第10章シアン奪還作戦
第88話スパイ海誠先生
「マコトさんも大変ですねー。密着取材とか。俺にも密着取材しますか?」
心にも思っていないくせにそう言うセリフを言うオーガ。クソ生意気なガキだけど一応、俺の漫画の主人公予定。
「是非お願いしたいなあ。オーガのバトルは素晴らしいからね。」
そう言って微笑むと満更でも無い顔をして機嫌が良くなる。
扱い易いと言えばそう。漫画のセオリー的に熱血的な主人公(この場合リュート)に相対するタイプ(オーガ)が相棒って言うのが売れる秘訣だと俺は思っている。
しかし、チップ入って無かったらどんな奴らだったんだろうなって時々思う。
そのせいで友達や親や自分すら関する記憶が殆ど無い。でも、それを不安とは思わない彼等達。勿論、殺しも怖くない。
ミナキ君と接して初めて気づかされた。これが異様だって事。
自分が漫画を書いていたからこういう世界もアリだと思っていた。大人として些か恥ずかしい。
さて、決行日は明日の夜中らしい。怪しまれ無いように昨日からリュートの仕事っぷりを見ているし政府宿舎に泊まっている。
お陰様で政府機関のナンバー4である榎津さんのお気に入り?で漫画家と言う事は知れ渡っており特別居心地も悪くない。
また取材やってるんだなー。程度の扱い。
但し政府異能者オンリーの敷地にはパスが無いと入れず残念ながらシアンの姿はまだ見ていない。
出ても24時間パス(遊園地みたいなイメージ)だろうから申請出すなら明日だな。
牢獄の絵を描きたいから見たいとでも言ってみるか。
政府異能者はやっぱり強いなあ。
体術訓練を見ていてそう思った。そしてリュートとオーガはやっぱり絵になる。
取材の時はスケッチブックとメモノートも一応持ち歩く。
絶対記憶はあるんだが。ただ見ているだけだと格好が付かないと言う理由だけだ。
サラサラとリュートを俺の漫画のタッチで絵を描き仕事しているフリをする。
「流石、上手いですねー。俺、そんなに格好良くないですよー!」
リュートが俺の絵を見て何時もそう言うが君は格好良いと思うんだけどね。オーガも。
翌日。
「今日も宜しく。」
「はーい。何も事件ない時は雑務ばかりですよ?」
リュートはスーツ姿で政府機関異能者らしく弁護士バッチみたいなヤツを付けてすっかり政府機関の異能者になってしまった。
警官の制服の方が良かったな。
俺の漫画では警官のままにしておこうかなあ?そんな考えをしながら。
「あっ。リュート、ちょっと政府異能者しか入れない所を描きたいから許可取って少し描いてくるよ。」
牢獄に行ってみよう。
「あー!良いですね。なかなかこんな時しか見られないですしね。」
リュートは一先ず出勤してきますと部署へ行った。
リュートはまだ過去の事件の書類整理何かをさせられていてバトル系の職務じゃない。
でも、警邏や出張が多いオーガに着いて行く気にはならない・・・。
パス発行してくれる事務所で事情を説明すると直ぐにパスはおりた。
「大変ですね。取材頑張って下さい。」
知らない事務員にも知られている俺。
如何に榎津さんの影響力が強いって言うのが解る。あの人にだけはバレ無いようにしないとな。
幸いにも彼等は特に挨拶を求めたりしない。
政府機関のこのビルの上層階にはAランク異能者でも入る事は出来ないからだ。
この1日パスでも上がれない。
さてと牢獄は別棟なのか。
政府機関のビルは元いた世界で言うなら都庁に似ている。
パスで別棟に入る。
ほほう。初めて入った。何かワクワク。
何か会った時の為に道順は覚えておこう。って見れば覚えるんだが。
ここか。刑務所とはまた違う。これから政府の人間になる元マフィアなどが収監されている牢獄。
弱い奴は殺され使えそうな奴は政府に取り込まれる。
普通の世界じゃないよな。
「失礼します。マコト・ソトメです。取材に来ました。」
警備室の様な所に居た人物に挨拶をするとすんなり通してくれた。
イメージ的には送検される前の警察の牢屋って感じだな。ドラマとかで見るやつ。
囚われている元マフィアは3人か。目が合うとギロっと此方を睨んだ。
肝心のシアンは牢獄看守の制服に身を包み牢獄の奥に足を組んで座って居た。
居た・・・。
接触するか?否か。
監視カメラもあるしな。
ここは見るだけにしておこう。
「少し絵を描きたいんだ。」
そうシアンに断りを入れるとぺこりと頭を下げられた。
イメージ・・・変わったな。
サラサラっと絵は描きあげた。
怪しまれ無いだろう。
最初の警護室にも入らせて貰った。
絵を描きながら見るのは勤務表。シアンの勤務時間は9時迄。間もなく上がりか。
そして0時からまた夜勤。
一瞬で記憶。
良し、余程でない限り彼は此処に居る筈だ。
「上手いですねぇ。」
親しそうに話しかけられ笑顔で対応する。
「あの人って見た事あるんですが。殺人鬼?」
知らないフリで話をする。
「そうですよ。つい最近政府機関に入りました。真面目に働いてますよ。」
彼はそう答えた。
「あの、銀髪の女の子。ヴァルヴァラの従者なんすよ。」
別の奴が軽い口調でペラペラと話し出す。
「そうでしたか。従者って一緒に働く訳では無いのですねー。」
世間話の様に話を進める。
「さあ?知らないっす。」
「ヴァルヴァラは出張中だろ?」
なるほど。それが聞けてラッキー。
今、政府機関に居るSランク異能者は5人。
何とか逃がしてやりたいものだ。
夜になった。宿舎で待つ。
リュートと知らない奴と一緒だ。本来は4人部屋らしい。
寝たフリ。布団の中でシアンはまだジ・パング。ヴァルヴァラは出張らしい。居所不明。返事不要とメールをこっそり打った。
0時。
まだか・・・。0時15分。館内アナウンスが鳴った。
『プエル・トリコに侵入者。人数不明。潜水艇にて上陸。』
第1弾来たか。
『現在、プエル・トリコのSランク異能者はヴァルヴァラ・アルスカヤのみ在中。出動命令。』
誰が行くんだ?
『ハンベルグ・ドナー、ベイク・マスター、アラン・ハーエイトの3名出動して下さい。Aランク異能者はまだ待機して下さい。』
待機か。
布団の中でまたメールを打った。
シアンはまだジ・パング。
出動命令の可能性はあり。返事不要。
これで大丈夫か。後は第2弾のマフィアを待つ。
後は電話。ワンコールか2コール。
「プエル・トリコかあ。行きたかったでしょ?取材。」
アナウンスで起きたリュートが揶揄う様に言ってきた。
「そうだね。でも、リュートが行かないなら行ってもなあ?」
「確かにね。オーガとか行く事になるのかなあ?」
待機と言われ俺達は勿論、宿舎に待機する。
宿舎には結構な人数居るんだよな。
ミナキ君達は大丈夫かな。
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