第46話駆除仕事

転移!!

異世界から来たんだが初体験の様なものだ。


目の前の世界が一瞬にして変わった。

外だ。そして人の気配のない郊外の地に遺体が3体。

自分達の足元には薄い魔法陣が描かれていた。戻るための魔法陣なのだろう。


「5分後に警邏けいら警官到着。急ぐぞ。」

ナーブさんがそう言った。

え?何故解るんだ?!


「基本は気配を無くして動く。殺気は絶対出すな。」

ベックさんに言われて頷く。


「3体なら4人いるし楽勝だよ。さあ、運ぼうか。」

ラズは躊躇無く遺体に触れて抱える。


ぐっっっ!?何か嫌だけど。

決して綺麗な状態じゃ無い。戦闘の後。流血しているし。

意を決して抱えようとしたが

「重たっっ!」

ガタイのいい遺体だ。何キロあるんだよ。


「さっさと持て!引きずってでも運べ。」

「はっ、はい!!」

魔法陣に乗せて遺体は転移させるらしい。

俺が引きずって運ぶ間にラズはもう一体も運び終わった。


「転移。」

ラズがそう言うと遺体と俺達は駆除屋の魔法陣の部屋に戻ってきた。

「急げ、取り敢えず遺体を魔法陣から下ろせ。」

ラズに言われて慌ててまた抱える。


こんなので危険察知能力なんて身に付くの?

疑いたくなる。

「戻るぞ!」

そしてまた元のジ・パング郊外へ転移。


ベックさんとナーブさんは血の付いた地面を掃除中だった。


ベックさんが薬剤撒いて水を放出している。

水の異能だ!血が流れていく。


ナーブさんは

――気化――

と異能を発動。ベックさんの放出した水と撒かれた薬剤が気化して消えていく。


「後1分。」

ベックさんがそう言った時に漸く俺にも解った。

異能者がココに来る。


最後は本当に跡形もなく処理出来たか確認して終了。

魔法陣で元の駆除屋に戻ると言う流れだった。

ちなみに俺は1体引きずって運んだだけだった。


駆除屋に戻るともう遺体は無かった。

「新人。今のが流れだ。」

「1回、元締めの所に戻るぞ。」

ナーブさんとベックさんに言われてラズと大人しくついて行く。


また行く事になるのか着替えはせずにそのまま黒の上下のままだ。

服に付いた血は浄化した。良かった浄化出来る様になっていて。


元締めの部屋にはもう他の人達は居なかった。

「よう。お帰り。」

元締めはニヤっと笑う。


「終わりました。俺達は次の仕事に向かいます。ラズも来い。」

「了解。」

俺だけ部屋に通されてラズは連れて行かれてしまった。


「まあ、座れや。」

2人とかめちゃくちゃ緊張する。

俺は頭を下げてさっき座ったソファに腰掛けた。


「お前の所のボスは何も話していないようだから。話しておくよ。俺は一時期カプリスに居たんだ。当時はボス、アルージャ、バックスレー、ジハードと5人だったよ。」

元締めの発言にかなりびっくりしてしまった。


「俺は護送車からボスに助けて貰いカプリスに勧誘されたんだがな。俺にはやりたい事があった。それがこの駆除屋。その資金のために2回?かな一緒に仕事をした。」

何だかんだで古い付き合いなんだとニヤリと笑う。


「異世界人とのハーフやクォーターは異世界人と同じ様に特殊能力が芽生え易い。俺はこの世界限定の転移能力だ。抜ける時に便利な奴が辞めるとブツブツ言われたけどなあ。」


「凄い能力だと思います!!しかも元締めさんだけじゃなくて誰でも転移出来るとか!!びっくりしました。」

本当に凄い魔法陣。

元締めはだろ?と自慢げに笑った。


「さて。お前に足りない能力。危険察知についてだ。今、お前は気配だけを感じ取っているだろう?それじゃ足りないし発見が遅い。」

元締めは少し考えて


「イメージは鳥だ。それも猛禽類だな。上空から地上を見る。獲物を探す様に。」


それって?イーグルアイとか言うやつだ。一部のアスリートや漫画の世界だと思っていたが確かに敵が何処に居るか見つけるって事か。


意味は解った。しかし、どうやるんだ?これも異能のイメージなんだろうか。


「実はこの異能が出来る奴が政府の人間。出来ない奴が警察官と分けられている。」

まじか。知らなかった。

ああ。それでホテルに海誠先生が居ても大丈夫だとボスとシアンは安心していたんだ。


「だから政府の人間との追いかけっこはキツイ。あれはやるもんじゃねーな。」


「ある意味異能バトルになるんですね。」

俺の言葉に元締めは苦笑して頷いた。


「ラズ、エルーカ、バニラもそこそこ経験値があったがお前は異世界人。危険とは無縁の世界の人間だったんだろ?」

そう言われて頷いた。

元締めはこの異能を身につけるのは難しいだろうなと溜息をついて試しに過酷な仕事をさせてみるかなあ?と何やら怖い事を言っている。


「予約された依頼は比較的安全。殺す場所を選んでいる。問題は突発的な依頼だ。駆除屋の仕事は極秘。警察や政府だけでなく一般人にも見られちゃならねぇ。」

さっきの依頼は予約された依頼だったらしい。


「見られたら殺せ。しかし、原則的に遺体は増やすな。この仕事は殺し屋じゃねぇ。この世界の異能者を守る仕事だ。」


この人は・・。やっている事は犯罪だけれどこの世界に生まれた異能者を政府や警察から護ろうとしているんだ。


本当に色んな事が屈折した世界。


「ちょっと緊急依頼の待機場に案内するよ。試しに着いて行きな。」

元締めは着いてこい。と言い俺は待機場と呼ばれる部屋に案内された。

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