第82話Sランク異能者

おお。字が読めると色々詳細が書いてあるのが解る。

この情報は政府の敵にとっては美味しすぎる情報源。

中でもどんな異能か書いてあるのは今後の対策に必要不可欠だろう。


「シアン居た。クソ。もう登録されてる。登録されているかもと思っていたけどムカつく。」


ハーミット様がシアン・ワールドと書かれた画面を見せた。無表情の暗い顔の写真。


シアンはAランク異能者の欄に居た。

オーガもAランク。ランクとか字が読めなかったから前は解らなかった。

オーガは前回はBランクだったらしい。シアンと対等って言うのが何かムカつく。


「シアンの上司はヴァルヴァラか。」

ボスが不満そうに画面を見ている。

脳内チップ無し。勤務地ジ・パング。

良かった、本当に入れられて居ない。


「ジ・パングから果たしてプエル・トリコに来るかな?」

ディードが首を傾げる。

「解らない。1番の問題はそこだ。」

ハーミット様はそう言って他を探しだした。


「レイ・イラバヤシ。これダンジョンマスターだよね?」

やっぱりマジシャンのレイだ。年齢29歳。

彼もSランク。勤務地は西アン・デス。

異能は幻影、幻想、ダンジョン作成。

Sランクには上司は居ないのか。


「居たよ。ヴァルヴァラ。」

ハーミット様が画面を指さす。


「ヴァルヴァラ・アルスカヤ」

何かロシア人っぽい苗字だな。

勤務地プエル・トリコ、西アン・デス、ジ・パング。

年齢14歳。


「14歳?それでSランクとかどんだけ強くなるんだよ?」

ラズが不満そうな顔で画面を睨む。


「あれが限界では無いんだろうね。ただ1つ勝てる可能性があるんだ。」


ボスがニヤっと笑った。

ここ見てよ。

異能、人間の無生物化、その後、無生物化した人間を自分の従者とすることが出来る。

やっぱり厄介そうだ。

「ヴァルヴァラの異能は非常に危険だが1度、光弾が当たって人を無生物に変えたら暫く光弾は放てないと察する。」

ほら良く見てよ!と指さした。


ブレイクタイム2分。


これって。2分撃てないって事か?

だから西アン・デスでシアンをぬいぐるみに変えた後は追って来なかったんだ!


「あはは!こりゃ行けるんじゃないか?」

ハーミット様が2分あれば殺れるだろ?と安堵した様に笑った。


「問題は誰か当たって貰うって事だよね。」

ウェンがそう言ってちょっと首を傾げた。

「あー。それで囮のマフィアを使うんだ。」

俺、冴えてると1人で納得している。

確かにその作戦は行けそうな気がしてきた。


「Sランクって10人しか居ないんだな。」

Aランクはいっぱいいるけどとハーミット様が画面をスクロールしながら眺めている。


「ミナキ?その言ってた奴が居ない。」

俺もそう言われて確かめたがSランク異能者欄にトオル・ミクリヤは無かった。


「幹部か。」

ボスがそう言った。


そうなのかも。政府のトップも載ってない。

「政府のトップって誰なんですか?」

この世界の支配者って奴。


総帥そうすい?それが表に現れないんだよね。」

テレビでしか見た事無いし名前すら不明とボスは言う。

大元帥だいげんすいと元帥も居るわよ。」

エルーカさんが名前は確か?

「大元帥がエメリヒ?元帥がトールだったかしら。」


「・・・。トールって?トオルじゃない?」

ちょっとだけ推測だけど。リュウトはリュートだしオウガはオーガと発音されていると説明した。


「はは。元帥かよ。有り得る。それが脳内チップの発明者でアインシュタインって機械も作ったか。」

ハーミット様はブツブツ言いながらパソコン検索中。


「居た。元帥トール。どう思う?」

異能者一覧の様に異能等は載って居なかったが写真だけ。


日本人の男性だと思った。歳は40歳?くらいかなあ。


「ピアス無いんだな。」

背後からバックスレーさんが本当に異世界人?と言う。


「召喚が行われ始めた当初は翻訳機って無かったらしいよ?」

自力で話せる様になったかもね?とボスは言った。

海誠先生は元帥って知らないのか?

それともそこは隠している?先生のファンが幹部に居るってこのトールの事?

解らない・・・。


「ミナキ。もう1回潜入。闇に行ってみようか?」

「え?!俺も?」

ハーミット様はまた潜入しようと言い出した。


「焦るな。今日は止めておけ。お前もミナキも完全じゃない。」

ボスが宥める様に止めてくれた。確かにまだ身体の回復は6割程度だ。


「それよりも。」

とシアン奪還作戦を考える事が先決と言う。

「ヴェガの案に乗る?」

ジハードは俺の事は気にせずにと言った。


「俺・・・。もしかしたらヴェガさんの異能のサポートが出来るかもしれません。」


さっきから神人と四神達が頭の上で独自に会議中なのだ。

遠隔透視で脳内チップの位置特定。

そしてヴェガさんの異能で取り出す手に結界を張りながら脳内に手を保護しながら突っ込むと行けるんじゃないか?と言う議論になっている。


一応、その説明をボスにして見た。

「ヴァルヴァラを殺さないって事?」

ボスの表情は冷たい。


憎い・・・。そうだよな。


俺はやっぱり甘いのかもしれない。

でも。ヴァルヴァラもリュートもオーガも敵だけど子供なんだよ。


「・・。もしもシアンに脳内チップが入ってしまった時の練習。」

ボソリとそう答えるしかなかった。


「そうだな。もしもか。」

ボスは少し顔を歪ませていた。


「先ずはエンバスター家の同行を探るべきじゃないかな?金印を盗んだ事はバレてるの?」

バニラさんがボスを見て首を傾げる。


「さあ?向こうから連絡は無いよ。頻繁に他所の国のマフィアを使って西アン・デスに侵入させているなら数日でバレるかもね。」


「この金印どうするつもりだ?オークションにかけるのか?」

バックスレーさんがポケットから金印を取り出してテーブルの上に置いた。


「ヴェガの言う様にイーヴェンデルタの資金源になっているから避けてやりたいが依頼を裏切ると敵が増える。」

ジハードは売る方がまし?と言う。


「あっ!!やたら金印を狙っていたのって?政府と戦争を起こす資金源目当てだったんじゃないんですか?」

多分、そうだ。


「鋭いなミナキ。俺もそうだろうと思っていたよ。戦争させようじゃないか。政府が倒れてもエンバスター家が倒れても俺達に影響は無い。」

ボスがニヤっと笑った。


「やるか。戦争に紛れてのシアン奪還。ついでにイーヴェンデルタを囮にしてしまえ。」

ハーミット様もフッと鼻で笑った。


ボスはエンバスター家に連絡を取り裏競売の日程が決定した。

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