第99話次の日

ここ何処?

瞼がまだ重い。身体も怠くて・・・。

ん?右手だけ温かい。左腕にこれは点滴だ。そっか病院か。

俺、重症だったんだな。


右手をそっと握る。ウェンの手?


「ミナキ!」

ウェンは俺の手を握って寝てたみたいでガバッと顔を上げた。

「ウェン・・・。良かった。無事で。」


本当にカプリスを護れたんだ。本当に良かった。

あの時、限界2分に加えて玄武まで使った俺は完全にダウンした。意識が飛ぶのが解った。


「ミナキ。本当に心配した。良かった。ミナキが無事で。良かった。」

ウェンの目がうるうるしていて。心配かけたんだなあと思った。

でも、まだ脳が回らなくて瞼が重い。


「ウェン。ごめん。まだキツいし眠い。隣に寝て。」

ベッド狭いけど。少し身体を動かすのもキツい。

ウェンは俺の横に来てまだ泣きながら俺の髪を優しく撫でる。

その手が優しくて気持ち良くて俺はまた眠りについた。



・・・・・・・・・・・・


駆除屋の医療班だったのかと言うのは起きて解った。


朝から検温や血圧計られて。

浄化するのでそのままオシッコしてくださいと言われた時には衝撃を受けた・・・。

「いや、この年で漏らすのはちょっと無理。」

でも、トイレ行きたい。

だけど身体が重くて動けなくて。手足もまだ重い。何だこの身体・・・。


と言う事でウェンに尿瓶で取って貰った。恥ずかし過ぎて泣きそう。

「気にするな。何時も見てるし。」

いや、ウェンそれとこれとはちょっと違うんだあー!


「少し食事出来ますか?」

男性医師がそう聞く。


「お腹空いて無いですね。」

医師は少し考えてちょっと何か持ってきますね。と言って出ていった。


「ウェンは?お腹空いて無い?」

「後でで大丈夫。昨夜は食べた。」

良かった。皆は元締めの自宅に泊まっているらしい。

「ミナキの病気は異能借金なんだって。」

ウェンが説明してくれた。


「ああ。それでか。全く異能が使える気がしなくて。」

四神や神人の姿が見えない。


「はい。これ。美味しいですよ。」

医師が持ってきたのはジュース?

ウェンに起こして貰って1口飲む。


これは。フルーツミックスジュース!

甘くて美味しい。

「少し胃が動き出したら良いのですがね。」


ゴクリと飲むと食道を通って行くのが解る。


飲んでいると部屋の外が騒がしくなった。

「大丈夫かー?」

元気なバックスレーさんの声と共に皆がやって来た。


「おはよう。」

「おはよう。良かった。皆、無事で。」

そう言うとお前が1番無事じゃない!と突っ込まれた。


「やあ。ありがとうね。」

後ろからヒョコっとシアンが顔を出した。


戻ってる!!

「シアン!!良かった!本当に・・・。ずっと俺のせいだって思ってて。」

安心したのと嬉しいのとで涙が溢れる。


「うんうん。本当にありがとう。」

ボスが嬉しそうに俺の頭を撫でる。


「ミナキが1番頑張った!」

「そうよ。ありがとう。」

バニラさんとエルーカさんにも頭を撫でられる。


皆の笑顔が嬉しくて心がホワホワと温かくて身体にも少しずつだけど生命エネルギーみたいな物が流れるのが解る。


ミックスジュースの効果なのか全員に頭を撫でられた効果なのか話をしているうちに手足だけはだいぶ動かせる様に回復した。


「ところで。リョウはカプリスに入るの?」

リョウはうーん?と首を傾げる。


「嘘は言わへん。そやなあ。入りたいねんけど。最終的には俺は元の世界に帰りたいねん。」

リョウの意見にボスも頷いた。

「そうだろうね。記憶も戻ったんだろう?」


「そやねん。嘘偽りない裁きをする裁判官目指して法学部に通っててなあ。」

リョウは大学生だったのか。

裁判官目指してか・・・。本当にそう言うのが異能に反映されるんだな。


「ミナキは帰りたくないの?」

リョウにそう言われた。


「俺はこの世界に居たい。」

ウェンとカプリスとずっと一緒に居たい。


「うーん?少しだけ元の世界に未練あるなあ?」

嘘は少しも付けないんだな。正直ね。親や兄弟や友達は頭を過ぎる事はある。


「闇雲に政府に侵入しても返り討ちに合う。そやから暫くカプリスに置いてくだい。」

リョウはボスに頭を下げた。

「勿論、そのつもりだよ。」

ボスは笑顔で言った。皆も歓迎している。


「新居は何処にしようか?」


「アマル・フィに戻れるかな?」

ジハードが険しい顔をした。


「エンバスター家は取り潰されて関わったマフィアにも政府の手が入るだろうね。」

ハーミット様はアマル・フィは良い所だったんだけどねー?苦笑した。


「エバーステイにしようか?都会だし。」

ジ・パングのお隣。


「あんたら。本間に凄いな。そんな政府の近くに住むんや?」

リョウは驚いた顔をしているが。


「近いからこそAランクやSランク異能者が居ない。」

ハーミット様が説明すると頭良いな!と感心していた。


俺は明日まで入院。

引越しは退院して完全に回復してからとなった。

家探しはハーミット様達がするそうだ。


「俺は側に居るから。」

ウェンは俺の入院に付き合ってくれる。


皆が帰った後、また睡魔が来て倒れ込む様に爆睡。

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