第109話獣人

攻撃の飛び火はあるかもしれないが幸いに街の住人は逃げたのか空き家となっている家が多く壊れていない家に勝手に入らせて貰った。


「空き巣みたいやなあ。」

リョウはクスクス笑う。

オーガとリュートは無事に痛めつけて気絶させて来たと言うリョウとバックスレーさん。

流石としか言いようが無い。オーガとリュートは漫画の主人公なのに・・・。


勝手に住人の居ないリビングルームをお借りしてハーミット様はパソコンを起動した。

発信機を付ける余裕。しかもバレて無い。結界内で暴れる最中に背後から付けたらしい。

ハーミット様は鼻歌歌いながら発見!と言った。

「アジト位置は変わってる。此処は山の中だね。」

連絡あると良いなあと言いつつ場所が解ったのである程度安心した様子だ。

「まあ、油断は禁物。政府が見つけるより先にだよね。」

ボスはあと少し待ったら行動しようと言った。


そろそろ出ようかと言う時だった。

ハーミット様の目が大きくと開いた。


「メールだ。用心深いね。」

ハーミット様はそう言いつつ嬉しそうだ。


『アルージャ?念の為に俺と君の出会いを聞きたい。』

ハーミット様はクスっと笑ってメールの返信をした。

直ぐに電話はかかってきた。


「やあ?ゼット?」

懐かしむ様な好きな人の声を久々に聞くと言うようなこんな表情のハーミット様を見るのは初めてかも。


「助けに来たと言うのはちょっとついでだな。多分、俺が君に聞きたい事と政府が獣人を亡きものにしようとしている事柄が一致する。」

ハーミット様は少し苦笑。


「この世界の総帥と大元帥の事を知りたい。政府はその話を抹消する為に君らを消す気だ。うん!そう!」


「今から行く。場所?俺が携帯から位置特定くらい容易いのは知っているだろう?」

クスクス笑うハーミット様。電話口からも笑い声が聞こえた。

電話を切ったハーミット様は皆のニヤついた顔を見てムッとした表情に変わり。


「行くよ!!」

と照れ隠しから睨みつけた。

それを見たボスとシアンが嬉しそうで揶揄いたくて仕方なさそう。


「偵察発動しながら行くやろ?」

リョウが外の様子を確認。

「大丈夫や。もっと市街地で何や戦ってんね?」


細心の注意をしながら山へ向かう。

「ミナキ、念の為にかなり上空から様子を見て。」

ボスに言われて朱雀を飛ばす。


政府異能者達はマフィア集団とバトル中なのが見えた。

「レイとエンジェルが遠くに居るうちは大丈夫や。」

リョウはこのマフィアを倒した後が何処に行くか解らないから急ごうと急かした。


山は最初は山道があったが途中から獣道に入り込んだ。

道という道はない。

途中、数メートルの川を飛び越えたり崖を登ったりして辿り着いた。

本当に異能者じゃなかったら来られない様な場所に木造建築のログハウスの様な家が建っていた。


「これは普通に見つからないね。」

「上空からも見えないな。」

ボスと元締めが空を見上げる。

樹齢数千年?と言える大木。御神木と言える様な木が上手く家を隠していた。


ドアをノックした。

「何者だ?!」

中から男性の声が聞こえた。


「ゼットの知人のアルージャと仲間。」

ハーミット様がそう答えると静かに扉が開いた。


本当にログハウスの様な造りの家。中のテーブルや椅子等も同じ素材。

10人くらいの男性が迎えてくれた。

視線を感じて見上げると吹き抜けの2階には女性や子供達が居た。さっき助けた女性も居た。

子供の中にはケモ耳っ子!!!可愛すぎる!まだ人の姿に慣れないのかな?


「アルージャ?」

1人の背の高いがっしりした男性が話しかけて来た。身長はシアンと同じくらいある。髪は青みがかった黒。瞳も紺色?っぽい。イケメンだ。

「ゼット?老けたねー!」

ハーミット様は嬉しい癖にそんな憎まれ口を叩きながらニコニコと微笑んだ。


「老けたのはお互い様だろ?大人になったんだよ!」

「そうとも言う。あー。お久しぶりです。」

ハーミット様はゼットより年上の方々に挨拶をした。


「君らは?異世界人だろ?敵では無いのか?」

リョウと俺はそう見られるんだろうなあ。味方ですとしっかりと宣言しといた。


「大勢で押し掛けてすまない。本来なら手土産くらい用意したんだが何せ戦争の情報が入ってしまってね。」

ハーミット様は頭を下げて俺達の事を紹介してくれた。

取り敢えずと木製のベンチに腰掛ける様に促されたので座った。


「戦争が起きた原因は獣人化を人に見られたと言う噂だが?」

ボスがそう聞いた。


ゼットは大きく溜息をついて話を始めた。

「少し前に政府管轄国プエル・トリコに大人数のマフィアが攻めて行ったんだ。」

それは・・・。エンバスターの子飼いでは無い方のマフィア達か。


「事件は早々に鎮火したんだがその戦いのせいで警備が手薄になってね。プエル・トリコのダークネスってマフィアの隠れ残党が数名が脱国してこの国に・・・。」


ダークネスって聞き覚えがあるかも。漫画に出てた?


「まだ彼奴らの生き残りおったんか。強い奴らやもんなあ。Aランク、Sランク異能者やないと勝てへんよ?」

とリョウは俺達に教えてくれた。


「ダークネスファミリーのアソクとイルーズって奴を中心にエクア・ドルに住み着こうとして暴れ回って。」

彼等が強過ぎて獣人化してしまったと言う話だった。


「ヴァルヴァラが常駐してたんじゃないのか?何故、生き残りが居たんだ!?」

ジハードが不機嫌そうな顔でリョウを見た。


「知らんわ。多分・・。あのガキは従者にしたいとか考えてたんちゃう?」

とリョウは苦笑い。


まあ、全てはエンバスター達が悪いんだろうけれど。

その被害がこの国にもか。


「ダークネスファミリーは一先ず置いといて。問題は政府だね。ゼット。総帥と大元帥の話を知ってる限り聞きたい。」

ハーミット様は本題へ話を戻す。


「秘密か。伝わっている話で良いんだよね?」

ゼットはそう言って話を始めた。

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