第75話 地底湖では
~side タイヨウ・ミカド~
「そっちに一匹いたぞ!」
「おう、任せておけ!」
チーム『英雄の剣』のアルマンディの声にジャックが答える。
ここは
俺が魔王と一対一で戦うためには、この四天王を誰かに押さえておいてもらわねばならない。その役目を担うのが、今、目の前でイビルアリゲータと戦っている『英雄の剣』のメンバーだ。もっとも、今の彼らでは力不足なので、ここで最低でもレベル80までは上げてもらう予定だが。
イビルアリゲータのレベルは40~45。平均レベル60を超えるジャック達にとっては少々物足りない相手だが、この中でレベルが一番低いオーロラのレベルが38。彼女のレベルをジャック達に追いつかせるのが最優先なので、ここで連戦する予定だ。
まずはこの階層で45まで上げてから、一つずつ階層を上げていき20階層までに60まで上げてもらう。そこからは、一気に25階層まで降りてレベル70台の魔物と戦ってもらうつもりだ。そこまで行けば、ジャック達のレベル上げにも入れるだろう。
それにしても、オーロラに棒術のスキルがあるのは幸いだった。イビルアリゲータは防御力が高い。普通に攻撃したのでは、オーロラの攻撃力じゃ足りなかった。だが、棒術のスキルを使うことでかろうじてイビルアリゲータの防御力を突破することができたのだ。ジャック達がイビルアリゲータを瀕死の状態までもっていき、オーロラが棒術でとどめを刺す。このやり方で2日かけてオーロラのレベルを45まで上げた。
ちなみにオーロラのレベルが60になるまで、彼女の召喚獣であるスノウの戦闘への参加は禁止している。なぜならあの召喚獣は強すぎるからだ。もちろん、俺には遠く及ばないが……いや、魔法攻撃力ならすでに俺を超えているか。まあ、俺は物理特化だから魔法攻撃力は高くないのだが。
とにかくこのスノウとやらは、少し特異な存在のようだ。本来、スペリオルグリフォンはB+ランクのはず。だが、このスノウはAランクに達している。なぜかはよくわからないが、特殊な個体なのは間違いない。
それにしても、よくこんな上位個体が召喚に応じたものだ。おそらく、魔王と戦う時に一番役に立つのがこのスノウだろう。ただ、このスノウはもうすぐレベルの上限に達してしまうはずだ。だからこそオーロラのレベル上げを最優先に行っている。オーロラのレベルが上がれば、それだけスノウも強くなれるからな。
その後も順調にレベルを上げ、2週間後にはオーロラのレベルは60に達していた。それから階層を一気に上げ、現在25階層まで来ている。
ここからはジャック達のレベル上げも兼ねて、70台の魔物を狙っていくことになるだろう。
早速ジャック達の前に現れたのはドラゴンタートルだ。ワイバーンと同じで、ドラゴンの亜種になる。その名の通り、地竜のような身体に亀の甲羅を背負った、防御力が高いことで有名な魔物だ。レベルは73。彼らには少々荷が重い相手なので少し手助けしてあげよう。
「よっ……と!」
俺は開始早々、ドラゴンタートルの右前足を切りつけてやった。もちろん奴は全く反応できていない。というか、ジャック達も反応できていなかったようで、目を大きく見開いて驚いている。
「い、いつの間に……」
そうつぶやいたジャックの声は震えていた。うん、こうやって素直に驚いてもらえると気分がいいね。もっとも、この
前足を斬られて機動力を大きく落としたドラゴンタートル相手に、ジャック達は優位に戦闘を進めていく。
ジャックとスノウがドラゴンタートルの前に立ち、動きを抑え込む。2人とも敏捷が高いので回避盾の役割だ。左右からはアルマンディの弓とパールの魔法が飛んでくる。さらに上空からはテオドールの召喚獣であるスパークが、隙を見て火球を吐き出している。回復役のダリアは、ジャックやスノウが被弾するや否や回復魔法をかけていく。
(うん、いいパーティーだ)
格上相手に余裕のある戦い方だ。もしかしたら、手助けは必要なかったかもしれないな。
30分ほどの戦闘の末、危なげなくドラゴンタートルを倒し切った『英雄の剣』のメンバー達。これならレベル上げも捗りそうだ。
俺は格上の相手が複数体現れた時だけ手助けすることにして、ジャック達のレベルが80に上がるまで見守ることにした。
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