第111話熱の異能者

「知ってる?42℃以上体温上がると人って簡単に倒れるし。死ぬんだよ。」

エンジェルがニヤっと笑った。


殺気を帯びた熱風は更に暑さを増した。エンジェルの身体から発せられている。


「この結界から出たらアウトやで。一気に人の体温を上げてくるわ。はっきり言うて彼奴は本間にタチ悪い。」

リョウの顔は戦闘態勢。


「ミナキ、リョウ少しだけ我慢しろ。」

ボスがそう言うとザザっと久しぶりに耳に雑音が走った。

作戦か。リョウにはこっそり説明する。


「おもろい異能や。俺達も作戦しよか。この結界やったら直ぐに破られるで。」

「だろうね。ちゃんと攻撃に合わせる。」


「ちょっとエンジェルと先に手合わせみせたるわ。ミナキ、本間に熱波は死ぬで。護りや。」

こりゃ全力だろうなあ。



「ミナキは四神結界。リョウは好きに攻撃して。」

ボス達の作戦は纏まった。まあ、リョウはそうなるよね。


――四神結界――


「ふーん?リョウちん、戦う気満々なんだ?そいつら獣人だよね?護る必要あるの?」

エンジェルは天使の様な微笑みを見せた。

両手が赤く光って


――熱波殺ヒートウェーブ――


ゴオォォ!!と激しい熱波が。結界内でも熱い!!!

これ受けてたら本当にヤバいやつ!


俺の背後でシャン!!シャンシャン!と音が鳴った。


――転移――


元締めは女性獣人と子供、年配の男性の獣人を連れて転移させた。考えたな。戦闘がしやすくなった。


「流石、ボス。」

残った獣人はゼットを含めて5人。


「さあ?全力で殺ろうか?」


カプリスと獣人5人。


「えーか?見とけや!当たると本間にヤバいからな!」

見本やで?と勢い良くリョウが結界から飛び出した。


――熱殺――


リョウは避けながらエンジェルに蹴りを入れたが

「熱っちぃ!」

蹴りを入れた部分の服が溶けて穴が開いていた。うわぁ!!そうなるんだ!


「リョウちん。学習能力ないよね?」

クスクス笑いながらエンジェルが体術を仕掛ける。当たると火傷・・・。

「学習能力あるわ!これはこーなるって皆に見せてるんや!バーカ!」

リョウは剣を振るう。エンジェルはガシッと受けた。

「お前と殺る時は体術は向いてない?やろ?」


リョウはエンジェルの攻撃を避けて後ろに下がった。


「じゃあ?これは?」

ラズの凍気が辺りに立ち込める。

凄く中和して涼しくなった。



「氷かよ?」

エンジェルが苦笑い。


「そして俺達も?」

ラズの背後からハーミット様とバニラさんが駆け寄り先に仕掛けた。


――節制テンパランス――


――異能初期化デフォルト――


「からの~。」

――縮小自在リダクション――


ディードも異能発動。エンジェルの剣が一回り小さくなった。


「そして、俺も~。」


――重力操作グラビティ――


ジハードの重力操作。見事なる連携プレーで全ての異能が上手く発動した。


「追加ね♪」


――拘束――


シアンの拘束も決まった!!

ラズの凍気が全て盾になり全員の攻撃が効いた!


「貴様ら!!ふざけるなー!!!」

エンジェルが叫び全て掛けられた異能を解こうとした瞬間。


――氷の墓石アイスグレイブ――


熱風を押し退けエンジェルの足元が氷始めた。

ピシッ!!


「行くぞー!」


結界内に居たウェンの気が物凄く増長した。


――音速の光弾ソニックバレット――


光弾は見事に命中して熱気が引いてエンジェルが吹き飛ばされる。


「やったか!?」

ラズは凍気は消さずに確認する。


「ラズ!まだだ!」

ボスに言われてラズはチッと舌打ちした。背後のウェンも舌打ち・・。

ムカつくのは良く解る。


これだけやっても生きてるし。


「じゃあ。私の出番ね。」

攻撃第2弾!とエルーカさんが異能発動。


――想像と創造イマジネーション&クリエーション――


「行ってらっしゃい。」

ゼット達に武器を作成していく。


これは?!手甲鉤てっこうかぎか。手に嵌める鉤爪の様な武器だ。


獣人達の動きはかなり速いと思っていたがエンジェルの動きはエグい・・・。


「ほらほら獣人の姿を見せてよ。見たいなあ。」

エンジェルに言われて攻撃を受けて火傷をしても彼等は頑なに異能を使おうとしない。


「変身しないのかな?」

そう聞くとハーミット様が

「今回、こんな事態になったのは強敵相手だったからと不用意に変身したからだ。彼等はプライド高いからね?自粛してるのかな。」

とちょっと切なそうな顔をして言った。


「思ったより強いね。闇雲に集団で襲いかかると一気に熱波が来るから小出しにしてるんだけど。そろそろ殺る?バックスレー。アルージャ。」

「そうだな。」

「たまには真面目にね?」

ボスとバックスレーさんとハーミット様。

勿論ボスは地獄の大鎌を装備。


3人は獣人達の間を縫う様に3方向へ散った。


熱風を受けた獣人をラズが軽く凍らせる。

上手いこと体温は上がらずに全員無事。


「ゼット。俺達も強いから任せて。」

ハーミット様がニヤっと微笑む。



「カプリス如きが何人来ようと敵では無いしー!」

エンジェルの異能でまた一帯の気温が上がった。


――熱波斬殺ヒートウェーブデス――


先程とは比較にならない熱風の鎌鼬がボス達を襲う。


「クソっ!!」

避けても追ってくる。

拉致があかない。


いけるよね・・・。俺もやらなきゃ!!


「行くよ!!青龍・白虎・朱雀・玄武・匂陳・帝台・文王・三台・玉女!!」


――九芒星鉄壁ノナグラム――


熱波を全て鉄壁で受け止めて無効化。


九神解除。

今回は倒れずに済みそう。


「サンキュ!」

ボスが勢い良く駆けて行く。


エンジェルと対峙し大鎌を振るう。


「さーいーきょーうー!!キーック!!」

まさに不意打ちとも言える速さでバックスレーさんの飛び蹴りが横から炸裂してエンジェルは吹き飛んだ。


「はーい。お待たせ。」

その飛んだ所に計算した様にハーミット様が居た。

ザシュッ!!

背中に斬りつける。


「じゃあラストの良い所貰うね?」


――地獄の大鎌ヘルサイス――


エンジェルの胸に大鎌が刺さった。


「地獄に落ちな天使ちゃん。」


断末魔の叫び声と共に黒焦げの影だけが地面に残った。


すげぇ!勝った!!


「俺、全然活躍してないやんけー!」

とリョウが1人いじける。


安堵と共に皆に笑顔が戻った。

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