第6話ハーミット
チラリと寝ているナナシを見る。
さてと。確認するか。
立ち上がりベッドの横に移動した。
殺しに来た訳では無い。
異能の確認。
ボスは相手を見ただけで異能の名前や特徴まで解る。
俺は残念ながら少し力を発動させないとそこまで解らない。能力の差と言うかジャンルの違いと言うか。
異能発動したらシアンが飛んで来そうだがまあ、良い。
ボスが言っていた事を確かめたくて1週間待てなかった。
――
ナナシに右手を翳し確認した。
「はは。本当だ。レアだねぇ。」
これは面白い奴を拾ったものだ。
バタン!!来るかとは思ったが本当に出て来た。
「何しているんだい?そいつは俺の獲物なんだけど?」
全裸のシアンに苦笑する。
「クククっ。おっと失礼。全裸姿に笑えてしまった。獲物?これは皆の共有者だよ?」
此奴、ナナシを殺す気で居るのか?
困った性癖だ。ボスは此奴の異能と殺人鬼としての身体能力を使えると言ってCaprice《カプリス》にスカウトしたが。なかなかの問題児。
こんなに便利そうな異能者を殺させる訳にはいかない。
「此奴の異能を確認しただけだ。しかし、お前が此奴を殺す気があるなら奪うよ。」
少しだけ殺気を放つと全裸のシアンも殺気を放って来た。
「うわぁぁぁぁ!!何?今度は誰?!」
ん?飛び起きて臨戦態勢を取るナナシ。
へえ?意外に出来る奴だ。
「げっ!全裸だし!!服着ろよ!それに貴方は?アジトに居た人?」
此方の殺気をぶち壊す様な発言に笑えてきた。
「フフ。そう。ちょっと君の異能を確認しに来たんだ。」
殺気を鎮めてそう答えた。
シアンも俺に合わせて殺気を鎮めちょっとした誤解からのトラブルさ?と笑って彼にそう言う。
「そうなの?頼むから殺気放つとかやめてくれ。心臓に悪い。」
ムスっとしたナナシの顔をシアンは嬉しそうに眺めていた。
殺す気は・・今は無さそうだ。
恐らく対等に戦えるまで手は出さない感じかな。
シアンは政府や警察の異能者には容赦ないがそれ以外には敵意次第で無作為に殺す事は少ない。
そこは俺と似ている。
・・・・・・・・・・・・・・
あー。もう本当に心臓に悪い世界だよ。
何か一触即発の場面が落ち着いたのかな?
仲間割れ?勘弁して欲しい。
「あの。もうお2人は喧嘩は大丈夫なんですか?」
出来れば全裸のシアンは見たくないのでもう1人のメンバー?に話しかけた。
彼は黙って頷いた。
「風呂入ってくるよ。ハーミット。次に異能発動したら容赦しないから。」
異能発動?俺の能力を調べるとか言ってた。そう言う能力なのか。
「名前、勝手にバラしたね。」
ハーミットと言う男性は苦笑して全裸のシアンが風呂に行くのを確認して座った。
「まあ、起きたのなら座りなよ。」
そう言われて大人しく座った。
あっ。テレビあってる。そうか。そういう所も変わらない世界なんだな。
「あの。ハーミットさん?」
「・・・・何?」
やっぱりハーミットって名前は本当なのか。えーと仮のアジトで待ってた4人の1人だな。
黒ずくめのマント姿が
暗めの茶髪に目も同じ色。身長は俺と同じくらいかな。あのメンバーは怖い系が多かったけどこの人優しそうな感じでカッコいい。
「で?何?」
見詰めまくってしまった・・。焦る。
「あの。俺の異能って何ですか?」
すみませんと謝って尋ねる。
「結界。それも物理も魔法も跳ね返すタイプ。それと、まだ目覚めていない能力があるね?」
まだあるんだ!!ちょっと嬉しくなった。
「嬉しそうだねぇ。俺達も嬉しいよ。君の様な特異な異能者ってレアだし。」
とくい?ん?レアなの?
「君の結界は自分は護れない。発動条件は仲間を護る事。認識は君自身の根底が仲間と認めた者かな?」
自分を護れない?
目をパチパチさせて顔が引き攣る。
え?シアンやこの人達は仲間なの?
「異能名は
「都合のいい・・?」
ハーミットはクスクスと笑いながら手を伸ばし俺の頬に触れた。
「逃がさないよ。政府や警察には渡さない。」
その目は優しさの欠片も無くて冷酷でシアンと同じ目付きだ。
「正直言います。シアンから聞いた話だと政府と警察は怖いと思いました。でも、貴方達も怖いです。」
ハーミットはそうか。なるほどと頷いた。
「政府、警察の他にマフィアって言うのがこの世界には居る。俺達はマフィア寄りだが徒党は組んで居ない。メンバーは常に10人前後で小規模。」
俺を信用したのか引き込みたいのかハーミットは語り出した。
「チーム?そういう感じかな。怪盗異能集団
カプリス・・・・。何か記憶に引っかかる。
知ってる?
知ってる単語なの?いや?なんだ?
「カプリスって言うのは気まぐれって意味ね。気まぐれ怪盗団?神出鬼没と言われているけれど。本当に気まぐれで盗みや殺しをしているだけ。」
楽しそうだろ?とハーミットは笑う。
「うーん。解らないです。」
盗みかぁ。
でも、話の感じでは異能者って平和には暮らせなさそうだ。
「怖いと言うが。怖くもなる。それがこの世界。」
ハーミットの目に引き込まれそうになる。
この人達は置かれた立場を楽しんで生きている。
自分の事はまだ思い出せない。だけど俺はフリーターだった気がする。アルバイトの制服って言う記憶はあったし。
きっと政府や警察って言う縛られた機関は向いてないかもしれないな。
「何となく解った気がします。この世界や生き方って言うか。しかし!!」
「俺の異能のネーミングって。センス無い!」
苦笑するとハーミットはプッと吹き出してゲラゲラ笑いだした。
「ボスってそういう所あるから。でもピッタリだろ?仲間にとって都合のいい男だよ?」
確かにそうかも。
自分を護る異能や戦える異能がまだ目覚めて居ない異能なのを祈るばかりだ。
ハーミットと話しているとまたも睡魔が襲ってくる。
「また、お眠かい?」
風呂から上がってきたシアンが頭をフワリと優しく撫でてくる。
何故か心地良い。
「本当は俺も風呂に入りたいんだけど・・。」
もう、詰まらない授業中の様に船漕ぎ中。
うつらうつら・・・。
「ソファ借りる。俺も泊まる。」
ハーミットがそう言っているのは何か覚えているのだがまた深い眠りに入っていった。
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