第32話やっぱり行くのか

漫画では盗めなかった金印を盗みたい!と言う思いはある。

しかし、実際に自分がやるとなると怖いだろうなあ。


「1ヶ月。全員修行に明け暮れろ。それで結論を出す。」

ボスがそう言うと皆、頷いた。


「ウェンも行きたい?」

「政府管轄国家に潜入して盗むって言うのは多分、この世界生まれの異能者の夢や憧れ。」

ウェンの言葉にラズも賛同した。

「俺達はそう言う道を選んだからな。一泡吹かせるって言うやつだよ。」

そうなのか。

結局のところこの世界の政府とマフィアの争いって何が原因なんだろうな。

何時か根本に辿り着いて世界を平和に出来たら良いのになあと力も無いのに思ってしまった。


先ずは自分自身を何とかしないとな。


「あっ。ボス。この前の異世界人の事解ったよ。」

ハーミット様がパソコンを起動して画面を見せている。

「これが何て書いてあるか解らないけど。政府組織の奴はオーガ・イズハラ。警察の奴はリュート・ソノギで・・・。」

俺も字は読めないけど画面を見た。写真の横に自筆と思われるちょっと雑な字で書かれていた。


厳原イズハラ桜虎オウガ

彼杵ソノギ龍斗リュウト


間違いなく日本人だ。

「これ、名前です。俺の世界の文字。自筆みたいですね。」

画面を指差すとハーミット様もボスもなるほどと納得してくれた。

年齢はオーガ17歳、リュート16歳。

年下・・・。

彼等も脳内チップ埋められているんだろうな。まだ高校生なのに・・。

これ見せられたらやっぱり政府が許せなくなった。

もう2人を助けられ無いんだろうけれどこれ以上の召喚の犠牲者を増やしたくない。


「俺!絶対に強くなります!」

思わずそう宣言。


ボスは俺の顔をまじまじと見て

「じゃ、シアンの案件に俺とシアンと3人で行こうか?」

と言われた。

え?ボディーガードと殺人依頼?


「強くなるには実践!」

ボスがスパルタ・・。解るけれど。


シアンと一緒って。チラっと横のウェンを見ると解り易いくらい不機嫌。


「行きたいのは山々ですが。その。俺はカプリスのメンバー以外を護れるんでしょうか?」

本当にそれは焦る所だ。仲間と思う?事が条件なら厳しい。


「結界が張れなかったら体術で護れ。」

うう。それは確かに修行しなきゃならないのだけれども。


「俺も行く。」

ウェンがそう言った。


「うーん。ウェン。これはミナキの為でもあるんだよ?強くなる為。解ってくれるかな?」

ボスが優しく諭している。


「何時から行くの?」

ウェンがシアンに聞くとシアンはニヤっと笑って

「なるべく早く?まあ、向こうも準備があるだろうからね。電話してみようか?」

と答えた。

ウェンは無言で頷く。

シアンはベッドがある個室に入り電話をかけ始めた模様。


「心配なのは解るけどボスが居るから大丈夫だって。」

ラズがウェンの肩をポンと叩く。

「それに。何かあったらミナキがボスを護る。調度良い3人だ。」

ハーミット様はそう言った。

何かあったら?あー。シアンが裏切るとかかな。まだそんな事態は無い時期だ。


そっか。シアン裏切るんだったな。


俺、カプリスを護る為にこの世界に来たんだからいずれはシアンも敵・・。

全く想像すら付かない。


強くなれば運命は変わる。きっと。


「お待たせ。明後日に出発。」

シアンがそう言うとボスはOKと頷いた。


「行先は?日数は?」

って俺じゃなくてウェンが聞いてるし。


「逃がす国はジ・パング。仕方ない決断みたいだね?政府本部があるジ・パングには勢力のあるマフィアは居ないし。」


え?俺達は危なくないの?


いや、大丈夫か。ジ・パング広い国だし。政府の人間しか居ない訳では無い。普通の国民も異能者も居る。

勿論、カプリスもジ・パング国内に居るシーンもあった。

俺が難しい顔で考えていると


「ミナキ。大丈夫だよ。政府本部があるからって怖い国じゃない。」

ボスが笑顔で俺を見た。


「寧ろジ・パング、アマル・フィとエルドラドは緩い国なんだ。」

政府の本部は目が行き届いている。隣国にも目が行き届いている。そこがある意味政府の盲点で取り締まりや警邏が少ないと言う。逆に遠い国や反組織が多い国はベテランの異能者が配属されていると。なるほど。

「但し。あのオーガとリュートとか言う2人は別格だろうな。」

エルドラドとジ・パング勤務のリュートとオーガ。

「厄介極まりないね。」

2人は召喚されて1年ちょっと。だから近隣諸国勤務。

元々の才能もあるんだろうな。

「早く遠方に飛ばされて欲しいがあと1年は居るんだろうな。」

ハーミット様は溜息をついた。


「では、明後日7時に俺とシアン、ミナキは集合。後の皆は解っているね?修行しなよ。」

「あっ。今日の報酬はネットバンクからそれぞれの口座に振り込んだ。明日にでも確認しておくように。」


では、解散!

ボスはそう言って立ち上がった。


「帰ろうか。」

「うん。」

俺とウェンも部屋に戻る事にした。

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