第171話俺の嫁は殺人鬼

世間一般のプロポーズと言う物を調べて下準備。


まさか、自分がプロポーズをする日が来るとは思わなかった。

女性には全く興味無いし、男性の好みも俺は煩い方だと思う。


シアンは本当に俺の直球ストライクど真ん中。

出会いが戦闘中と言う数奇な出会いをした俺達。

本当にあの時、思い切って声をかけて良かった!!と思う。

自分は素直じゃないし本気で付き合うとか口説くとかした経験が無かったからすっかり遠回りしたが今では良い思い出だ。


さて、明日は2人で休み。

改めてプロポーズをしようと思っている。先ずはデートだな。


そう思いながら今日もシアンを抱いて寝た。


「ん?シアン?」

「寝てて。トイレ。」

まだ明け方か。トイレね。

俺は何も考えずにそのまま2度寝してしまった。


うーん。シアンー。

漸く目が覚めたのは8時だった。寝過ぎた・・。最近、慣れないデスクワークをしてきたせいか疲れていた様だ。


「シアン?」

だいたい何時も7時に起きる。

先に起きたのも気が付か無かった。

いや、気配が無い。


起き上がって寝室を出た。


「コンビニか?」

朝食は買ってあったのに。


ダイニングルームへ移動して冷蔵庫から炭酸水を取り出して飲む。

うーん。

俺に気を使って気配消して出たんだろうなあ。


シアンは何時までたっても帰って来ない。


何処かに行くと言う約束はしていなかったが。勝手に何処に行ったんだか。


待っていたが腹も減ってきたので遅めの朝食をとった。まだ帰らない。


「まさか?仕事?」

有り得る・・・。


最近、バトルさせてなかったし。アイツのことだ。そろそろ殺人鬼の本性が出てウズウズしていたのかもしれない。

「はぁ・・・。」

せめて言って行けよ。


お互い自由人な所はある。俺も大元帥になるまでは割とフラフラと偵察とか出掛けていたし。


昼過ぎ。

まだシアンは帰らない。


もうほぼ確定だな。殺人依頼か警護依頼だろう。


ズルいぞ。俺もたまにはそう言う仕事がしたいのに。


いや、今日はデートがしたかった。


連絡。迷惑だろうな。

メール・・いや。止めておこう。


「あーあ。柄にもない事考えるからかな。」

ソファにふて寝。

普通に婚姻届を出しただけでもシアンなら喜んでサインするだろう。


でも、何故かな。


きちんと言いたい。


夕方になった。完全にサプライズ失敗だ。


1日ぼーっと考え事ばかりしていた。

こんな日も久しぶりだ。


考える事はシアンの事ばかりでアホなくらい好きなんだと自分でも思った。


「しかし!そろそろ帰れよ!」

独り言をブツブツ。


心配かと言うと少しは心配だが。アイツなら大丈夫だとは思う。


20時過ぎに部屋の扉が開いた。


「ただいま。」

何食わぬ顔で帰宅してきたシアン。


思わず立ち上がった。

「何も言わずに!!何処行ってたんだよ!」

今日1日の溜まっていた思いがポロっと口から・・・出てしまった。


シアンは呆気に取られた顔をしている。


しまった。こう言うのシアン嫌いだよな。


「怒ってる?」

「いや、別に。」

そう言うと沈黙が流れた。


「ランジャン。」

座ってとシアンに促されてソファに座った。

非常に気まずい。


「ごめん。急に怒鳴って悪かった。」

溜息をついて謝った。


「いいよ。久々の休日だからゆっくり寝てもらおうかと思ったんだけど。一緒が良かったね。ごめん。」

シアンが・・謝った。

しかも気遣いとか。


「俺が勝手に。休日だし何処か行けたらと考えていただけだから。」

うんうん。とシアンは微笑んで優しく俺の手を握る。


「今日、全部の家を売りに出してきたんだ。」

「家?あぁ。世界各地の殺人拠点か?」

そう言えばエバーステイとか何軒か持っていると言っていたな。


「なんで?」

シアンはフフっと微笑む。


「だって必要無いからね?」

・・・?え?


「これからずっとランジャンと2人で暮らすから。他の家は必要無いよ。」


あっ・・ちょっと俺、感動してる。

「シアン。」


可愛い。可愛い!!!

ギュっと抱き締めた。


「本当にごめん。そして、ありがとう。」

今まで家を売りに出す様子も無かったのに。

何の心境の変化だよ。


今日1日の自分のモヤモヤした変な嫉妬が一気に消えていく。


自分の小物っぷりが恥ずかしいよ。


「シアン。受け取ってくれ。」

予定は少々狂ったが。


今。


言いたいんだ。


「俺と結婚して下さい。」

お揃いの結婚指輪。


「ランジャン・・。」

指輪を見たシアンの綺麗なシアンブルーの瞳が大きく見開いて。


「ありがとう。勿論。ずっと一生、一緒に居て。」

と微笑んだ。


「はめて良い?」

シアンの左手を取る。


左手の薬指。サイズピッタリ。そこの所流石、俺。

サイズは聞かなくても調べなくても解った。


「俺も良いかな?」

今度はシアンが俺にはめてくれた。


「馬鹿だと思ってる?」

実は今更だがちょっと恥ずかしくなってきた。


「全然。」

シアンは首を横に振った。

「嬉しいに決まってる。」

そう言って抱き着いてきた。


可愛い。愛おしい。愛している。


何度キスをしても抱き合っても足りない。


「俺のシアン。」


お前の身体も心も愛してる。


そのままソファで押し倒し脱がせる。

綺麗な割れた腹筋を優しく撫でるとシアンの顔が綻んだ。


「ランジャン。愛してる。」

今日も沢山、したい。


仲直りエッチ?


いやいや俺の勝手な我儘だ。


「今日は婚約記念日。」


そう言ってシアンと肌を重ねた。



・・・・・・・・・・・


「ランジャン?」

おやすみのキスをしたらランジャンはもう寝ついてしまった。


今日も幸せ過ぎる。


指輪・・・。まさか貰うと思わなかったな。

休みの日に家を売りに出そうと思っていたが悪い事をした。

多分、凄い照れくさいプロポーズする予定だったんだよね?

して欲しかったな。本当にごめん。


しかし。お互い、こうなるとはねぇ。


最近、殺人衝動が起きないんだ。


君に満たされているから。


今、思うとあの時ミナキを犯したのは嫉妬だったのかもしれない。


異世界からきたレア異能者。

小さな身体と可愛い顔。

君はミナキに興味津々だった。



何て言ったらウェンに殺されそうだけど。


本当にランジャンの全てが欲しかったんだな。

そんな事もあの時は解らなかった。


お互い長い長い遠回り。


これからも君だけを愛していくよ。


俺のランジャン・・・。


まあ、満たされなくなったらまた殺人鬼に戻るよ?

そんな事無さそうだけど。


フフっと自然と笑みが溢れる。


ランジャンの腕の中で今日も眠る。


俺の1番幸せな時間。

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