第136話ゼットが変!?

「お疲れ様。今日はどうだった?俺は疲れまくりだよ。」

珈琲でも入れるかとキッチンに立ちお湯を沸かす。

インスタントコーヒーでも良いかな。

マグカップで多めに作ろう。

改めてハッキングもしたいし。インスタントでも充分に良い香り。

ゼットの分も入れてっと。


ん?ゼット?


「アルージャ・・。」

え?!気配消えたと思ったら!


ゼットが!!突然のバックハグ!??


背後から俺を抱き締める腕。


ギュッとキツく俺を抱き締めてくる。

あっ。ゼットの匂いがして胸が高鳴る。


って、何?

「ゼット?どうした?」


めちゃくちゃドキドキしてる。

絶対、顔も赤い。


何が起きているんだ?

俺の脳内は現在パニック中です。


「アルージャ。ごめん。ちょっと我慢して?」

「え?」

首筋にチュッとキスされた。


「あっっ・・・。」

ゾクゾクするぅ・・。


チュッ。


あっ。また・・。抱き締められていなければ立って居られなくなりそうだ。


突然?発情したの?


え?俺で良いの?


「アルージャ。ごめん。」

そのごめんって何だよ?


「あっ。また・・・。」

ゼットはまた俺の首筋へキスをした。


そして・・・・・・。


ガブッッッ!!!


え?


鈍痛が・・・。


「いっっってぇーーー!!!!」


「痛い!痛い!痛い痛い痛い!!!

思いっきりゼットを振り払った。


「噛み付いた?!どうした!ゼット!」

首の後ろを思いっきり噛まれた。


「だから。ごめんって先に謝ったよ。」

「噛むとは聞いてない。いや、別にお前になら噛まれても良いんだけど。」

えーと・・・。


仕舞った!せっかくの良い雰囲気をぶち壊してしまったのか俺・・。


見詰めたあったまま沈黙が流れた。


「うん!良かった!戻ったね!」

ゼットの言っている意味が全く解らない。


「アルージャ。軽く洗脳されてたよ?ハッキングのせいかな?」

「え?!」

全く思い当たる感覚が無い。


「多分、誰も気づかないと思うよ。僅かな匂いの変化と瞳孔の大きさかな?」

ゼットにそう言われて思わず自分の匂いを嗅いでみた。

瞳孔?瞼を押さえてみたり。


「いや、もう洗脳解けてるから。」

ゼットがクスクスと笑った。


「解くために噛んだの?」

首の後ろを擦る。歯型残ってるし血も少し出てるよ。


「そう。急な痛みや刺激で軽い洗脳は解けるって昔、教わった事があって。」

「・・・。そうか。」

あー!もー!めちゃくちゃ期待したのに。


「ごめん。ちょっと躊躇しちゃって直ぐに噛めなくて。うん。」

ゼットの顔は何だか照れていて。こっちまで恥ずかしくなる。

「うん。いや、別に良いんだけど。」

良くないけど。良い。


「待て、俺が洗脳されているということはウェンも!?下手したらミナキも?」

「あっ。一緒に行ったのか。普段の匂いが良く解らないから区別が付かなかったけど。」

おいおい。機械になっても洗脳の能力が残っていたのか?


「ウェンにいやミナキに電話してみるよ。」


電話出ない。お楽しみ中か?でも、心配だ。


「ゼット!ウェンの部屋に行く!着いて来い!」

エッチの最中だったら深く謝ろう。


ウェンの部屋のインターホンを鳴らす。

出ない。

チッ!ピッキングするしかないな。


「アルージャ、相変わらず凄いね。」

「普通。ゼットもピッキング覚えたら楽だよ。」


さて、目の毒では有りませんように。


そっと扉を開けた。


「ウェン!ミナキ!入るぞ!!」


部屋は静かだった。

エッチ中なら喘ぎ声くらい聞こえそうだが。


「ハーミット様!ちょっと助けて!」

ミナキの叫び声が聞こえて急いで中へ駆け込んだ。


リビングでミナキに剣を向けるウェンの姿があった。

まじか・・・。


「おい!ウェン!」


「何?邪魔しないで。」

冷酷な目。おいおい。それは俺達やミナキに向ける目じゃないぞ。


「急にウェンがおかしくなったんだ!」

ミナキは正常なのかな。


もう何から何まで疑わしくなる。

「恐いだろ?ウェンの匂いおかしい。さっきは解らなかった。」

ゼットが悲しそうな声でそう言った。


急な痛みや刺激か。相手はウェンだしな。

剣持ってるし。


「ミナキを殺して俺も死ぬ。ミナキを元の世界には帰さない。」


「だから!!帰らないって言ってるだろ!ウェン!!!もう!」

傍から見たらヤンデレの痴話喧嘩みたいだけど。


違うのが問題だ。


「ゼット。」

目で合図。


幸い直ぐに刺しそうな感じじゃなくて殺気も出てない。多分、ウェン自身が抵抗してる気がする。


ウェンの背後から腕を羽交い締めで捕まえた。

「アルージャ!離せ!!」

「離すか!バカ!」


ゼットが捕まえたウェンの肩に思いっきり噛み付いた。

「いったぁぁ!!何!?ゼット?!」


フッとウェンの表情が変わった。

目の感じとか。あぁ。本当だ。違う。


「わー。血が出てる。ん?え?」

本当に洗脳されてたな。


「ごめんね。洗脳されてたんだ。」

ゼットがすまなさそうな顔でウェンに謝った。


「あぁ。やっぱり!」

ミナキは察していたのかホッとした顔をした。

「潜入から帰ってきてからウェンがずっと変だったから。」

ミナキはウェンの傍に寄って傷にそっと触れた。


「治すね。」

ウェンの肩の傷が癒えていく。


傷が癒えたウェンはヘナヘナとその場に座りこんだ。

「俺、ミナキを・・・。」

ウェンの目には涙が潤んでいて。俺、こんなウェンは初めて見たかも。


「ごめん。ミナキ。本当にごめん。」

「大丈夫。不安に付け込まれたんだよね。洗脳って恐いね。」

そっとミナキはウェンを抱き締めて頭を優しく撫でた。


「総帥の洗脳か。いや・・。映像だけど俺達はエメリヒを見た。」

まさか?いやそのまさか?


何だよ。その異能力の強さ。


「ミナキは大丈夫?」

ゼットに確認。ゼットはクンクンとミナキの匂いを嗅いで大丈夫だと言った。


やっぱり人間より遥かに嗅覚が優れているから解るそうだ。

匂いは俺には解らなかった。


目は少し解った。


「軽い洗脳はこれで大丈夫。本格的なのは時間がかかる。」

ゼットが居てくれて良かった。


「多分、今日話した何かが間違いだと思う。ごめんね。上手く言えない。」

ゼットは難しい顔でうん!と勝手に納得して頷いている。


「ありがと。一先ず良かった。多分、俺はミスリードした。少し考えないと。」

何が正解で間違いなのか。


「ウェンの洗脳は不安に付け込まれたのか。それとも総帥が召喚したミナキがエメリヒにとって邪魔なのか。」

またしても悩める事態だ。


「ゼット、ありがとう。」

「俺も同じく助かった。」

ウェンと2人でひたすらゼットに感謝。


明日、もう一度、ボスと話し合う事を決めて今日の所は部屋に戻る事にした。

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