!」

ハーミット様の手には剣が握られていた。

凄い。本当に武器だ。


飛ぶと言う感覚も不思議だしこのパソコンのプログラムの中身も不思議。


「ほら、闇が晴れてるだろ?」

「本当だ。」

この前ハーミット様が襲われて居た場所は幾つかのドアがある廊下だった。


そしてその奥は闇。


剣を抜いて構える。

ハーミット様も剣を抜いた。


「まあ、1人でも行けるかもしれないんだがな。」


闇に1歩踏み込む。


ザシュッ!!っと斬られた音がした。

「趣味悪い。」


おっと!俺も斬り付ける。

バシュッ!!


「これは蝙蝠コウモリ?」

向かってくるのが解りにくい。


「任せろ。」

暗闇は見えるんだよ!とハーミット様が剣を振るう。


やっぱり武器持たせたら強い・・・。

少しづつ前へ進みながら攻撃していく。


しかしキリがないくらい向かってくるな。

俺へ攻撃してきた蝙蝠は何とか斬る。


「スイッチオン!」

ハーミット様が壁のスイッチを押した。

パッと明かりがつく。

足元には無数の蝙蝠の死骸。


「あっ・・・。消えていく。」

明かりに照らされたから?蝙蝠は居なくなり綺麗な廊下が照らされた。


「ドアは1つか。入るよ。」

何も考え無いでハーミット様に付いて入ると・・。ゲームかよ?!

ツッコミどころ満載だ。

人型の蝙蝠人間?が居た。

「ここのボスね。」


ハーミット様が剣を構えた。

文王の俺も。


しかし、かなり俊敏な動きをする。

羽ばたきが起こす鎌鼬カマイタチの様な攻撃を飛びながら避ける。

多分、Aランク異能者の触手のボスは・・・。考えたくもないな。気持ち悪かっただろう。


「俺の勝ち。」

ハーミット様は蝙蝠人間より高く飛び上がり勢い良く縦に分断した。

バッシュッ!!!と激しい音がして蝙蝠人間は消えた。


「んー。戻るか。」

ハーミット様は満足そうに扉の外へ。

俺はちょこちょこ着いていく。


「この先の闇は多分、元帥達。」

ハーミット様は今は止めておこう。そう言った。

「疲れたし。」

戻るよ。と言われて意識を戻す。


スっとスピードを上げて飛び戻る。


「お帰り。」

目を開けるとウェンが俺の顔を覗き込んでいた。

「ただいま。」

ぐぅー。腹が鳴る。


「ミナキの身体は正直だ。」

ウェンはクスクス笑いながらお湯を沸かし始めた。

「俺も!!頼む。」

戻ったハーミット様は結構きつそうな顔をしていた。

殆どハーミット様が倒したしな。俺は本当にサポートだけ。


ウェンが用意してくれた焼きそばを3人で無心で食う。

身体が回復していくのが解る。

「早食いだねー。」

ウェンが呆れるくらいハーミット様はもう完食。

「はー。おかわり!」

はいはいと言いながら次はラーメン。


すっかり回復した様だ。

「さて、閲覧開始。」

ラーメンを啜りながらパソコンを片手で打ち込み始めた。


ヴァルヴァラ居た!


「へー?これは作成次第でシアンを助けられるね?」

ハーミット様がニヤっと笑った。

本当に裏情報。

「全員分、閲覧して見るよ。今日はありがとう。」


「こちらこそ。また明日。」


ハーミット様の部屋を出た。

「後は如何にSランクと対等にバトル出来るかだね。」

「俺は護れるかだ。」

ウェンと2人で決意した様にドアの前で頷きあった。



部屋に戻り一緒に風呂に入りイチャイチャ。

1度やり出すと止められない。


「ウェン・・・好き。」

ベッドに押し倒されて沢山キスをする。


でも時折、ふっと先程の潜入の事とか思い出す。

「また。考え事?」


シアンとボスを思って自分だけ幸せな想いをしている。

心の何処かに引っかかったトゲがまだ抜けていないのをウェンは多分、気づいている。

「ごめん。大丈夫。」

そう答えてもウェンは気づいていそう。


今日のウェンは何時もより激しくてそして忘れろと言わんばかりだった。


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