第一章 植物編

第2話 スキルを選ぼう ○

(うっ、ここはどこだ?)


 僕は再び目を覚ました……と思ったけど全く周りは見えていないから、目は覚めていない。どうやら意識が覚醒したといった方が正しいようだ。意識がはっきりしてくるにつれ、段々と記憶も蘇ってくる。どうやら僕は、詐欺女神のアスタルティーナに騙されて本当に異世界に転生してきたようだ。おそらく人間ではなく苔として。


 苔には眼なんて無いから、周りが見えないのは当然か。ただ、何となく風や水の気配を感じる。考えることが出来ているということは、転生して直ぐに食べられたり枯れてしまう環境ではなさそうだが、安全かどうか何てわからない。


 いつまでこの状態が続くかわからないから、急いで生き残るための準備をしなくては。


(ステータスオープン!)


 女神様に教えてもらった通りに僕は頭の中で念じる。苔に頭があるとは思えないから、心の中で念じたのかもしれないけど。


 すると真っ白な空間で見たような半透明のウインドウが頭の中に現れた。そこには……


種族 苔

名前 なし

ランク G

レベル 1

体力    5/5

魔力    5/5

攻撃力   0

防御力   1

魔法攻撃力 1

魔法防御力 1

敏捷    0


スキル

光合成 Lv1


称号

転生者


 と書かれていた。


(大して知識無い僕でもわかるよ。このステータスはやばい。何とかしないと直ぐに死んじゃう)


 とにかくこのままではのんびりするどころか、直ぐにでも死んでしまう。この状況を打開するには女神様が言っていた"スキル"を獲得するしかない。


 僕はウインドの右上にある転生者特典と書かれた文字を意識する。すると、取得可能であろうスキルが一覧となって現れた。それはもう膨大な数のスキルが……


(こ、こんなたくさんあるとは!? これを一つずつ確認していったらとてもじゃないけど時間がかかりすぎる。まずは生きるのに必要そうなスキルを素早く選ばなくては)


 僕は表示されている膨大な数のスキルから、有用そうなスキルを探していく。しかし、スキルの名前を意識しても説明が表示されるわけではない。となると、名前からスキルの効果を判断しなければならないのか。もし、予想と違う効果のスキルを手に入れてしまったら……15枠あるとはいえ無駄なスキルは選べない。かといって、慎重に選ぶ時間もない。どうしたらいいんだ!?


 何て焦りながら有用そうなスキルを探していると、一つのスキルが眼に入った。その名は"鑑定"。


(これだ! まずこれをゲットして、スキル名を鑑定すれば効果がわかるかもしれない!)


 そう考えた僕は直ぐに"鑑定"を選択した、すると何とも言えない達成感が心を満たし、ステータスのスキルの欄に"鑑定"が増えていた。


(よし! これでスキルの効果がわかるはずだ!)


 僕は早速、名前だけではよくわからなそうなスキルを選び鑑定を試みる。


"思考加速"=思考を加速させる。加速できる時間はLv×10秒。


 おお、これは偶然いいスキルを見つけた! 思考を加速させるということは、Lv1でも現実世界の1秒を脳内では10秒に出来るということだな。スキルを選ぶのは脳内で行っているから、これがあれば選ぶ時間に余裕ができるはずだ! 


 僕はすぐに"思考加速"をスキルに加える。


(よし、周りの状況がわからないから実感はないけど、思考が加速されている気がする。っていうか今気がついたけど、この世界の時間の単位も秒なんだ)


 鑑定の結果からも情報を得ながら、"思考加速"と"鑑定"を駆使してさらにスキルを選んでいった。そして、体感で数分後……


 よし、まず必要そうなスキルはこんなところか。ステータスオープン!


種族 苔

名前 なし

ランク G

レベル 1

体力    5/5

魔力    5/5

攻撃力   0

防御力   1

魔法攻撃力 1

魔法防御力 1

敏捷    0


スキル

光合成 Lv1

鑑定 Lv1 New!

思考加速 Lv1 New!

生命探知 Lv1 New!

魔力探知 Lv1 New!

敵意察知 Lv1 New!

体力自動回復 Lv1 New!

魔力自動回復 Lv1 New!


称号

転生者


 よし、"生命探知"と"魔力探知"で何となく周りの状況がわかるようになったぞ。さらに"敵意察知"で、周囲に苔にとって天敵である動物や魚もいないことがわかった。Lv1がどのくらいの範囲かよくわからないけど、少なくとも直ぐに死ぬような場所に転生されなかった幸運に感謝しなくては。


 "生命探知"と"魔力探知"から、どうやらここは木に囲まれた小さな池の真ん中のようだ。そこにある大きな石の上に僕は生えているらしいことがわかった。


 とりあえず、残りのスキルをゆっくり選ぶ時間はありそうだ。


 僕は苔が元々持っていた光合成のスキルを発動させながら、残りの8つのスキルを選ぶことにした。






 先ほどよりも時間をかけて選んだスキルは以下のスキルだ。


特殊進化=種族レベルが最大になったとき、上位種、もしくは別の種族に進化できる可能性がある。

光魔法=光魔法を使えるようになる。

水魔法=水魔法を使えるようになる。

時空魔法=時空魔法を使えるようになる。

重力魔法=重力魔法を使えるようになる。

詠唱破棄=詠唱しなくても魔法を使える。

アイテムボックス=亜空間に生き物以外を収納することができる。

言語理解=あらゆる言語を理解し、話したり書いたりすることができる。


 特殊進化は前回の反省を生かし、ウインドウをスクロールすることで最下層で見つけたスキルだ。このスキルがあれば苔から脱出できるかもしれないと思って選んだ。


 光魔法と水魔法は、苔の成長に欠かせない光と水を自力で生成できるかもしれないと思ったから選んだ。


 時空魔法と重力魔法は何か使えたら強そうだから選んでみた。ただし現段階では魔法一覧に表示されていないことから今の段階では使えないようだ。何だか選ぶのに失敗した感が強いが、今は使えなくても、将来使えるようになることを期待している。


 詠唱破棄は、魔法を4つ取ったところで気がついたから取った。何に気がついたかって? 苔は詠唱できないってことにだよ。


 アイテムボックスはうっすらと記憶にあるライトノベルの小説に、すごく有能だって書いてあった気がしたから取ってみた。将来動けるようになったときも使えそうだし、生き物以外を収納できるということは、万が一石ころなんかが飛んできたときに収納することで身を守れるかもしれないと思ったのだ。


 そして最後の言語理解は、もし苔から進化できて動き回れるようになったら、人間の世界にも行けるかもしれないし、その時、言葉がわかれば何かと便利だと思ったのだ。同じ転生者を探すのにも役立つはずだ。



 そして最終的に僕のステータスはこうなったのだ!


種族 苔

名前 なし

ランク G

レベル 1

体力    5/5

魔力    5/5

攻撃力   0

防御力   1

魔法攻撃力 1

魔法防御力 1

敏捷    0


スキル

特殊進化 New!

言語理解 New!

詠唱破棄 New!

アイテムボックス Lv1 New!

鑑定 Lv1

思考加速 Lv1

生命探知 Lv1

魔力探知 Lv1

敵意察知 Lv1

体力自動回復 Lv1

魔力自動回復 Lv1

光魔法 Lv1 New!

水魔法 Lv1 New!

時空魔法 Lv1 New!

重力魔法 Lv1 New!

光合成 Lv1


称号

転生者

スキルコレクター New!


 称号の欄に増えたスキルコレクターは、15個目のスキルを取ったときに現れた。効果はスキルを取得しやすくなるそうだ。つまり、転生者特典以外でも、自力でスキルを獲得できる可能性があるとわかった。どんなスキルがあるかは、スキルを選ぶときにじっくり見て覚えているので、これから色々なスキルの獲得を目指して、より生存率を上げていくとしよう。


 実は僕、転生前はちょっとした収集癖があった。お金はあまり持っていなかったから、集めることができたのは瓶の蓋とか、綺麗な石とかだったけど。この世界に転生してスキル一覧を見たとき、僕はできるだけたくさんのスキルを集めたいと思ってしまったのだ。


 未だに現実感は薄いし、何だか騙された感が強かったけど、もしこれが現実なのだとすれば、転生できたことに感謝している。例え苔でも生きる目的ができたから。ここにきて僕がやろうと思ったことは……


・進化して生き残ること

・スキルをたくさん集めること

・他の転生者を探すこと

・最後はスローライフを送ること


 当面はこの4つを目標として異世界生活を楽しんでいこうと思う。


 まずは光合成をしながら、今後の行動を考えることにした。

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