第15章 それぞれの決戦前

第141話ラズの告白

最近・・カプリスでガチで独り身って俺だけじゃないか?

リョウやリュートにオーガはノーマルだから別としてだ。


バニラやエルーカは?

俺達に教える気は無いが遊び相手が居るし。


ウェンとアルージャは絶対、俺より先に恋人が出来るとは思わなかった!!ある意味偏見だけど。


まーじーでー!今、本当に俺だけ?!

バックスレーは社長と怪しいし。


まあ、今まで告白すら出来て居ない俺が悪いんだよな。


俺がカプリスに入った時。

元締めはもう駆除屋を経営していた。


当時、危険察知能力が無かった俺は強引に駆除屋にアルバイトに行け!とボスに送り込まれた。


カッコいい!それが元締めの第一印象。

ボスとは違うタイプの強さと男らしさ。


ミナキの時には駆除屋の駆除人が一緒に仕事に行ったが俺は直々に元締めに教えて貰ったんだったなあ。懐かしい。


しかし、これが恋だと自覚したのはウェンがカプリスに入ってからだ。

好みのタイプって話になった時、俺は元締めの顔しか浮かばなかった。


俺って鈍感。後は極めて戦闘以外は奥手過ぎ。

恋心に気づいてからも何にもアプローチしてない!!

言い訳するならアプローチする機会にも恵まれなかったし。

駆除屋にも行く用事、滅多に無かったもんなあ。



しかし。本日。


奇跡が起きてます。


「風呂先にすまねーな。部屋着まで借りてよ。上がったぞ!」

「あっ!!いやいや。そんな全然!」


俺の部屋に元締めが泊まっている。


「俺は転移出来るから帰っても良かったんだけどなあ?マーシェルの連中も漫画家さんも泊まるとか言い出すからなあ。何かノリで泊まる事になって。急に悪いな。」


無理矢理そう仕向けたのはボスだ。


え?張さんだけ帰るの?何て言って丸め込んだ感がある。

いや、もう本当に俺の為にだと思う。


男、ラズ!此処で何もしないとか無いよな。

「俺も風呂入って来ます!」

「おぅ!何か勝手に飲むぞ?」

勿論、どうぞ!と言って風呂へ向かった。


緊張。


そして、嬉しさと。


フラれる可能性が高いと言う怖さ。


だけど。この決戦で何かあったら・・・。

全員、無事じゃなかったら?


やる前からビビるなってな。


今は目の前の元締めだー!!!


何時もより念入りに身体も洗い。いや、何となく。

風呂から出た。


「風呂上がりました。」

「ふっ。待ってたぜ!」

えっ?何を??!


「これ食って良いか?」

あー。アイス・・。

「はい。俺も食いまーす。」


2人でソファに座ってテレビを見ながらアイスを食べる。

うん!これはこれで幸せだ。


「元締めもアイス好きなんすね?」

「風呂上がりのアイスは美味いよな。」

ですよね。と何かまったりな雰囲気も初体験。普通のチョコの棒アイス。

高級品でも無いけれど美味く感じる。


「・・。元締めって付き合ってる人いるんですか?」

先ずは確認。

「いねーよ。仕事忙しいしなあ。」

ホッとした。


「ラズは?」

うわ!聞かれた!

「俺は・・・居ません。」

ダメだこれ以上は言えねー!


「だろうな?」

と何かニヤっと微笑まれた。

そのニヤっは何?!!


ダメだぁ。普段は怖そうな顔立ちから出る微笑みが可愛過ぎる!!


「俺は。」

関係を壊すかも?


「俺は・・。」

決戦に支障を来すかも?


「いや。何でもないです。」


アイスを食べ終わった元締めが俺の顔を見た。


「俺は異世界人ハーフって話は昔、したよな?」

俺は黙って頷いた。


「張って苗字は勿論、死んだ親父の苗字を使っている。俺が5歳までは生きていたんだ。」

初めて聞いた。そうか、異世界人の父親に育てられたんだ。


「親父は・・俺が産まれる迄は洗脳されていたんだと思う。お袋が死んだショックで洗脳が解けた。確証は無い。だが優しかったし。」

元締めの顔は懐かしそうな顔。


「洗脳が解けた異世界人の末路は再洗脳か死だ。まあ?そう言う訳で俺は5歳から施設やマフィア何かを転々として来たんだ。」


「元締め・・。」

俺は父親の顔は覚えていない。

覚えているのも辛いのかもなあ。


「敵討ちしたいと思っているよ。」

遠くを見る様な鋭い目付きで元締めはボソッと呟いた。


「俺!頑張ります!元締めの事も護ります!」

「なーに言ってんだ?」

元締めはクスクスと笑いながら俺の頭を優しく撫でた。

て・・照れる。顔に出そう。


「顔?赤いぞ?」

出てたー?!

「いや。もう。はい。」

・・・・・・。


「ゆ・・優炎さん。」

「何だ?」

元締めは俺の顔をまじまじと覗き込んだ。


「す・・・す・・き。」

沈黙と目をパチパチとさせて俺を覗き込む顔。

俺は耐えられ無くなって目を逸らした。


「好きか?」

そう聞かれて更に顔が赤くなった気がした。言ってしまった。もう!!戻れない!


俺は静かに頷いた。


元締めは困った顔をしてる。

「そのー。何だ。悪ぃが付き合えねぇ。」

やっぱり・・・。

言わなきゃ良かった。俺みたいなガキじゃやっぱり釣り合わねーよなあ。


恥ずかしい事に涙まで出て来てしまった。

「やべっ!泣くつもりはなくて。すみません!もう忘れて下さい!」


急いで涙を手で拭った。でも、また溢れてくる。

クソ!!

元締めに不快な思いさせたかもと思うと余計に悔しいやら失恋で悲しいやらで頭がごちゃごちゃで。


「あんまり言いかなかったんだけどさ。泣くな。聞け!!」

元締めは少し不愉快そうな声でそう言った。


お・・・怒らせたか。


「付き合うって事はよ?エッチもするだろ?」

元締めはボソリと言った。


「俺は全然良い思い出がねーんだよな。痛えだけだったし。気持ち良くもねーし!ガキの頃した以来やってねーんだよ!!」


「それに。ラズの事は・・なあ?」

怒鳴りながらも元締めの顔が真っ赤で恥ずかしそうで。

俺は涙も止まって逆に萌えた・・・。


キュン・・・。まさにそんな感じ。


「俺!大事にします!優しくします!気持ち良くします!!大好きです!」

本当に。本当に精一杯の気持ち。


何言ってるんだか良く解らなくなっている気がするが。


元締めはそんな俺の顔をチラっと見て笑いを堪える様に肩を震わせていた。

「プッ・・・あははは。ダメだ。すまん。笑ってしまって。」

俺の肩をポンと叩いて嬉しそうに微笑む。


「ありがとよ。精々、俺のトラウマを克服させてくれや。」

「はい!元締め!いや、優炎!」

元締めの手をそっと取った。


「もう1回言います。好きです。付き合って下さい。」


元締めは少しの沈黙の後にフフっと笑って。


「ああ。宜しくな。」


「元締めぇぇー!!」

初めて抱き締めた。

ずっと・・ずっと抱き締めたかった。


「また、泣くなよ。」

元締めは俺の背中を優しく撫でて抱き締め返してくれた。


優炎とまだ呼ぶのも照れるくらいの俺だけど。


絶対!この人を幸せにする!そう心に決めた。


ちなみに本日は賢者モードで。一緒に寝たけど手は出さなかった。


横で無防備に寝てくれる顔を見られただけで今は嬉しい。

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