第84話利用する
裏競売の後、駆除屋に寄る事にした。
元締めも含めて聞いた事の詳細を語った。
そして、俺は今、海誠先生の部屋の前に転移して来た。
そう、これは話し合いの結果。
利用できる全てを駆使しないとジ・バングの政府本拠地での戦闘はハイリスクと判断したからだ。
1つ俺は思い当たった事がある。漫画でカプリスは描かれて居ないだけでプエル・トリコに行ったんじゃないか?と言う説だ。
その間にエンバスター達はジ・バング決戦の末、敗北。
そして、カプリスはプエル・トリコでヴァルヴァラによってシアンは捕まる。
と言うのが当初の未来だったのかもしれない。
少し、俺が来た事で食い違ってしまったのかも。あくまで仮定だけど。
さて、シアン奪還作戦の情報収集。俺は海誠先生担当。電話をかけて直接会う事にした。
場所は解って居たがそう言う事はバレてはいけないので住所を聞き元締めに転移させて貰った。
もしもの為に近くにウェンとハーミット様が外には待機。そして盗聴器が俺のポケットに入っていてハーミット様に筒抜け。変な話は出来ない。
ピンポン。インターホンを鳴らす。
扉が開いて中から海誠先生が出て来た。
入ってと言われ中へお邪魔する。
部屋は1LDKだけど少し広めの作りだった。
「まさか、ジ・バングに来ているとはね。また会えて嬉しいよ。」
海誠先生はどうぞと座るように促した。
「偵察です。でも中々上手くは行かないですね。」
偵察かあ。難しいだろうねーと言いつつ何か飲む?と聞かれて少し迷った。睡眠薬とか盛られないよね・・?
俺も疑い深くなっている。
「何でも良いです。」
「そういう所!日本人的で懐かしいなあ。あー。俺は早く元の世界に帰りたいよ。」
海誠先生は冷蔵庫から炭酸飲料のペットボトルを出してそのままくれた。
「やっぱり若いとこう言う方が良いでしょ?」
「そうですね。炭酸好きです。」
海誠先生も似たような炭酸飲料を取り出した。珈琲も飲むけど入れるの面倒くさいんだと言われてちょっと笑ってしまった。
「少しは信用してくれたのかな?それともシアン君の為かな?」
海誠先生がそう聞いた。
「正直、両方です。先生のファンなので最初から本当は信用したかった。でも、怖かったんです。」
「俺も。逆の立場だったらそう言う反応したかな。最近、君の話を聞いてから何が正義か解らなくなって困っているよ。」
海誠先生は苦笑して炭酸飲料を飲んだ。
「お互い。フェアな情報提供で良いかな?」
俺は頷いた。
「先生のファンで幹部って言っていた方って
探る事のひとつ。御厨亨は元帥なのか。
「違うよ。御厨さんって方には会ったことは無いんだ。政府の組織図のナンバー3が御厨さんって方。」
あっさりと話してくれた。
「俺のファンって人は・・。」
海誠先生は口を噤んだ。
「見返りは何を教えてくれる?何か近いうちにまたネタがある?」
そうだろうなあ。
ボスは兎に角、シアンとヴァルヴァラの話を聞き出せと言った。
俺達はエンバスター家のネタを売る。詳細は相手の出方次第。
「めちゃくちゃデカいネタがあります。」
「期待して良い?」
俺は頷いた。
「俺のファンって人はSSクラス異能者。政府は異能者のランク付けをしていてね?」と語り出す。
SS?!!ヴァルヴァラより強いって奴が居るのか?!
「名前は
海誠先生は嬉しそうに語った。俺としてはSSランクを知りたいんだが。
「あのー。SSランクの異能者って強いんですよね?何人居るんですか?」
「そりゃ強い。正確には特殊異能者がSSランクらしい。榎津さん、御厨さんとカペルさん?そうそう。カペルさんが1番最初に召喚された異能者らしい。」
カペルさん?エメリヒ大元帥の事であってる?聞くか迷う。
それとも総帥?
聞いてしまえ。
「総帥?大元帥?元帥?政府ってそう言うのありますよね?」
「大元帥がカペルさん、元帥が御厨さん。榎津さんは幹部で御厨さんの下についてる。総帥はこの世界生まれの異能者。」
ほほう。
海誠先生はお喋り好きなんだろうなあ。
結構、話してくれる。でも、そろそろ俺の情報を知りたがっている風だ。
「ミナキ君の情報プリーズ。」
ですよねー。
「戦争が起きそうです。」
海誠先生の顔色が変わった。
「マフィアが反乱計画を立ててます。俺達は参加しません。でも、そのゴタゴタに紛れてシアンを助けたい。」
「ありゃまあ。そりゃ
海誠先生は召喚された異能者の方が強いって解っているよね?と俺に言った。
「反乱は他のマフィアがする事だから。」
詳細はまだ伏せるべき。カードは出し惜しみしろとボスに言われた。
「そうだろけれど。俺としては君の話を聞いてからこの世界生まれの異能者が気の毒に思えてさ。無駄死にさせたくないって。甘いよなあ。オイシイネタなのに。」
頭をポリポリ掻きながら海誠先生は大きな溜息をつく。
「どうしてもシアンを助けたいんです。」
参ったなあと海誠先生は項垂れた。
「先生。シアンを助ける方法ってヴァルヴァラを殺す以外の方法ってあると思いますか?」
「君も?悩んでいるの?俺達の世界から来た人を殺す事・・・。」
そう言われて小さく頷いた。
ちょっと待ってね。海誠先生は立ち上がって紙にサラサラっと書いてくれた。
「誰かハッキング出来る人が仲間に居たら良いんだけれど。出来なくても途中までは閲覧出来るからさ。」
海誠先生に渡されたのはIDとパスワード?
「政府のホームページの・・・ここから入って。その後はここをクリック。」
わかり易く絵を描いてくれる。
そしたらIDとパスワードを入れる画面が出るからそしたら
「異能者の管理方法とかの裏事情が載ってる。これはオーガのIDだからAランクまでしか見られない。コンビを組む時に利用するらしいんだ。」
俺の異能って記憶だから俺の前でパスワードとか打ち込んだら全部記憶しちゃうんだよね。と先生は苦笑した。
「何で?これを俺なんかに・・。」
ハッキングしなくてもAランク異能者まで閲覧しかも裏事情が解るって。ハーミット様のハッキングでも解らなかったネタだ。
これが?闇の正体?
「君と同じさ。この世界の異能者と転移異能者が殺し合う事への・・何と言うか違和感?」
「それは俺もずっと思ってました。」
お互い顔を見合わせて苦笑いした。
「榎津さんはね。召喚転移システムを作った人なんだ。だから本当は元の世界に帰れるんだよ。でも、カペル大元帥が許さないらしい。俺は特例。」
昔は総帥の異能で異世界転移召喚をしていた。それを機械と異能の融合で効率の良いシステムを作った。
御厨さんの脳内チップも統率を取る為、逆らわない為に開発。
「カペルさんだけは異能が不明なんだよね。ねえ?カプリスで総帥とカペルさんを殺せたら・・・。この世界は平和にならないかな?」
海誠先生は真面目な顔でそう言ったが。
「ごめん。忘れて。流石に強いだろうし。無茶言った。」
と慌てて謝ってきた。
「先生もこの世界の平和を望んでいるのが解って嬉しいです。じゃあ、マフィアの戦争の詳細を話しますね。」
ここまで教えて貰えたらフェアだろう。
「ストップ!!話さなくて良い。」
先生は首を横に振る。
「マフィアには自由に攻撃させよう。俺は出動命令が来たら行くだけさ。知らなくて良い。死人は少ない方が良いんだ。」
「先生・・・。良いんですか?」
確認したが言わなくて良いと言った。
「ミナキ君、無理せずにね。必ず生き抜いてくれよ。」
海誠先生の言葉が身に染みる。
「ありがとうございます。」
「お礼言われる事なんてしてないよ。俺が強かったらシアン君の奪還に協力するんだけど。」
記憶力と攻撃に当たらない異能しかないんだ。と紛れる異能の話もしてくれた。
「もし、シアン君に会う機会があったら連絡するよ。」
「宜しくお願いします。」
俺は何度もお礼を言って海誠先生の部屋を出た。
ここまで、話してくれた先生には申し訳ないけれど。盗聴器しかけました。ごめんなさい。
信用しているんです。
でも、カプリスの全員の信頼はまだ得られて居ない。
そこは、異世界人だから仕方が無いんだろうな。先生が皆に信用されると良いと思いながらウェンとハーミット様の元へ。
「お帰り。」
「良い仕事だったね。IDとパスワード。」
ハーミット様にIDとパスワードの紙と先生が描いてくれた絵を渡した。
駆除屋に転移しハーミット様は早速検索に取り掛かった。
先生をその間も盗聴していたが何も無かった。
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